下読み男子と投稿女子 優しい空が見た、内気な海の話。


『下読み男子と投稿女子 優しい空が見た、内気な海の話。』(野村美月著/ファミ通文庫)★★★★★

下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫)
下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫)

2015年6月刊。
最高。最高です・・・・・・!
ライトノベル新人賞の下読みのバイトをしている男子高校生が、投稿者の中にクラスメイトの女の子を見つけてしまう、というところから始まる青春ラブストーリー。
高校生2人のもどかしくて瑞々しい恋愛が素晴らしい。そして、創作物に対する愛情を見つめ直させてくれる傑作でもありました。
あまりよく知らなかった下読みの様子やプロットの作り方についても分かりやすく書かれていて、とても面白かったです。
それにしても、何かを心の底から楽しみ尽くせるって段々とできなくなっている気がするなぁ・・・・・・所々で胸が痛くなりました(´Д`;)

☆あらすじ☆
「わたしに、ライトノベルの書きかたを教えてください」
平凡な高校生の青は、実はラノベ新人賞の下読みのエキスパートだ。そんな彼は、ある日応募原稿の中に、同じクラスの氷ノ宮氷雪の作品を見つける。”氷の淑女”と呼ばれる孤高の少女が、フォント変えや顔文字だらけのラノベを書いて投稿している!?驚く青だが、その後ひょんなことから彼女の投稿作にアドバイスをすることに。評価シートに傷つく氷雪をあたたかく導き、世界観、キャラ設定、プロットと、順調に進んでいくが……。爽やかな青春創作ストーリー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

叔父の紹介でラノベ新人賞の下読みのバイトを続けている高校生風谷青
ある日彼は自分の担当する投稿作の中に、クラスメイトの氷ノ宮氷雪の名前を見つけ、普段の彼女と作風とのギャップに驚愕。
興味をもった青は氷雪に声をかけ、話をしているうちに彼女の投稿作のアドバイスを引き受けることになるのです。

 

ラノベ新人賞の下読みについて詳しく知らなかったのですが、思った以上に凄まじいお仕事。
投稿作って文庫1冊分くらいの内容ですよね。それを月に30〜50本。多いときは100本。
しかも1本ずつ評価シートまで付けて?
頭が下がります・・・・・・(((゜Д゜;)))
この下読み段階があるからこそ、ふるいが機能して素晴らしい作品が世に送り出されるんですよね。感謝。

 

そんな大変な下読みの仕事ですが、主人公の青はとても楽しそうに投稿作を読んでいきます。
未熟でカオスな作品でも、そこに作者の情熱を感じとって、物語の良さをしっかりと受け取る。
彼の目には物語の中の世界だけでなく、その物語を必死に作り上げた投稿者の姿まで映っているのでしょう。
それら全てをひっくるめて楽しみ、満喫する。

 

これって、驚くほどにすごいことだと思うのです。

 

私もラノベ感想ブログを続けてそろそろ2年になりますが、その期間に読んだ本だけでも「この作品は無理。合わない」と思って批判的な感想を書いたことが多々あります。
それこそ氷雪の心を傷つけた評価シートみたいな内容の、辛辣な感想をブログにアップしたことだってあります。
「主人公が不快」だと思ったことは何度もあるし、「文章が稚拙」だと感想に書いたことは数知れず。
「作者の独りよがり」だと感じた本は最後まで読まず、感想を書くことすらしなかったりします。

 

読んだ本全てを楽しみ尽くすというのは、今の私には難しいようです(´・ω・`)

 

だからこそ、青が「ぜんぶ面白い!」と目を輝かせて作品に触れていく姿に嫉妬と憧れを抱いてしまうのでしょうね。
朔太郎が最後で言っていたセリフが、この作品で私が青に対して思っていたことそのまますぎて胸が痛くなりました。

 

おかしいな。ラノベに出会った中学生の頃、私も全てが全て面白くて魅力的でキラキラしてるように思えたのに。
今だってラノベが大好きですけど、昔より全部を受け入れられなくなった自分がいるというか。卒業ですよ、とか言ってはいけない(´;ω;`)

 

もっとも、受け入れられないからといって、その作品を貶めて良いわけじゃない。

「他人の作品が、いかにつまらなかったかをドヤ顔で長弁舌するようになったらおしまいさ。あれは最高に醜悪だ。」(301頁)

おっしゃるとおりです・・・・・・。
私も今一度、作品を読む姿勢というものを見つめ直そう。
無意識に上から目線な書評家きどりになっている気がするし・・・・・・。ほんとに気をつけよう。

 

下読みの話が長くなってしまいましたが、恋愛作品としても安定のクオリティでした。

 

厳しい祖母のもとで育ち、低い自己評価と孤独を抱いてきた氷雪。
そんな彼女が隠し持っていた可愛らしい姿を知り、惹かれていく青。
自分を認め、励まし、褒めてくれる青に対して、氷雪もまた惹かれていくのは当然ですよね。

 

氷雪の揺れる想いを投稿作の中のシアンと昴の恋にクロスさせ、情緒的に描き出していくところは圧巻。
さすがの野村美月クオリティといったところです。壁ドンも良かった( ・ㅂ・)و ̑̑

 

氷雪と祖母のすれ違いのところも面白かった。
「青が気づいたその伏線を、これから回収する!」にクスリとしてしまいました。
小説作りという本作のテーマを拾う構成は楽しいです。

 

ラストもとても甘酸っぱくて最高でした(*´∀`)
序盤の青が書いた評価シートが、それこそ「伏線」として氷雪を動かすトリガーとなるのが実に良いです。

 

そしてクライマックスの舞台がプールであることも素敵。
海の世界の物語を作ってきた2人。彼らの恋の始まりの場所として、とてもロマンチックでぴったりだったと思います。

 

本当に素晴らしい作品でした!
野村美月先生は次から次に作品を発表しては傑作揃いで驚かされます。
7月がダッシュエックス文庫で新作、8月は吸血鬼5巻だそうです。
3か月連続刊行だったのか!楽しみですヾ(๑╹ヮ╹๑)ノ”

とはいえ、お体はお大事に(´・ω・`)

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