怨讐星域 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ


『怨讐星域 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(梶尾真治著/ハヤカワ文庫JA)★★★★☆

怨讐星域Ⅰ ノアズ・アーク (ハヤカワ文庫JA)
怨讐星域Ⅰ ノアズ・アーク (ハヤカワ文庫JA)

2015年5月刊。
SF文庫マガジンで2006年から2014年の間連載されていたSF年代記の書籍化作品です。全3巻が同時発売したのでまとめて感想を書きたいと思います( ・ㅂ・)و ̑̑

滅亡の未来にある地球を捨て、世代間宇宙船「ノアズ・アーク号」に乗り込んだ3万人は「約束の地」と呼ばれる遠い星を目指します。
一方、残された人類は奇跡的な発明によって「ジャンプ」し、「約束の地」に先回りするのです。
「約束の地」で文明を築きながらノアズ・アークへの怨みを募らせる人類と、何も知らずに数百年の旅を続けるノアズ・アークの人類。
二つの場所における様々な人々にスポットを当てつつ、来たるXデーまでの道のりを描き出す大作でした。
実感を伴わずに子孫へすり込まれていく「怨み」にゾクゾクとさせられつつ、それでも人の可能性に期待したくなる温かな物語だと思います。
とても面白かったです(*゚▽゚)ノ

☆あらすじ☆
太陽のフレア膨張による地球消滅から逃れるため、アジソン米大統領と選ばれた3万人だけを乗せた世代間宇宙船ノアズ・アークが、密やかに出航した。残された人々はノアズ・アークを呪い、大統領の娘ナタリーの恋人が発明した星間転移で決死の脱出を図った――。
2つの人類の目標は、172光年先にある約束の地。生き残りを賭け闘う人間それぞれの受難、愛憎、そして希望を通して、世界の喪失と再生を描く、SF大河ロマン。

以下、ネタバレありの感想です。3巻分まとめてのレビューとなります。

 

太陽のフレア化によって地球が数年以内に確実に消滅する。

そんな未来を突きつけられたとき、人は一体どういう行動に出るのでしょう。

 

アジソン米大統領は、自分の家族と側近、技術者たち3万人だけを連れて「ノアズ・アーク号」に乗り込み、地球を脱出することを選びました。
人類が生存できる惑星「約束の地」を目指し、数百年かかる道のりを世代を交代させながら航行するのです。

 

公表もせず密かに行われたこの行動に、当然、残された人類は激怒します。
そして、そんな怒れる人類の前に示されたのが星間転移装置によって「ジャンプ」し、「約束の地に先回り」するという道

 

ここでまた人類の行動は別れることになります。

 

全人類の7割は「約束の地」へとジャンプすることを選んだものの、残る人類は地球と運命を共にすることを選ぶのです

 

第1巻「ノアズ・アーク」では、3つの道から自分の生きる道を選んだそれぞれの人々にスポットが当たっていきます。
全3巻の中で、SF的な読み応えという意味ではこの1巻が最も面白かったです。

 

「約束の地」にジャンプした人々は未開の地に身一つで放り出され、原始人レベルから文明をやり直すことに。
その道のりは苦難の連続でしたが、人々が必死に生き抜けていく姿に心を奪われてしまいました。
未知の生物への恐怖を機転と勇気で克服し、地球での宗教的軋轢すら乗り越え、恋をし、子孫を作り、そして文明を復元させていく。
何世代もかけて文明を取り戻していく人々の逞しさがとても熱いのです。
また、「復元」であるため文明レベルの引き上げが非常にスムーズで早い。
全てが失われたようにみえて、地球で培われた叡智や歴史が確かに受け継がれている姿に感動しました。

 

一方、ノアズ・アーク号の人々もまた、苦難の中にありました。
ノアズ・アークの人々の姿を見ていると、「退屈は人を殺す」という言葉を思い出します。
限られた狭い箱船の中で、ただ血をつなげるためだけに生きていく人生。
それが何世代も続くのです。怖い。家畜みたいだ、ってちょっと思ってしまいました。
それでも、恋をすることで人生に潤いを取り戻していく人々を見ると、なんだか微笑ましくてほっこりしましたが。

 

そして1巻だけに描かれる、地球に残った人々。
全3巻を通して読んでも、「ハッピーエンド」はとても印象的なエピソードでした。
安楽死させる薬の名前が悪趣味だなぁって引いたせいもあるかもしれませんけど(;・∀・)

最後の時間は生まれた星と共に、というのは素敵な終わり方なのかもしれませんね。
そこに愛する人がいれば、もう何も言うことはないのでしょう。
他の2つの道を選んだ人々の苦難を思えば、私はこの終わり方が一番安らかなように見えて心が惹かれました。私も死ぬ場所は地球がいい。

 

それにしてもやっぱり地球は滅びたのでしょうか?
その描写があるのは1巻の「ノアズ・アーク」ラストで補佐官がした報告だけなのですが・・・・・・。
鬱気味のアジソン大統領を慰めるために二重にウソの報告をしたんじゃないかと疑ってたんですが、うーん。
もし、これで地球が滅んでなかったら・・・・・・(((゜Д゜;)))

 

 

2巻以降は地球の様子は全く描かれず、「約束の地」で「ニュー・エデン」という文明社会を築いていく人類と、ノアズ・アーク号の人類が邂逅する日までのじわじわと迫り来る緊張感が描かれていきます。

 

ジャンプから何世代も交代しているのに、「ニュー・エデン」の人々がノアズ・アーク号への怨みをしっかり子孫へ根付かせていく様に背筋が凍りそうでした。
特に「サルカニ合戦」のエピソードは強烈。
ああこうやって復讐心を煽ってすり込んでいくのか、と。

もはや遠い昔の出来事として感情は風化されつつあるのに、「復讐を果たさなければならない」というテーゼだけが受け継がれていく。
その空恐ろしさにゾッとさせられるのです。

共同体を維持するために共通の敵が必要だった初期に作られた思想を、捨て去るタイミングを失ってしがみついているようにも見えましたし・・・・・・

 

ニュー・エデンの人々が着々と怨みを宗教化させていく一方で、ノアズ・アークの人々は割と暢気なのもハラハラさせられるんですよねw
まぁ彼らは何も知らないわけだし、機体の事故や乗組員のノイローゼやら、船内のトラブルで大変だったので仕方ないのでしょうけど。

 

そうして来たるXデー。
2つの人類の邂逅の日。

 

2巻で描かれたジリジリと迫るような不安感は、3巻で戦争前夜のような緊張感に変わるのです。

 

何世代も受け継がれた怨み。
その怨みをいざ晴らすことができる段階に立ったとき、人はどんな選択をとるのか。

 

長い長い怨讐の物語が、一体どんな結末を迎えるのか。

 

最後の最後まで焦らしに焦らした、その結論。
私はそこに、人の善性と可能性を信じたくなりました。
まぁ「え、スナーク出しちゃうの!?」とかちょっと思ってはしまいましたがw
でも血にまみれた悲惨な結末を迎えるよりも、ずっと未来が明るいラストだったと思います。
私は好きです。

 

この先何度滅亡の危機に立たされても、人類であれば「どぎゃんかなる!」のではないでしょうか。

 

読んで良かった。本当に面白かったです!ヾ(*˙︶˙*)

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「怨讐星域 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」への3件のフィードバック

  1. こんばんは。

    SF小説も読まれるのですね。
    昔、色々梶尾さんの作品を読んだ記憶があります。『クロノスジョウンター』シリーズが印象に残っています。

    未読で時間もの好みなのであればおすすめいたします。

    あと、SF小説というくくりであれば、山本弘著『アイの物語』、面白かった印象があります。

    もし、宜しければご一読ください。

    1. はにまるさん、コメントありがとうございます!

      最近SFが好きかもしれないことに気づいたので、ちょっとずつハヤカワを開拓していこうと思ったんですw

      梶尾さんの本は『黄泉がえり』しか読んだことがないので、『クロノスジョウンター』は未読です。
      あらすじを見ましたが、とても面白そうですね。
      「タイムトラベル・ロマンス」という言葉の響きだけで心が惹かれますw

      『アイの物語』も初めて知りましたが、あらすじによると「未来の千夜一夜物語」だとか。
      こちらもかなり面白そうです!

      どちらも電子版があるようなので読んでみたいと思います。
      おすすめありがとうございました(o^∇^o)ノ

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