『百錬の覇王と聖約の戦乙女〈ヴァルキュリア〉3』(鷹山誠一著/HJ文庫)★★★☆☆
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前巻の感想はこちらから
2014年2月刊。
勇斗がユグドラシルに召喚されてからの空白の2年間に何があったのかが明らかになるエピソードゼロ。
読んでみると、勇斗の謙虚さというか慎重さの理由が分かって少し切なくなりました。
☆あらすじ☆
今や《狼》の宗主として押すに押されぬ存在となった勇斗。だが二年前、この世界に迷い込んだ頃の勇斗は未熟な一人の“少年”に過ぎなかった。そんな勇斗を成長させたのはフェリシア、イングリットら麗しき戦乙女達、そして頼れる兄貴分の存在……。弱肉強食の世界で勇斗はいかにして王に成り上がったのか? 今語られる覇王降臨編《エピソード・ゼロ》!
以下、ネタバレありの感想です。
1巻はすでに勇斗が《狼》の宗主になって未来の知識でTUEE状態なわけですが、今回はそんな状態になるまでの勇斗を描かれるエピソードゼロ。
こういう構成は珍しいですが、オチが分かっている分ストレスなく読めるところが良いです。その分の緊張感をフェリシアの兄ロプトの存在が担ってくれるわけですが。
召喚されたばかりの頃は、現代知識を使うという発想はおろか使えるということすら知らなかった勇斗。周囲に役立たず呼ばわりされてふて腐れるところとか、お腹を壊すところとか、異世界召喚の過酷さはちゃんとあったんですね。
そんな勇斗を保護し「家族」となってくれたフェリシアとロプトの兄妹。
フェリシアは今でも勇斗の副官ですが、じゃあロプトはどうしたの?というのが3巻の肝。
1巻や2巻の勇斗の言動的にすでに死んでいるようにも思えたものの、こうくるかぁという展開。ある意味王道ですけど嫌いじゃないですw
スマホを使って引き出した現代知識を駆使して《狼》での地位を一気に上り詰めていく勇斗を見て、嫉妬に狂ってしまったロプト。
あれは仕方ない気がします。
だってロプトは勇斗がどこからか持ってきた「借り物の知識」を使ってる「チート」だっていうことをしっかりと理解しているわけだし、そんなズルをして自分が生涯かけて狙っていた居場所を奪われたとあれば、それは僻むし恨む。勇斗がファールバウティの盃を勝手に受けたことも不信感を後押ししたのだろうし。というか、なぜあのとき勇斗はロプトに事前に何も言わなかったのだろう?
勇斗自身に悪気はなくても、人間関係をこじらせるには十分な話だったのでしょう。だからちゃんとファールバウティは忠告していたのだし。
権力闘争が人を狂わせるのは世の常なわけですよ。
とはいっても、それを当時の勇斗に理解して慎重に根回ししておけというのも、子どもには酷な気がしますけどね。
分不相応な大きすぎる力に振り回された2年前の勇斗を見ていると、1巻スタート時の勇斗の成長っぷりに感嘆します。失敗を超えて人は大きくなるのだなぁとしみじみ。
現在の勇斗を作ったものが何だったのか分かる良エピソードでした。
さて、ここで過去回を挟むと言うことは気になるのはロプトの再登場。と思っていたらさっそく出てきました!
情報流出によってアドバンテージを奪われてしまった《狼》。どうやって戦って行くのか、次巻以降も楽しみです。
ホビージャパン
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