その白さえ嘘だとしても(階段島シリーズ2)


『その白さえ嘘だとしても』(河野裕著/新潮文庫NEX)★★★★☆

その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)
その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)

前巻の感想はこちらから
いなくなれ、群青(階段島シリーズ1) | 晴れたら読書を

2015年6月刊。
階段島シリーズ第2弾。
今回はクリスマスイヴとヒーローと魔女のお話。
1巻同様、安定した面白さでした。

☆あらすじ☆
あの頃の僕らは、誰かのヒーローになりたかった。
クリスマスを目前に控えた階段島を事件が襲う。インターネット通販が使えない――。物資を外部に依存する島のライフラインは、ある日突然、遮断された。犯人とされるハッカーを追う真辺由宇。後輩女子のためにヴァイオリンの弦を探す佐々岡。島の七不思議に巻き込まれる水谷。そしてイヴ、各々の物語が交差するとき、七草は階段島最大の謎と対峙する。心を穿つ青春ミステリ、第2弾。

以下、ネタバレありの感想です。

 

外界と遮断されていてもライフラインと通販は確保されていた階段島。
それなのに突然通販が使えなくなってしまった・・・・・・というところから始まる第2巻。

今回は、群像劇のように語られるクリスマスイヴの物語。
キーワードとなるのはクリスマスの七不思議と、探し物。そして、魔女。

1巻同様、時間が止まったような優しい世界でありながら、それが逆に人の生々しい感情を浮きだたせているようでした。

 

象徴的なのは二人の高校生。

 

まず一人は、ヴァイオリンの弦を探す佐々岡。
泣いている女の子を救えるヒーローになりたいと奔走する彼を待ち受けるのは、身勝手な真相と報われない努力でした。

佐々岡が憧れる「ヒーロー」について、七草は「妥協を知らず、ハッピーエンドを迎えられず、ぼろぼろになっても進むしかない、呪いの如き汚れのない純白」だと評しました。
そんな七草のヒーロー観的には、真相を知って折れかけた佐々岡は「混色」であり、「純白」にはなれない。妥協を知り、諦めることができる人間はヒーローではないのだから。

 

確かに、「ヒーローに憧れる佐々岡」は現実の自分自身に捨てられたわけですから、現実の佐々岡は諦め、妥協し、「ヒーロー」にはなりえなかったのでしょう。

 

でも、階段島の佐々岡は違いますよね。
少女の哀しい狂言すらも乗り越えて、彼女の笑顔を引き出せた佐々岡は本当に格好良かったです。
ぼろぼろでも諦めず、進んで、ちょっとした妥協の上でハッピーエンドを掴み取ったわけですから。

演奏を聴かせたくない相手から逃げたことが「妥協」であり、七草の言うような「純白」ではなくても、彼の成し遂げたことはヒーローの名に恥じないと私は思うのです。

 

 

もう一人は、真辺へのクリスマスプレゼントを探す水谷。
たとえ虚構に塗り固められても人間関係を円滑にしたい水谷にとって、それを真っ向から否定するような存在である真辺は受け入れがたい人間なのでしょう。
真辺の「正しさ」を思い知れば知るほど、自分が目指す「魔法の鏡」が薄っぺらいものに見えたのかもしれません。

 

でも、彼女が目指すのは誰も傷つけたくないのは優しさであり、誰にも嫌われたくないという人間として至極当然な感情に基づくもの。
真辺の正しさがどれだけ真っ白に輝いていても、それが水谷の在り方を否定するものにはなりえないはず。

 

真辺は嫌い。魔法の鏡をもっと磨き上げる。その決意から生まれた、渾身の作り笑い。
最後に真辺と向き合った水谷の覚悟は、「彼女」を捨てた現実の水岡にはできなかったことだったはず。

 

 

欠点ばかりが集められた階段島で、その象徴的な存在として今回スポットライトが当たった佐々岡と水谷。
捨てられた一部であるはずのふたりが見せたのは、紛れもない「変化」であると思うのです。
それを後押ししたのは、間違いなく真辺でしょう。
たったひとつの色で表せそうなほどシンプルな真辺に、レプリカのヒーローは背中を押され、イミテーションの優等生は強烈な対抗意識から自分を確立させたわけですから。

 

決して手が届かない純白を目指す混色。
在り方としての「白」が純白としては嘘であっても、「白」であろうとすることに意味はあるのだと信じたくなる物語でした。

 

 

真辺たちが探し物に奔走している一方で、七草は階段島の真実に大きく近づきました。
七草は魔女を見つけたかっただけとはいえ、クリスマスカードの件はちょっと狂気を感じました。
2000人の島の4,5割に手紙?
しかもリレーを遡れるのようにそれぞれ内容を変えて??
・・・・・・怖ッ(((゜Д゜;)))

 

魔女の正体については時任かと思っていたのに、完全にミスリードで悔しいです。
でも堀に対する態度や意味深なモノローグを見る感じ、彼女は深い事情まで知ってそうなんですよねぇ。

 

それと、気になるのは金貨の比喩
「一時的に預かっているだけ」という少年。
「他人のものを勝手に、自分のものだと思い込んでいた」七草。
金貨=堀からの手紙だとすると、・・・・・・これはどういうことでしょう?

魔女の正体が分かっても、本当にそれをまるっと真相として受け入れるには残された謎が多すぎます。
結局、通販が止められた理由もわかりませんでしたし。

 

七草と真辺が現れたことで生まれた階段島の変化が関係しているのか。

捨てられた欠点が寄り添い、ある種の「成長」が奪われた島。
そこで起こる変化とは何なのでしょう?
佐々岡や水谷の変化は先触れなのかも?

 

 

まだまだ楽しませてくれそうなシリーズです。
次巻はいつになるのでしょうか。
3巻発売がとても待ち遠しいです( ´ ▽ ` )ノ

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