ハイカラ工房来客簿 神崎時宗の魔法の仕事


『ハイカラ工房来客簿 神崎時宗の魔法の仕事』(つるみ犬丸著/メディアワークス文庫)★★★★☆

ハイカラ工房来客簿 神崎時宗の魔法の仕事 (メディアワークス文庫)
ハイカラ工房来客簿 神崎時宗の魔法の仕事 (メディアワークス文庫)

2015年5月刊。
面白かった!
現代の若い革職人が、なぜか工房ごと大正時代にタイムスリップ。
大正時代特有の風習や常識に戸惑いながらも、現代に戻る手がかりを得るために仕事をこなしていく主人公。
そんな彼が作る優しい革製品に人々は心を癒やされていくのです。
読んでる私の心もほっこりと温まる、大正浪漫も素敵な良いお仕事小説でした。

☆あらすじ☆
昔ながらの工房が軒を連ねる、東京は浅草の職人街。魔法使いがいるという噂の革工房『ハイカラ工房』を覗いてみれば、今日も無骨な青年が、熱心に仕事に打ち込んでいる。工房を切り盛りする店主は、若き革職人・神崎時宗。手ぬぐいを頭に締めた、目つきの悪さが際立つ風貌とは裏腹に、腕は確かで仕事は丁寧。その巧みな腕前で、工房に持ち込まれる、曰く付きの革製品と、そこに籠められた人々の想いまで、たちどころに修理してしまうらしい。どうやら彼が持つ魔法のような技術には、秘密があるようだ――。

以下、ネタバレありの感想です。

 

尊敬する革職人のもとで修行する若き職人・神崎時宗
ある日、親方の大切な革箱を開くと同時に地震が起こり、気づけば時宗は工房と一緒に大正11年にタイムスリップしていたのです。
現代に戻る手がかりである革箱はうっかり質流れ。資金100円(現代でいうと40万円くらい?)を稼ぐため、時宗は大正の職人の街で革製品を作ることになる・・・・・・というのが本作のストーリーです。

 

無骨で無愛想で職人気質な時宗。
彼の人となりは大正時代の職人たちにとてもウケが良いようで、なんだか絶妙に大正時代の空気に馴染んでいたような気がします。

そして彼の卓越した技術は、大正時代の人々にとって、まるで魔法のようなものだったのです。

 

身元を保証してくれた親切な山下一家に助けられながら、時宗はその器用な手から魔法のような革製品を次々と生み出していきます。

日本の慣習に疲れた外国人には革のスリッパを。
壊れた家族をやり直したい少女には、父娘の思い出を込めた煙草入れを。
家のために引き裂かれた恋人たちには、秘密の暗号を仕込んだ紙入れを。
自国の文化を貶められたと怒るイギリス人には、日本と英国の文化を調和させたドクターバッグを。

どの革製品も、望んだ人の希望と想いにまっすぐ応えるもので、受け取った人々の時代に翻弄され疲弊した心を癒やしていくのです。

 

時宗自身は大正時代の常識も風習もさっぱりわからないし、彼を慕う山下椛の気持ちもさっぱり理解できてない朴念仁なのに、それでも時宗は自分のお客さんの心を誰よりも理解して革製品を作るんですよね。確かにこれは魔法使いの御業。

 

どうしてこうも人の機微に聡いのか・・・・・・なぜそれが椛にさっぱり機能していないのか。

 

時宗と椛の関係については、まぁ、次巻以降に長い目で期待することとして(´-ω-`)

 

作中の大正時代特有の雰囲気もとても良かったです。

文明が開化し、現代に通じる様々なモノが流通し、一方では現代と違う「家」を中心に据えた常識が存在する時代。
古きと新しきが混在し、西洋と東洋が混じり合う、大正ロマンに輝いた時代。

そんな時代特有の空気を、職人の技術が込められた「革製品」を通じて表現した作品だったと思います。
この切り口はとても面白かったです。
様々な革加工のテクニックも知らないものばかりで、読んでいてとても勉強になりました。

 

今回は結局時宗の帰還は叶いませんでしたし、ぜひシリーズ化してほしいです。
もっと大正時代の空気を感じていたい・・・・・・(´∀`*)

 

そういえば、時宗を大正時代に送った「革箱」。実は時宗が作ったものだったりして。
で、親方は(名前が出てきてませんし)正太とか?年齢的にも合いますし、そもそも時宗の仕事を可能にした大量の革の発注も、親方が全てわかって用意していたと考えれば不自然な態度に得心がいきますし。

 

ぜひ続刊で答え合わせをしたいところ。
2巻をお待ちしています!ヾ(*˙︶˙*)

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