明日の狩りの詞の


『明日の狩りの詞の』(石川博品著/星海社FICTIONS)★★★★☆

明日の狩りの詞の (星海社FICTIONS)
明日の狩りの詞の (星海社FICTIONS)

2015年5月刊。
ラノベ読みから絶大な支持を受ける人気作家・石川博品。私はこれが初読みです。
外来宇宙生物が棲みついてしまった東京の封鎖区域で狩りをする少年の物語。とても面白かったです。
どこか厳かで静謐な空気を感じさせる狩りのシーンもさることながら、獲物を調理して食べる描写が本当に美味しそう。
刺激的な飯テロ小説であり、思春期の青少年が悩み迷う青春の物語でもありました。

☆あらすじ☆
東京湾に落下した「隕石」が原因で“外来宇宙生物”の住処となった東京都「封鎖区域」へ狩りに出る高校生・西山リョートと久根ククミ。猟犬型ロボット・カイを連れて狩りに勤しんでいた二人の前に、美少女アンドロイドとその主人である宇宙人が現れる。「大人になる」ための“通過儀礼”として、リョートらは宇宙人たちとパーティを組み、“大物狩り”に挑むことになるのだが…。
外来宇宙生物を狩って、調理して、食べる―。石川博品が贈る“青春狩猟物語”。

以下、ネタバレありの感想です。

 

外来宇宙生物が存在する「封鎖区域」。
主人公の西山リョートは、相棒の猟犬型ロボット・カイとともに封鎖区域で外来生物狩りを趣味とする高校生です。

 

高校生活と狩猟生活を同時に営むリョート。
そんな彼に体育教師は言うわけです。「それで食べていく気?」と。
耳が痛いお説教です。高校時代、実際に言われた人も結構いるんじゃないでしょうか。クリエイター志望の人とか。

リョートは別にプロのハンターになりたいわけでもなく、ただ好きで狩りをしているだけで、そこに将来を関連づけられてもピンとこない。
当然です。
今現在、狩りの成果に生活がかかっているわけではなく、リョートは狩りという行為そのものとそれによって得られる美食を堪能するだけなのですから。

 

将来のことはよく分からないけど、今楽しいことをしていたい。でもそれだけを考えていて良いわけじゃないのも分かっている。
リョート視点による一人称の語り口は、思春期特有の漠然とした将来への不安と戸惑いのようなものが感じられて何だか懐かしい気持ちにさせられました。

 

そんなリョートですが、とりあえず今は狩り!とばかりに趣味に大いに没頭するわけです。

 

この狩りの中で、リョートはカイたちとの会話などを通し、様々な世界各地の狩りのお約束を語っていきます。
それは迷信めいた縁起担ぎであったり、先人の知恵的なものであったり。

彼らの会話やリョートのモノローグを読みながら、「狩り」とはなんて神聖で厳かなものなのだろうと初めて感じました。
命を奪って命をつなげることを真正面から向き合って、真剣に受け止める狩人の静謐な空気を感じるというか。奪った命を背負って生きていく感じってこういうものなのでしょうか。

 

まぁ私はもろにリョートパパと同じタイプの人間なので、ふんわりイメージするだけで深く理解することはできない感覚ではあるんですけど(;´∀`)
命に向き合うって、言うほど簡単に実践できるものじゃないよなぁ。

 

厳かに獲物を食材に変えてしまった後は調理!
これが本当に美味しそうで困りましたwお腹すいたー!
イラストはグロテスクな外来生物でも、お肉になるとこんなに美味しそうに思えるなんて。
でもこれって、生きてる牛や豚を見てすぐに美味しそうって思えないのと同じ感覚なのかもしれない。

 

趣味に没頭するリョートにとってひとつの転機となるのは、お隣に引っ越してきた宇宙人ヘロンの「通過儀礼」に付き添って赴いた都心での狩り
あの狩りはリョートにとっても通過儀礼だったのでしょう。
一端のハンターとして命に向き合ってきたつもりだったリョートが、自分の命に初めて向き合ったのがマダラ戦だったのかなぁ、と思うのです。命を奪ってつないできた「命」を初めて自覚したのかな、と。
その瞬間、彼は一歩成長したのでしょう。少なくとも、立ち止まっていたククミを引っ張れるくらいには。

 

ラストはちょっとラブコメ風味に日常へ。
将来について明確な答えはまだ出ていなくても、彼の狩りと学生生活の二足のわらじな日常は続いていくのでしょう。
若者のモラトリアムは少しの成長を見せつつ、まだまだ続くのです。この余韻の残し方がたまらなく好みでした。

 

とても良い青春小説でした。狩猟をテーマにした小説としても素晴らしかったと思います。
これは早く石川さんの他作品も読んでみないとなぁ。まずは積んでる「ヴァンパイア・サマータイム」からかな(1年熟成中)

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