姫の婿とり 始まりはさかしまに!


『姫の婿とり 始まりはさかしまに!』(御園生みどり著/ビーズログ文庫)★★★★☆

姫の婿とり 始まりはさかしまに! (ビーズログ文庫)
姫の婿とり 始まりはさかしまに! (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2015年5月刊。
第16回エンターブレインえんため大賞「特別賞」受賞作品です。新人さんとは思えない安定感のある和風ラブコメでした。
「姫として育てられた男」と「嫡男として育てられた女」が出てきて、前者を主人公にする少女小説は珍しいような気がします。後者はよく見るけど。
この作品、何が良いって「性別を偽ってきた人生」がちゃんとキャラに根付いているところ。
突然女らしさや男らしさを振りかざしたりはせず、あくまで「女として育てられ生きてきた男」の主人公がそのキャラクター性を最後まで貫いたのがとても良かったです。
それはヒロイン(?)の方も同じ。それでいて、徐々に自分の本来の性別を意識するようになる2人の距離感が甘酸っぱくて可愛いのです(´∀`*)
これは期待の新人さんですね。応援します!

☆あらすじ☆
千芳姫は婿とりを迫られていた。候補の冬興は雅な笑みで、漣吾は真っ直ぐな瞳で詰めよってくる。だけど千芳には婿を選べない理由が――「俺が、男が、どうやって婿を取るんだよ!」男だと知れると命がない! 千芳は城を飛び出すが、夜盗に絡まれ絶体絶命! その時、一人の少女が颯爽と千芳を助け出した。見覚えのある彼女はまさか……漣吾!? 

以下、ネタバレありの感想です。

 

祖父を裏切った常鳴国の嫡男であることがバレれば命はないため、腹心の侍女以外には男であることを隠して「姫」として生きてきた千芳
しかし婿取りを迫られ、声変わりをし、果ては夜這いまでかけられたため、千芳は城を抜け出して男として生きることを覚悟します。
その道中で起こったピンチを救ってくれたのが婿がね候補のひとり・漣吾
正体が女であることを知られてしまった漣吾は口封じのため千芳を自分の城に連れて行き、軟弱な千芳が国外へ逃亡するために彼に武術の手ほどきをすると言い出すのです。

 

「女として育てられた男」と「男として育てられた女」の出会いと恋が描かれる物語としてとても良質な作品だったと思います。

なんといってもキャラが崩壊しないところが良い!

女装をやめて以降は基本的に男言葉なのに、頭に血が上って余裕がなくなるとすぐに姫言葉に戻る千芳。
女装モノでその逆(カッとなったら男言葉)はよく見かけますが、生まれてからこれまで命がけで正体を隠してきた千芳の人生を思えば、カッとなって姫言葉になるのは当然なんですよね。
キリッとすべき場面でも姫言葉なのは少し脱力するものの、バックボーンを大事にしている感じが伝わってきて好印象でした。

 

それは漣吾も同じで、そうなるとこの複雑な状態にある2人の恋をどういう形で描いてくのかが気になるところその点を、本作はとてもうまく描いていたと思います。

女でありながら自分よりはるかに男前な漣吾に惹かれていく、という千芳の姿が可愛いんですけどコミカルで読んでいて楽しかったです。
漣吾は漣吾で、千芳の存在に安心感を感じつつ、一番ときめいた(ように見えた)ところが着飾った千芳の姿だったというところが、もうほんと徹底しているなぁとww

だからといって、千芳は男で漣吾は女だという部分も忘れてはいないのです。
夜這いをかけられて動揺する漣吾の姿や、漣吾を守りたいという思いを募らせる千芳の姿なんかは彼らの本来の性を思い出させてくれましたしね(あの挿絵は百合にしか見えなかったが)

 

ちょっとずつ距離を縮めて、その中で自分の本来の性を意識してドキドキする千芳と漣吾はとても可愛かったです。甘酸っぱいー。

 

しっかりキャラを貫いたなぁとつくづく思ったのは終盤の謀反への対応の仕方でした。
ここで「千芳が漣吾との特訓を糧に若武者として立ち上がる」なんて展開だったら凡作に思えていたのではないでしょうか。
自分の武器がどこにあるのかを千芳がしっかりと理解して「姫」としての姿を利用するという展開はとても良かったです。
いやいや男の声だろどうすんの!?とか思っていたら「御館様が姫様に乗り移られたんだ!」で腹筋崩壊しましたwwそうくるかぁー!良いね(`・ω・´)

 

そうやって「女として生きてきた人生」を武器に戦っても、最後は刀をとって冬興を打ち倒すという男らしさを見せる活躍もみせてくれて、「女としての千芳」と「男としての千芳」を同時に見せるバランス感覚がとても好みでした。
それにあのシーンは、冒頭で刀の重さに振り回されていた千芳が、漣吾との特訓でここまで男としても成長したんだなぁと感慨深くもなったり。

 

最後はばっちりタイトル回収。
「はい!オレが産みます!」からのおじいちゃんポカーン(゜Д゜)なシーンにはとても笑わせていただきましたw

 

楽しく読めた良いラブコメでした。
結局千芳姫の正体は身近な人間以外にはバレなかったってことなのかな?
「男の姫」と「女の婿」というラブコメは続いても面白そうですが、綺麗に終わってしまいましたし続刊はあるのかどうか。
もし2巻が出たら絶対買います(。ò ∀ ó。)

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