『英国パラソル奇譚 アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る』(ゲイル・キャリガー著/ハヤカワ文庫FT)★★★★★
アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る 英国パラソル奇譚【Amazon】/【BOOK☆WALKER】
前巻の感想はこちらから
英国パラソル奇譚シリーズ完結。
舞台はついにエジプトへ!そして全ての謎が明らかになる怒濤の最終巻でした。
☆あらすじ☆
〈英国パラソル奇譚〉完結篇!子育てに忙しいアレクシアのもとに、世界最高齢の吸血鬼女王からエジプトへの招待が!人類と異界族が共存する19世紀英国。伯爵夫人アレクシアは社交界に、〈陰の議会〉に、特殊能力をもつ2歳の娘プルーデンスの子育てにと多忙な日々を送っていた。そこへ世界最高齢の吸血鬼マタカラ女王からエジプトへの招待が届く。かつて〈神殺し病〉で異界族が消えたその地で、一行は古代より続く恐るべき秘密にふれることに――歴史情緒とユーモアに、人狼殺害事件の謎を絡めた大人気冒険譚、惜しまれつつも堂々完結!
以下、ネタバレありの感想です。
凄まじい出産劇が演じられた前巻ラストの2年後からのスタート。
《魂盗人》の正体が判明したのはいいんんですけど、そこまで恐れられるものだったのかはちょっと謎・・・・・・?異界族の特徴を消してしまうソウルレスと異界族の特徴をコピーしてしまう魂盗人はどっちがいやなんだろう。でもどっちも条件付きだしなぁ。
異界族からするとソウルレスも忌まわしい存在ではあるみたいなんで、文字通り盗んでいく《魂盗人》はもっとイヤなのかも。奪われた異界族の力でそのまま殺されちゃうかもしれないわけだし。
それはともかく最終巻。
ドタバタ育児に翻弄されるアケルダマ&マコン一家のもとに、エジプトの吸血王からの呼び出しとキングエア人狼団のベータ失踪という2つの事件が舞い込んでくる、というストーリーでした。
舞台をエジプトに移してもアレクシアはアレクシアのまま。
マナーにとらわれないエジプトの開放的な空気はアレクシア向きだろうなぁと思っていたので、ラストの展開はぴったりだなと納得でした。
途中、ライオール教授の秘密を黙っていたことがバレてマコン卿が怒り狂ったときはドキドキしましたし、和解しきれないうちにまさかのマコン卿転落で本当にビビリまくって読んでいたのですが・・・・・・
いやぁ、ハッピーエンドで良かった!ほんと良かった!!
開放的な異国の地で、一緒に年をとっていこうって、素敵な提案ですね。
この作品もひとつの異種婚姻譚だと思うのですが、その系統では一番好みな結末でした。やっぱり夫婦の片方が永遠に残されるっていうのは悲しいと思うのですよ。アレクシアはそれを望んでいたようですけど。これで夜中も心置きなくひっついていられますね( ´ ▽ ` )
最終巻にして色々と脇役たちの関係も変動して、最後の最後まで騒がしかったこのシリーズ。
まずビフィとライオール教授。
おおー・・・・・・そうなるフラグは立っていましたけど・・・・・・。
ライオール教授についてはこれでようやく落とし前をつけたということでしょう。教授はロンドンを離れてスコットランドに移ったら色々苦労しそうですし。アルファ怖いし。
ビフィについては衝撃すぎました。そういえば「群れに馴染めない人狼はアルファの資質があるから」的なことが前に書いてありましたねぇ。なるほどこういうことだったんですか。
それにしてもビフィのアルファ化が絶妙なタイミングだったせいで、マジでマコン卿死んだって思ってしまいました。ほんとびっくりした。
そしてあまりにも衝撃過ぎたアイヴィの結末。
まさかこんなことになるなんて・・・・・・っ!!世界の終わりじゃないですかこれ。可哀想すぎる(ロンドンの吸血鬼群が)
そんな感じで主人公夫婦も周囲の人間関係もバタバタと慌ただしく動きながらも、終盤は怒濤の展開で物語が収束。
フルーテはきっとどこかで大きく絡んでくるとは思っていましたが、彼らしい執事っぷりで締めくくってくれて満足です。アレクシア父の尻ぬぐいをしまくった彼もまた被害者と言えなくもないかもしれないなぁ。
そして最後まで格好良かったアケルダマ卿。
このシリーズを締めるのに彼以上にふさわしい人物はいませんよね。蚊帳の外に置かれているわけがなかったかぁー。
最初からラスト1行まであますところなく勢いよく、とても楽しいシリーズでした。
次回作としては、本作の25年前の物語であるソフロニア嬢シリーズがすでに既刊数冊出てるんですよねぇ。プルーデンス主人公の新作の刊行はその後になるのかな。
大きくなったプルーデンスの話の方が気になりますが、ソフロニア嬢のシリーズもスパイものということで興味があります。とりあえず読んでみようかな(`・ω・´)
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