魔女の赤い太陽 樹海の娘と月狩りの騎士


『魔女の赤い太陽 樹海の娘と月狩りの騎士』(東堂燦著/集英社コバルト文庫)★★★☆☆

魔女の赤い太陽 樹海の娘と月狩りの騎士 (コバルト文庫 と 7-2)
魔女の赤い太陽 樹海の娘と月狩りの騎士 (コバルト文庫 と 7-2)

過去を失った少女と過去にとらわれた青年の、繊細な恋を描く物語。
正直、読み終わってしばらくダウナーになりました。ちょっと色々と悲しすぎる・・・・・・。ですが、美しい恋物語でした。
個人的にはもう少し救いのあるストーリーの方が好みですが、これはこれで切なくて印象的な良い作品だと思います。

☆あらすじ☆
幼い頃の記憶がなく、人里離れて薬師の師アロとふたりで暮らす少女ルーナエは、時折家を訪れる隻眼の青年イグニスに惹かれていた。しかしルーナエが15の誕生日を迎えてからほどなく、アロが失踪した。あとには不穏な内容の手紙が残されていた。アロを探すため、イグニスを頼りに王都へ出たルーナエは、王国の暗部に関わる秘密に巻き込まれてしまい!?少女をめぐる、悲しくも切ない恋物語!

以下、ネタバレありの感想です。

 

幼い頃に記憶を失い、その時に自分を助け出してくれた隻眼の青年イグニスを一途に慕うルーナエ
そんなルーナエを育ててくれた薬師のアロが突然行方不明になったことから、手がかりになると思われる手紙を持って、ルーナエはイグニスを頼って王都を訪れます。そこで、ルーナエは失われた自分の過去に隠された秘密と、それにまつわるイグニスの罪を知ることになる・・・・・・というのが本作のストーリーです。

 

基本的に暗いです(序盤でヒロインが拷問された段階で嫌な予感はしてた)。ぶっちゃけ悲劇と言っても過言ではない物語でした。
ただ、それ以上にルーナエの恋心とイグニスの愛の美しさや切なさが印象的な物語でもありました。

 

中盤までは物語の方向性がよくわからず、イグニスの「ルーナエを溺愛しつつ距離を置く」という謎めいた態度に不信感が募るばかり。
イグニスが何を隠しているのか、それはルーナエにどう関係しているのか。
アロはどこに行ったのか。聖王を脅かす《魔女》とは何者なのか。

霧がかかったように先が見えないミステリアスな物語を読みながら、嫌な予感に胸がジリジリとする思いでした。

 

そうして明かされる真実の、どこまでも救いがないことといったら、もう・・・・・・(・ω・`)
イグニスのどっちつかずな態度に納得がいきましたけどね。ミセルは何も知らなかったのでしょうけど「男としては最低」の評は図らずも的確だったのか。イグニスが望んで引き起こした悲劇ではなくても罪悪感を持ってしまうのは仕方ないし、記憶を失ったルーナエに何も告げることができない気持ちもわかる。
それでも自分を慕う少女へ「生きる資格も死ぬ資格もない。あるのは君に殺される資格だけ」とか言っちゃうのは、やっぱり男としては最低ですよ。それを言われたルーナエの気持ちを少しは考えろ!と説教したくなりました。

 

そんなイグニスに苦しみながらも「赦す」と言えたルーニエは本当に強い。
ふたりが愛を伝え合う場面は、複雑に絡み合った過去のしがらみをシンプルで一途な愛で解きほぐしていく様子が印象的な良シーンだったと思います。

 

そんな感じでルーナエとイグニスの恋物語としては素晴らしかったのですが、個人的には物語としてあともう一歩スッキリさせてほしかったです。
というのも聖王はこのままなのかー・・・と思っちゃったので。8年前の事件が完全に私怨ってわかって少しモヤモヤしましたし。彼の強い孤独は確かに同情しますけどね。孤独を癒やすにしろ罰するにしろ、聖王についてはもう少しフォローがほしかった気がします。

アロの結末も悲しすぎましたし、正直、ルーナエとイグニスの恋が実った以外は救いがない話だったような。《魔女》騒動の結末も悲劇的でしたしね。

 

悲しくて切なくて、それでいてなんだか印象的な物語でした。
このまま終わるのが綺麗かもしれないですが、続編が読みたい気もします。

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