風とリュートの調べにのせて1


『風とリュートの調べにのせて』(健速著/桜ノ社ぶんこ)★★★☆☆

桜ノ杜ぶんこ 風とリュートの調べにのせて1
桜ノ杜ぶんこ 風とリュートの調べにのせて1

表紙めちゃくちゃ綺麗だなぁー(*˙︶˙*)
最近は異世界転生(召喚)ファンタジーが主流になりつつあるためか、「ファンタジー世界のお約束」を作中で詳しく語られないことが多いような気がします。それは読みやすくはあっても、ちょっと物足りなくも感じてしまったり。
その点、本作はとても丁寧に「お約束」を説明していきます。舞台となる国家はどのような背景をもって成立したのか。そこにはどのような社会構造ができていて、どのような問題を抱えているのか。登場人物たちの関係性はどういうもので、彼らはどのような悩みを抱えているのか、などなど。あとがきの単位の話なんかもそうですね。
あまりにも丁寧に説明していくため序盤はちょっとテンポが悪くも感じましたが、ハイファンタジーではこのくらいしっかり地に足を着けた世界観が構築されている方が私は好きです。
主人公アルの英雄譚としてはまだまだ序章。この先の展開がとても楽しみです。

☆あらすじ☆
魔王大戦終戦から二百周年、フレイスライン王国は記念式典の準備で追われていた。忙しく準備を進める第一王女セレスティーナとその二人の妹達。その傍らには、王女たちの幼馴染で王宮魔術師見習いであるアレックスの姿もあった。しかし平和を願う式典に、忍び寄る黒い影があった…。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語は、吟遊詩人ウロッポが語るアレックス(アル)の英雄譚という体裁をとりながら、アルや幼馴染みの王女たちを取り巻く人間関係を中心にフレイスライン王国の歴史、現在、そして封印されていた魔王軍の復活により人々が混乱に陥っていくまでが描かれていきます。

厚めのページ数ですが、その大半は世界観の描写と人物関係図の説明に徹しています。ゆっくりと土台から物語を構築していくタイプのファンタジーなのでしょう。

 

面白いと思ったのはフレイスライン王国の成り立ち。終盤で対立することになる魔王軍との戦争を絡めながら、どういう過程を経て生まれた国なのかを詳しく説明しているのは良いですね。歴史的背景を疎かにしないハイファンタジーはとても好きです。麦の話といい、王宮内での様子といい、しっかりと練られた世界に人々が息づいているのが伝わってくるんですよね。これは良質。

そして、世界観の説明と同じくらいの比率でページ数が割かれているのはアルを中心とする人間関係。特に王女セレスとの関係はほんのりラブロマンスの香りが(´∀`*)
身分違いの淡い恋心と、迫り来る別れ。辛い未来に泣きじゃくるセレスと立ちすくむアルの関係がすごく切なくて、これからどうなってしまうのかドキドキします。というかメインヒロインはセレスでいいのかな?年齢的にはシェイラもあり得そうだけど。

 

それにしてもアルの位置づけは絶妙ですね。
有能ではあるけれどデスクワーク向き。魔法使いではあるけれど強くはない。そして優しく穏やかな性格。
これでどうやって「英雄」となっていくのでしょうか。彼が英雄に相応しい実力を得ていく姿が描かれていくのかな?今後の成長の伸びしろが大きいので、とても楽しみです。

 

少し牛歩な感じに進む物語ですが、後半からは徐々に暗雲が立ちこめ始めます。
魔王大戦終戦二百周年記念式典の最中に起こった魔王ガイエスの復活。
混乱に陥る地下迷宮の中で、アルたちは攫われた学友達の救出に向かうことになるのです。

政治的思惑が挟まれていたり、セレスを狙う暗殺者がいたりと、物語が本格的に動き出すのは次巻以降になるのでしょう。
この1巻は序章と言うよりも物語に入るための下準備の巻という印象を受けましたしね。

 

次巻は地下迷宮からの脱出がメインになるのでしょうか。楽しみです。

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