『異世界魔法は遅れてる!1』(樋辻臥命著/オーバーラップ文庫)★★★☆☆
現代日本から異世界へ、「勇者」として呼ばれた高校生の「友人」が主人公の異世界召喚系作品。
小説化になろうからの書籍化です。
これタイトルだけは以前から知っていたものの、ずっと「魔法のある異世界」から「文明が遅れた異世界」への召喚モノだと思っていました・・・・・・主人公、まさかの日本人だった。
しかも、舞台となる異世界よりも現代日本の方がずっと魔境じゃないか!!
内容は圧倒的俺TUEEなんですが、主人公を受け入れられるかどうかで作品への評価が変わりそうな印象を受けました。ちなみに私はギリギリセーフ。ちょっとクセのある主人公の性格をクリアできれば、普通に楽しめる作品だと思います。そして、地の文からこぼれ落ちる作者の中二病に「ふふっ患ってんなぁ」てなるはず。
☆あらすじ☆
「―魔術師、八鍵水明。全ての理に辿り着くことを志す現代の神秘学者だ」現代に生きる魔術師である八鍵水明は、突如現れた魔法陣によって友人とともに異世界へ転移してしまう。だけど勇者として呼び出されたのは友人で、自分はそれに巻き込まれただけ!?しかも帰る方法がわからない!?水明は魔王討伐の旅に同行することを断り、ありとあらゆる現代魔術を駆使しながら、もとの世界に帰る方法を探しはじめる―。圧倒的な現代魔術と未知の異世界魔法が交錯する異世界ファンタジー、開幕!!
以下、ネタバレありの感想です。
魔王討伐のため、異世界に召喚された現代日本の学生3人。
しかし「勇者」として呼ばれたのはそのうちの1人だけで、主人公八鍵水明ともう一人は巻き込まれただけ。
魔王討伐を承諾する他2人に反して水明はそれを断り、元の世界に戻るための方法を探す、という物語です。
実は水明は現代日本に密やかに存在する魔術師であり、その技術は異世界のレベルを遙かに上回るものだったというのが本作のポイント。水明自身は現代魔術師の中では強くも弱くもないレベルらしいのですが、周囲が低レベルなため自動的に俺TUEEになってしまうわけです。
物語としては俺TUEEの常道を行くものなので、ジャンルそのものに抵抗がなければ楽しく読める作品だと思います。
主人公である水明のキャラを受け入れられれば、ですけど。
水明は神秘を探求する学者肌な性質が強く、異世界の魔法のレベルが低いと分かるやいなやあからさまにガッカリするんですが、それが結構鼻につく感じで不遜。
ミサワが頭をよぎったのは私だけだろうか・・・・・・(;・∀・)
ヒロインである宮廷魔導師フェルメニアと戦うときなんて、「うーん、これ、弱い者いじめじゃないの?」って戸惑ってしまうくらい(精神的に)ボコボコにします。こういう形で女の子を泣かせる主人公ってあんまりいないよなぁ、と少し驚きました。
水明が魔王討伐を断ったことにはちゃんと理由があるし、日本へ帰りたい焦燥からイライラしてたっていうこともしっかり書いてあるので、ヘイトが溜まったまま読了ということにならなかったのは良かったです。しかしフェルメニアはあれでデレるとかわんこよりもマゾ気質を感じる。
そんなわけで水明が圧倒的に強いため、どうやって物語を盛り上げるのかと思っていたのですが、終盤の展開には衝撃を受けました。
1巻クライマックス。水明の前に立ちふさがるのは、元の世界から召喚された怪異。
異世界関係ないのかよ!
現代日本の方が怖すぎるってどういうことですか。
異世界そのものが低レベルって話なんで、無敵状態の水明と張り合うにはそうするしかないのかもしれませんけど・・・・・・。といっても瞬殺だったしなぁ。
このシリーズ、まだ続いているんですけど今後も元の世界から敵がくるのかな?どうなんだろう。むしろ、異世界よりよっぽど魔境な現代日本を舞台に水明が活躍する話の方が読みたかったかもしれないです。
終盤の展開にびっくりしたし、水明のキャラにはちょっとウッてなりましたけど、全体的には面白い作品でした。
次巻からは日本へ帰るための水明の異世界放浪記が始まるのかな?
地の文が読みにくかったのでそこは改善されると良いのですが。あとがきでも書いていましたけど、確かにこの作者さん重度の中二病を患ってるんだろうなぁと頷ける言葉選び。楽しんで書いているのが伝わってくる文章でもあったので、なんだかほっこりしてしまいましたw
とりあえず続刊を読んでいこうと思います。
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