殺したがりの天使ちゃんは黒木君の夢を見る。


『殺したがりの天使ちゃんは黒木君の夢を見る。』(からて著/MF文庫J)★★★☆☆

殺したがりの天使ちゃんは黒木君の夢を見る。 (MF文庫J)
殺したがりの天使ちゃんは黒木君の夢を見る。 (MF文庫J)

なかなか良かったです。ちょっと不思議な青春ラブコメ。
ネジがぶっ飛んだ天使ちゃんの暗殺作戦をかいくぐりながら、ぼっちの高校生が自分を見つめ直すお話です。
他者の悪意をリアルに書く一方で、そこから反射的に見えてくる自分の欠点を受け止めようとあがく黒木くんの姿が印象的でした。

☆あらすじ☆
空から落ちて来た謎の美少女“天使ちゃん”の胸を揉んでしまった黒木君は、その日から天使ちゃんに結婚を迫られることになってしまう。天界で結婚式を挙げるため、どうにかこうにか黒木君を殺そうと奔走する天使ちゃん。そんな彼女との婚約破棄の条件はなんと「黒木君に好意を持つ女の子の胸を揉む事」。残された期間はたったの5日間。黒木君は果たして無事に婚約破棄出来るのでしょうか…?センシティブノベル作家・からてが紡ぐ初の長編は笑えて、そしてちょっと泣けて?読むと前向きな気持ちになれる、少し不思議な青春ストーリー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

一学期早々に事故で入院したために高校デビューに失敗し、持ち前の怖面のせいで友達ができないでいた黒木勇人
ある日彼は、空から振ってきた天使ちゃんの胸を誤って揉んでしまい、「婚約です!ということで天界で結婚式を挙げるために死んでください!」という要求を突きつけられることに。

 

前半はかなりハイテンションに天使ちゃんのぶっ飛んだ暗殺計画が繰り広げられていきます。
昼夜問わないからほんと怖い。陽気に殺そうとしてくるんですよ・・・・・・そりゃ色々な意味で黒木くんも消耗していきますよね。

 

そんな天使ちゃんとの攻防を繰り広げる中で、「黒木君に好意を持つ女の子の胸を揉む」ことで婚約を解消できると知った黒木君は、期限5日の間に誰かに胸を揉ませてもらえないかと知恵を絞ります。
しかし哀しいかな、彼はぼっち。当てになる相手もいない中、黒木くんは学級委員長になることに希望を見出します。

 

後半は、誰も親しい人のいないクラスの中で学級委員長に選ばれるために、自分は何をすればいいのだろう?という黒木くんの試行錯誤が描かれていきます。
懸命にできることを頑張ろうとする黒木くんにぶつけられるのは、クラスメイトの凝り固まった偏見と悪意。
噂の真偽を確認もせず、ただ自分の思うままに思うことを吐き出す姿というのは本当に醜いですね。同族嫌悪的に嫌気がさします・・・・・・。
黒木くんの行動は全て裏目に出て、全ての気持ちを込めた演説も届かない。
切なすぎるというか胸くそが悪いというか。
外側にいる天使ちゃんがキレるのも仕方ないのかもしれません。

 

そんな重い展開の中で印象的だったのは、黒木くんが自分を見つめ直した瞬間でした。
クラスメイトと親しくなりたいと思っていながら、クラスメイトの名前すら覚えようとしてこなかった黒木くん。
「他人は自分を映す鏡」とはよく言ったもの。
クラスメイトの黒木くんに対する無関心・無理解は、そのまま黒木くんがクラスメイト各人を理解しようとも関心を持とうともしていない姿を現していたわけです。
こういうことを自分で気付くって、なかなか苦しいものですよね。愕然とする黒木くんの姿はとても哀しく見えました。

 

お騒がせな天使ちゃんがもたらした再起のチャンス。
色々激しかったものの、結局は全て天使ちゃんの願い通りだったってことでいいんでしょうか。
事故らへんのエピソードは具体的に語るわけじゃなく、わかりやすくほのめかす程度でとどめたのは良いバランスだったと思います。
黒木くんをとりまく環境にしても、全てがうまくいったわけではないけれど、これからどうなるかはわからない、という締め方もご都合主義でなくとても好みでした。

 

なかなか素敵な物語でした。
続きは出るのかな?前作の「マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。」も読んでみようかと思います。

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