半翼の逃亡者


『半翼の逃亡者』(永野水貴著/富士見L文庫)★★★☆☆

半翼の逃亡者 (富士見L文庫)
半翼の逃亡者 (富士見L文庫)

「白竜の花嫁」(一迅社文庫アイリス)の永野水貴さんの新作です。
ミステリーということでどうなるのかな?と思っていたのですが、なかなか面白かったです。
目を覚ました主人公の目の前には血塗れの男の死体。殺人の濡れ衣を晴らし、戦争を回避するために彼女の逃亡劇が始まる・・・という洋画のような物語。彼女の逃亡を助けるのが被害者の幽霊だったり、有翼人種と非有翼人種が対立してたりなどのファンタジー要素は強いものの、単純なミステリーとしても楽しめます。
恋愛面は、ああ白竜の永野さんだなって思いました。切なさと美しさが混じり合う雰囲気が素晴らしい。

☆あらすじ☆
翼を持つ民が住む北部と、翼なき民が住む南部。相争ってきた両国間でついに和平交渉が始まった。その席で、北部の女性外交官フェリータは、同じ和平への志を秘めた南部の大使アンドレアと出会う。立場を越えて信頼を深める二人だったが、その彼は今、物言わぬ姿でフェリータの前に倒れていた。捕縛された彼女の無実の訴えは北部への憎悪にかき消された。絶望するフェリータ。その前に現れたのはアンドレアの亡霊だった。戦争を回避するため、真実を求めて逃亡するフェリータとアンドレアが辿り着いたのは―。

以下、ネタバレありの感想です。

 

有翼人の国と、そこから派生した非有翼人の国。争ってきた両国がようやく和平交渉に進める、というところで突如起こった南部大使殺人事件。
その犯人とされてしまったのが主人公フェリータ。彼女は、なぜか現れた被害者アンドレアの幽霊と共に、逃避行を開始。事件の真相に迫っていきます。

 

ミステリーとしてはなかなか面白かったです。
誰がアンドレアを殺したのかという謎に、争い続けてきた二国間に横たわる根強い偏見や確執という要素が加わり、ストレートになりすぎない物語が組み上がっていきます。
キズが2種類ということで、関係者は少なくとも2人だろうなぁ、というくらいには考えていたんですが、兄妹だけじゃなく騎士まで入っていたのは予想外でした。ちょっと悔しいw
凶器発見から終盤にかけての展開は、作者の渾身が伝わる迫力あるものだったと思います。面白かった!

 

ただ、ちょっと不満だったのはあまり逃亡劇らしさが感じられなかったところでしょうか。
逃げ続ける緊張感という点は、少し物足りなさを感じてしまいました。追っ手少なくないか??
でも、まぁ、上層部がこれを理由に戦いたがってるのなら、殺人犯の確保はそこまで重視してなかったってことなのかもしれませんね。
あと、アンドレアが便利でしたし。

 

永野さんといえば少女小説家。ということで、期待していたのは恋愛要素。
本作でも、フェリータとアンドレアには事件の謎を追うパートナーとしての絆と、それ以上の感情が育っていきます。
でも悲しいかな、アンドレアは死人。
死者と生者である二人の淡い想いを、ご都合主義に走らずにそのまま終幕を迎えさせたところはとても永野さんらしかったです。
悲劇とまではいかなくても、やっぱりちょっと寂しさの残る結末でしたね。
「だから・・・・・・私の半分を持って行け」のセリフはとても良かった。切ないけれど美しい別離のシーンでした。

 

逃亡劇なミステリーとしては粗を感じるし、恋愛小説としては薄味すぎる。
だけど、全体的な調和のとれた読みやすい作品だったと思います。途中で飽きることなく、最後まで楽しく読むことができました。

今後の永野水貴さんの作家としての可能性が見える新作だったといえるのではないでしょうか。
次回作にも期待します。その前に白竜の6巻を!!!!

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