吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる3


『吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる3』(野村美月著/ファミ通文庫)★★★★★

吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(3) (ファミ通文庫)
吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(3) (ファミ通文庫)

ああもう最高すぎます!!!
2巻の予告から読むのを楽しみにしていた今回の演目・「とりかえばや」
中学時代に図書館で氷室冴子さんの「ざ・ちぇんじ!」(集英社コバルト文庫)を読んで少女小説の面白さに感動し、その後オリジナルの生々しさを知って衝撃を受け、最近ではさいとうちほさんの「とりかえ・ばや」(小学館フラワーコミックスα)の耽美さに頭がクラクラしたという、私にはちょっと思い入れのある物語だったりします。
そんな「とりかえばや」を野村美月さんがどうライトノベルとして仕上げるのか、高校生の演劇としてどうやって成り立たせるのか、読む前からとてもワクワクしていました。
私の期待は裏切られなかった!むしろ期待を上回る素晴らしさでした!!
色香が漂う妖艶な「とりかえばや」の物語を、青くさい高校生が主人公である吸血鬼シリーズの世界に再現し、再構成し、素晴らしい青春小説へと作りあげるその手腕に脱帽です。

脆く儚い人の心。そこに永遠はあるのでしょうか。
問いかけに対して詩也が出した答えと、渾身の想いをこめた舞台に鳥肌が立ちました。この感動は1巻を読んだときに劣りません。いや上回ったかも。
そして切ない・・・・・・っ!もどかしい!
野村美月先生の作品はどれを読んでも心をしめつけるような感覚を与えてくれますね。素晴らしい作家さんです。
なので、お願いですから、ご自愛ください。ほんとにお願いします(´;ω;`)

☆あらすじ☆
「お前はわたしを愛することになる」そんな雫の言葉に動揺し、綾音との距離感にも戸惑う詩也。一方、演劇部では次の劇の準備が始まるが―次の文化祭公演は、何と四つある演劇部が合同でひとつの劇を上演するのだという!いち子の脚本・演出で、演目は『とりかえばや』。綺羅星のごとく集った各チームのトップの間で、宰相中将役の詩也は奮闘することに。だが稽古を進める内に、詩也の胸に、ある人物が吸血鬼ではないかという疑いが芽生え…。演劇×吸血鬼のドラマティック青春ノベル、第3弾!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

文化祭恒例の、4つの演劇部の選抜メンバーで上演される合同演劇。
その題目は「とりかえばや」であり、詩也は恋多き悩めるプレイボーイ・宰相中将を演じることになります。
他チームのトップ達の素晴らしい演技に刺激を受ける詩也。一方で、雫によって告げられた「吸血鬼と人は永遠になりえない。その恋はいずれ破局する」という宣告に動揺し、綾音とギクシャクした関係になってしまいます。
うまくいかない稽古の中、詩也は女君役の永門偲が四の君役の筒井百合香のうなじに噛みついている場面を目撃してしまって・・・・・・というのが今回のストーリーでした。

 

「とりかえばや」といえば、性を入れ替えて育った男女が、入れ替わったことによって見ることのできた世界と、そこに本当の意味で生きていけるわけではない自分の真実の姿へのギャップに苦しむ物語なのだと私は思っていました。なんとなく(私個人のイメージですが)「とりかえばや」の物語で恋は重要だけど中心ではなく、あくまで女君と男君を真実の姿へ導くためのギミックであり、性差を乗り越えられない象徴として「恋」があるのかなぁと考えていたんですよね。

 

ところが「吸血鬼」版の「とりかえばや」は詩也演じる宰相中将の物語。
宰相中将といえば、気が多すぎてフラレまくりの色男。一見すると浮気ばかりの軟派な男に見えるものの、彼の芯にあるのは全ての恋へのひたむきな情熱であり、そこが魅力的なキャラクターです。
そんな彼からすれば、男君への恋も女君への憧憬も四の君への情も、全てが両立するんですよね。
全てを欲し、全てが手に入らなかった宰相中将を物語の中心に置くからこそ見えてくる一つの問いかけ。

脆く儚い人の心。そこに「永遠」はあるのか。人の恋はうたかたで、「永遠」にはなりえないのか。

この問いかけはそのまま、第3巻全体のテーマとなっていました。
綾音への恋を自覚した直後、雫によって突きつけられた「吸血鬼と人との違い」に思い悩む詩也。
倒錯的ともみえる、愛情とも友情とも割り切れない偲と百合香の複雑な関係。
偲と百合香の関係は妖艶な「とりかえばや」の世界に通じるものがあり、さらには物語そのものにもリンクしていて、ここらへんの構成力は流石の一言でした。

彼らに共通するのは人の想いは永遠になりうるものなのかという疑問と、そこから生まれる苦悩でした。

真剣に迷い、悩み、苦しむ詩也の姿に胸がしめつけられるよう。前巻では少し子供っぽくて頼りなさが目立った彼ですが、今回は少し悩み方に成長がみられたような気がします。
不老の吸血鬼であっても、精神が成熟しないわけじゃないんですよね。

 

そして、答えをみつけた詩也が渾身の想いをこめて演じた「とりかえばや」
1巻のドラキュラ伯爵を上回るような、鳥肌が立つ演劇でした。偲と百合香の関係に決着をつけ、さらには詩也自身の答えを雫に叩きつけるかのようなラストを迎えた今回の演目。
本当に素晴らしかった。慟哭の挿絵も素晴らしかった。
詩也自身が出した答えも良かったです。「たとえうたかたの恋でも。恋をしているその間は永遠なんだ」というのは美しい答えですね。
永遠なんてものは存在しないのだから、こうあってほしいと考える「永遠」くらいは美しくあってもいいのかもしれません。

 

問いかけへの答えまでは良かったのに!
一緒にいるために綾音への恋を隠すことを決めた、その決断も理解はできるけど!
ああなんてもどかしいのか。見事にすれ違ってしまった・・・・・・。

次巻は甘さ増し増しということでしたので、期待しましょう。
雫の真意も、詩也を襲った犯人の正体も気になりますし、4巻発売が楽しみです。
でもほんと野村美月先生ご自愛くださいね!!

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