廃線上のアリス


『廃線上のアリス』(マサト真希著/ぽにきゃんBOOKS)★★★★☆

廃線上のアリス (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)
廃線上のアリス (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)

夏の港町を舞台に、傷ついた少年が「幽霊」の少女と出会う青春ラブストーリー。
廃線と廃屋でしか会えない少女との、現実感に欠けるふわふわと夢のような逢瀬。
その一方で、少年を取り巻く重い現実と、正体のわからない少女への漠然とした不安。
表紙から想像するような爽やかさだけではない、少し暗い話でしたがそれがとても良かったです。
時に若さと無謀さはイコールになりがちですが、その瞬間を必死に生きている様ががたまらなく愛おしく感じたりもするんですよね。
ラストには賛否両論ありそうですが、私は好きです。

☆あらすじ☆
「見つけた。あなたが、わたしの鼓動――。」
不登校の十七歳・譲羽朗は、東京を逃れ生き別れの父が住む愛媛県の小さな港町を訪れる。そこで出会ったのが、廃線を裸足で歩く不思議な少女「アリス」。一冊の本がきっかけで近づく二人だが、アリスはかたくなに正体を明かさない。そんな折り、朗は町で「廃線の幽霊」のうわさを耳にする……。
恋した少女は何者か。本当に夏の亡霊(ゴースト)か。
切なく鮮烈な青春ラブストーリー、登場!

以下、ネタバレありの感想です。

 

深い傷を負ったまま、現実から逃げるように東京から離れた少年・譲羽朗
彼は、訪れた小さな港町にある廃線の上で、不思議な少女・アリスと出会います。
どこか現実感の薄いアリスに、急速に惹かれていく朗。
「アリス」は何者なのか?という謎を軸に、朗の後悔や家族との確執などを交えながら物語は展開していきます。

 

朗は、思春期ならではの繊細さが痛々しい少年でした。
死んでしまった友人に対する、取りかえしようのない後悔。
自分を放置したまま姿をみせない実父への苛立ち。
実母や義妹、義父とのギクシャクとした関係。
朗の過去が想像以上にリアルで驚きましたが、それだけに彼がどれだけ傷ついたかまざまざと思い浮かんで切なかったです。仕方ないと割り切れるようならどれだけいいか。
現実に疲れ切った朗が、現実を感じさせないアリスに惹かれてしまうのも何だかわかるような気がします。
対するアリスはというと、物語の終盤までまさに「幽霊」のように曖昧なヒロインでした。
朗のアリスへの憧憬は強く伝わるのに、一方でアリスの存在はどこか弱く儚くて今にも消えてしまいそう。
自分が誰かみつけようとしないで、というアリスの願いも不可解でミステリアス。
それでも、アリスが朗を愛していることだけはちゃんと伝わってくるんだから、作者さんうまいなぁと唸るしかありません。

 

アリスは幽霊なの?お父さんとはどういう関係なの?過去に朗と何があったの?と、ギリギリまで謎を引っ張ってから明かされる真実。

途中でピンときたものの、そうであってほしくないなぁという私の望みは残念ながら叶いませんでした。
朗とアリスの恋は許されるものではないけれど、それでも「ぼくはかまわない」と伝えた朗は格好良かったです。冷静に考えるとダメって言いたくなるんですけどね。
先の見えない刹那的な恋があってもいいじゃない、と思わせる魅力的なラストシーンでした。

しかし父よ。「走れよ少年」は良いセリフだけど。おまいう・・・・・・

 

きっとこの本を読んだ人はあのラストシーンの先を想像するはず。
ふたりはその後どうなってしまうのか。
私は、父の言う「微妙に遅い」とか、鑑定を受けるのを避けたっていうのは、そういう意味でとってほしいという作者のメッセージだと受け取りました。
じゃないと、悩んで苦しんだアリスが救われないですし(´・ω・`)
きっと、ラストシーンの先には笑顔のハッピーエンドが待っていると信じています。

 

良い作品でした。フカヒレさんのイラストの透明感も相変わらず素晴らしかったです。

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