ご恩、お売りします。 恩屋のつれづれ商売日誌


『ご恩、お売りします。 恩屋のつれづれ商売日誌』(朝倉景太郎著/富士見L文庫)★★★★☆

ご恩、お売りします。 恩屋のつれづれ商売日誌 富士見L文庫
ご恩、お売りします。 恩屋のつれづれ商売日誌 富士見L文庫

第一回ラノベ文芸賞審査員特別賞受賞作です。とても良い作品でした。
恩を忘れないことを条件に、一生忘れられないほどの恩を売ってくれるという「恩屋さん」が主人公の連作短編。
なぜ恩屋さんは恩を売って欲しいとやってくる客人たちにそんな要求をするのか?
妖怪でも何でもない普通の青年の恩屋さんが、どうして都市伝説上の存在として語られるのか?
恩屋さんが抱える「事情」がとても悲しくて、彼の人柄もあわせて考えればどうしようもなく泣きたくなる気持ちにさせられました。

☆あらすじ☆
都市伝説としてひそやかに語られる「恩屋」さん。彼に頼めば、どんな願いも無償で叶えてくれるという。恩屋が請求するのは、その恩を忘れないこと。ただそれだけ。仕事に悩むTVディレクター、彼氏が欲しい女子大生、家族を救いたい女の子など、今日もさまざまな悩みを抱えた人が、彼を頼りに扉をたたく…。「畏まりました。恩屋幸太郎、あなたに恩を売らせていただきます」都心の雑居ビルに住まう和装の魔法使いが、訪れる人の心を解きほぐす。

以下、ネタバレありの感想です。

 

4本の短編で構成されている作品ですが、新人賞受賞作は最後の「恩屋の流儀」で、残りは新たに書き下ろしたものだそうです。

 

まず、最初の「都市伝説の男」で、恩屋さんがどういう存在なのか、恩屋というのは何をする仕事なのかが説明されます。
出だしがなんだかホラーテイストに感じたのですが、気のせいでした。
一生、忘れられないことを恩を無償で売ってくれるが、恩を忘れてしまったら代償をいただく。
これだけ聞いたら怪談話みたいですよね。
しかし、恩屋さんの抱える事情が明らかになると、その約束事がとたんに切ない気持ちにさせるものへと変わってしまいます。

ひとりの例外なく、出会って一週間で存在を忘れられてしまう恩屋さん。

面白いのは、恩屋さん自身はごく普通の(?)青年であるということ。
なぜそんな現象が起こってしまうのか、どうやったらこの問題は解決されるのか、恩屋さん自身にも全くわからない。
誰か自分を覚えていてくれる人はいないのか、という一心で恩屋さんは「恩屋」を始めることにしたのです。この設定からしてすでにどうしようもなく切なすぎました。

 

そして、第2話「暗躍」、第3話「笑顔の裏で」では、恩屋さんである恩屋幸太郎の人柄についてさらに深く掘り下げられていきます。
着流しを着て物腰柔らかい好青年の恩屋さん。
自分の事情を語るときの、優しい笑顔を悲しそうに浮かべる姿が容易に頭に浮かびました。
10代半ばで、この怪奇現象に巻き込まれてからの彼についてあまり詳しくは語られていませんが、きっと凄絶な人生だったはず。
恩屋さんが笑いながら語った「親には家を追い出されてしまっているのでなかなか。『お前なんかうちの子じゃない』なんて言われましたよ。」というセリフが涙を誘いました。
最初に自分の存在を忘れた母親にこれを言われたとき、彼は一体どれだけ混乱したでしょうか。そんなことを笑い話にしてしまうくらい、繰り返された経験なのだろうな、と思うと悲しくなります。

 

特に悲しいのは、恩屋さんが、すでに例外の存在を諦めているように感じられるところでした。
知り合った人々が自分を忘れる度に悲しそうに笑う恩屋さん。
知り合った人たちだって恩屋さんを忘れたくないと願っているのに忘れてしまうんですよ。本当にどうしてこんな事が起こってしまっているのか。

 

恩屋さんに感情移入してどうしようもなく切なくなっていくなかで、満を持しての最終話「恩屋の流儀」
ここで出てくるのは家の借金問題に苦しむ女子高生・翔子です。
彼女の登場時点で恩屋さんは自分のやってきたことに期待をできなくなっていて、「恩屋」を畳むことを考えています。
それでも、翔子の問題を一緒に解決していく中で、少しずつ幸太郎と翔子の関係が近くなっていき、最後はデートに出かけるまで親密に。これは、もしや待望の「例外」!?と期待にドキドキしてしまいました。

・・・・・・甘くないなぁ。

ああもう切ない!
一体いつまで恩屋さんは悲しげに笑っていなければいけないのでしょう。
涙を流す翔子に微笑む恩屋さんがイケメンすぎて泣けます。

 

恩屋さんが心から笑えるハッピーエンドが読みたいです。ぜひぜひ続編を!

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朝倉 景太郎,烏羽 雨KADOKAWA / 富士見書房 2014-11-20
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