灰燼のカルシェール What a beautiful sanctuary


『灰燼のカルシェール What a beautiful sanctuary』(桜井光著/星海社文庫)★★★★☆

灰燼のカルシェール What a beautiful sanctuary (星海社文庫)
灰燼のカルシェール What a beautiful sanctuary (星海社文庫)

人類が滅んでしまった終末の世界を二人で旅する白衣の女と半機械の男。そんな男女が主人公のディストピア小説です。
割と序盤からオチをうっすらと読めてしまうものの、支え合い依存し合う二人の儚さがとても好みな作品でした。
スチームパンクシリーズと同じ世界観だそうですが、私みたいな未プレイの人間でも楽しく読めたのでかなり独立性が高い作品なのだと思います(あとがきにもそうありましたし)
挿絵もイチオシです。こういう重厚感と迫力のある絵はほんと良いです、作品にもぴったりでした。

☆あらすじ☆
異形に歪んだ超大な“大機関時計”が墓標のようにこの星の全土に突き立ったその日、世界は終わった。機械死人が呻きを上げ、生き残った僅かな命を貪り尽くして静かになった世界に残された最後の“人”、青年・キリエと少女・ジュヌヴィエーヴ。ふたり寄り添いながら、すれ違いながら、死んでしまった世界の果てで最後の場所を求め、旅を続ける―「スチームパンクシリーズ」の桜井光が綴る“美しい終末世界”

以下、ネタバレありの感想です。

 

謎の「大機関時計」が惑星中に突き刺さった結果、人類含む全ての生物が滅んでしまった後の世界。
そんな世界にあって唯一の生き残りである2人の男女、白衣姿の少女・ジュネと彼女を守る半機械の青年・キリエ
物語は、終末後の世界にはびこる機械死人(サイバーゾンビー)と戦いながら、「最後の世界(サンクチュアリ)」を探し求める2人の旅が描かれていきます。

 

灰色の空、朽ち果てた廃墟の街、そして人に擬態する機械死人。
ディストピアもの特有の寂しい空気。その魅せ方が絶妙な作品でした。

 

そして主人公2人の関係性がすごく良かったです。
一見、欠損のない完全な人間に見えるジュネ。首を取り外し可能なくらい機械化がすすんだキリエ。
メタ的に見てしまうと、機械死人たちがいう「サイゴノヒトリ」が誰なのかすぐ分かってしまいますね(まぁそこはあんまり隠す気も感じませんでしたが)。
自分の身体を次々に機械と取り替えながら必死にジュネを守ろうとするキリエの姿が痛々しく、そんなキリエをもどかしく想いながら見守るジュネの姿が切ない。
そして、親子や姉弟のようでありながら、恋人未満みたいな初々しい関係にたまらなくニヤニヤしてしまいました(「殺戮のマトリクスエッジ」でも思ったんですが、桜井光さんのもどかしさを感じさせる恋愛描写はすごく好きです)

一方で、キリエが素直に(?)好意を見せるのにどうしてジュネはそれをあえて無視するのか。相互依存みたいな関係なのに、どこかギクシャクとすれ違ってしまうのはなぜなのか。読みながら気になって仕方ありませんでした。
なんとなくジュネは人間じゃないのかも(+何か秘密がありそう)と思ってはいたのですが、ラストの展開は予想以上に切なかったです。

 

全体的にジュネとキリエの2人だけの物語として完結している作品でした。
「大機関時計」の正体とか、なぜキリエの前に黒い時計針が現れるのか、とかの説明はなし。謎を残しながら物語は幕を閉じてしまいましたが、これは「スチームパンクシリーズ」をプレイしたらわかるんでしょうか。バッドエンド後の世界らしいですし。でもほとんど18禁アダルトゲームなんですよね・・・・・・。とりあえずPSP版の「紫影のソナーニル」が気になってます(全年齢版らしいですし)。

 

スチームパンクシリーズが気になるものの、今はこの物語だけでいいです。わからないところも含めて、ディストピア小説として素晴らしかったですから。
ラストの後のふたりを想像すると切なさが増してしまいますが、きっとふたりだけで幸せに過ごしていくのだろうと信じてます。

 

それにしても、挿絵がいちいち凄かったです。見開きでの迫力は一見の価値があります。
挿絵以外にもちょこまかと小物のイラストがついているのも珍しかったですね。こういうこと、他社ももっとやればいいのに。

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