『薬屋のひとりごと』(日向夏著/ヒーロー文庫)★★★★☆
2014年8月刊。
とても面白かったです。
中華な世界観の後宮を舞台に、薬毒マニアの女の子が探偵役で活躍するライトミステリー。
冷静沈着で知性あふれるものの、かなりの変人という主人公が良いキャラクターでした。そして彼女をこき使っている態の宦官の青年がミイラ取りになっていっている様がとても楽しかったです。
連作短編のように、小さな事件を積み上げて大きな流れを描き出す構成なのですが、ひとつひとつの事件も味があって読み応えがあります。おすすめです。
☆あらすじ☆
大陸の中央に位置する、とある大国。その皇帝のおひざ元に一人の娘がいた。名前は、猫猫(マオマオ)。花街で薬師をやっていたが現在とある事情にて後宮で下働き中である。そばかすだらけで、けして美人とはいえぬその娘は、分相応に何事もなく年季があけるのを待っていた。まかり間違っても帝が自分を“御手付き”にしない自信があったからだ。
そんな中、帝の御子たちが皆短命であることを知る。今現在いる二人の御子もともに病で次第に弱っている話を聞いた猫猫は、興味本位でその原因を調べ始める。呪いなどあるわけないと言わんばかりに。美形の宦官・壬氏(ジンシ)は、猫猫を帝の寵妃の毒見役にする。人間には興味がないが、毒と薬の執着は異常、そんな花街育ちの薬師が巻き込まれる噂や事件。きれいな薔薇にはとげがある、女の園は毒だらけ、噂と陰謀事欠かず。壬氏からどんどん面倒事を押し付けられながらも、仕事をこなしていく猫猫。稀代の毒好き娘が今日も後宮内を駆け回る。
以下、ネタバレありの感想です。
さらわれて後宮の下働きにさせられた少女猫猫(マオマオ)。
養父の教育と特殊性癖のために薬物毒物に人並み外れて詳しい猫猫は、その能力を見出され、宦官の壬氏(ジンシ)によって寵姫・玉葉妃の侍女とされます。
後宮の上流階級に関わることになった猫猫は、壬氏の差し金やら何やらで後宮で起こる様々な事件の謎解きをしていく、というのがこの作品の概要です。
猫猫のキャラクターはとても良かったです。
探偵役なだけあって、冷静沈着、そして豊富な薬毒の知識や花街で得た多くの知識で彼女は不可思議な事件をあっという間に解き明かしていきます。それだけデキる人間なのに、面倒ごとは嫌いだとばかりに目立つのをいやがる。顔を醜く化粧しているというのにはびっくりでした。
目立たないようにとても徹底している、なのに毒物をみると妖艶に恍惚としてしまうものだから返って目立つという。
頭が良いのにどこか抜けていて、観察力に優れているのに色恋には鈍感。なんとも愛嬌のあるキャラクターでした。
そんな猫猫をこき使う壬氏。
ミイラ取りがミイラになるという言葉はまさに彼のためにあるといえるでしょうw
終盤に近づくにつれてどんどん猫猫にのめり込む彼を見ているのは楽しかったです。マゾヒストな性格もなかなか好きでしたwそして、その傍で見守る高順の反応もとても面白かったです。
壬氏の正体は結局明示されたわけじゃないですが、まぁ明らかですよね。でも宦官じゃない(と思う)のに後宮出入りしてるのって大丈夫なんでしょうか。まぁ試金石って言ってたからいいのか?
猫猫と壬氏が関わる多くの事件、ひとつひとつは短編のようでいて、最後に全て少しずつつながるという構成はとても美しかったです。
全体的に、後宮や妓楼という閉鎖的な世界で、美しくも爛れて腐っていく人間たちに切なくなるお話でした。一番好きなのは阿多妃の話でした。 誰もが後ろ暗い感情を持つ世界で、阿多妃の真っ直ぐな姿勢はとても綺麗に私には見えたので。
この作品、単行本で出されていたものの文庫化らしいのですが、シリーズ化の予定はないのでしょうか。
猫猫と壬氏のコミカルなやりとりも良かったし、世界観と調和した謎の数々も面白かったので、ぜひ続きを出して欲しい良作でした。
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こんにちは、みか子さん。
時々、過去にレビューなさった作品のレビューが送られてくるのですが、私の設定がおかしいのでしょうか?
ちなみに今日は『薬屋のひとりごと』第1巻のレビューがおくられてきています。
宜しくお願いいたします。
はにまるさん、ご報告ありがとうございます!
WordPressの読者登録による通知でしょうか?
以前のブログで書いていた記事の一部だけをこちらのブログに手動で移していたので、その公開のタイミングで通知が送られてしまったのだと思います。
本日(6月22日)公開した「薬屋のひとりごと」1巻のレビューも、以前のブログに載せていたものと同じものです。
今後も全ての記事を移転させる予定はないのですが、時折、過去の記事が1、2件ほど公開されることがあると思います。
過去の記事の通知を止める方法があるか、こちらでも調べてみます。
ご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。
はい。そうです。
ワードプレスです。
古いレビューが送られてくるのは一部の記事の引越し作業をなさっているからなのですね。
了解いたしました。
以前りゅうおうのおしごと11で
近々「薬屋のひとりごと」に手を出したい!と
感想を残しましたがやっと手をだせました。
猫猫ちゃんいいキャラですね!実にカワイイ。そして
ナイス変人!
少女向け小説だけあって少女漫画同様主人公と相手の男(必ずしも彼氏になと限らない)の関係性を軸に話が展開する典型的構造ですが、猫猫ちゃんのキャラで定番的ヒロインと相手男の関係が逆転しているのが面白い。普通なら女の子側が
相手の男に振り回されながらだんだん距離が詰まるパターン
(なに!あんなやつ!→だんだん気になる→デレル→でも
今更どうやって距離を詰めようか→葛藤 困難イベント→
くっ付く→ひと波乱→オチがこの手の基本構造だと思います)
美男子で女の扱い上手そうな壬氏があっさりデレて
きになるあの子を目で追ってしまう乙女状態www
いくらんでもちとおかしいのではwwwここが唯一の不満点w
豊富な毒物知識とミステリー後宮 花街ネタと作者が好きなもの全部ぶち込んで無理やり煮込んでいい味出る料理してしまった感があります。すげーw 重箱隅突き勢対応で中華王朝の時代設定をぼかしてるのもまたよいw
後宮と花街が出てくるのでの女のドロドロあんどマウティングのための細かい鞘当て合戦を延々見せられるのを警戒
してましたが思ったより薄口で安心。
猫猫ちゃんは既視感があって考えてみたのですが80年台に活躍した少女漫画家の川原泉氏の一連の作品の主人公ぽい。頭が回りみよーに達観していて、下ネタすら受けながせるが変なところで男女の機微に疎い(ということで川原先生の少女漫画をお勧めします。たぶんミカコさんはいける!
人気作家なので文庫化されてます)
久々に少女もの作品を読みました。実は
妹がいたこと大学時代の先輩(男ノンケちゃんと妻帯者)に少女漫画少女小説そしてBL本も叩きこまれたので少女もの精神汚染耐性には自信がありますw
さて次の事件ではどんな毒がでてくるのやら。これも楽しみ
です。いきなり1巻で最終兵器ボツリヌス菌毒をつかって
しまうなんて。。。。。。
タングステンさん、コメントありがとうございます。
有言実行!素晴らしいです!!
言われてるように少女漫画の典型的関係性を逆転してるような構造があるから男女問わずウケているのかもしれませんね。
でも男性側が女の子に振り回されている少女漫画も意外と多いんですよ!(「おもしろいやつ」とか言いながら目で追ってしまう系男子)(それでもジンシ様ほど振り回されてるイケメンは珍しいかもしれませんが笑)
毒物ミステリーと時代設定の噛み合わせが絶妙な作品ですよね。
この手の中華もので「中華風」を強調するのはもはやお約束ですねー。
少女向け小説界隈では中華風物語も和風物語はとても多いですが、そのほとんどが実際の国家や史実からは外していきます。
あくまでファンタジーな架空世界なので細かいツッコミはご容赦を、というアピールはこの手の作品には欠かせないのだと思います。
後宮ものの中では女同士のドロドロ物語もありますが、薬屋はそのへんかなりマイルドですね。あくまで主体はミステリー。
本人が後宮とは一歩引いた位置にいる立場なのも大きいと思われます。
川原泉さんの作品は読んだことがないのですが、電子書籍があったので試してみますね。オススメありがとうございます!
とりあえず名前だけ聞いたことのある「笑う大天使」からいってみましょうか。。。
「薬屋のひとりごと」は、2巻以降もとても楽しいですよ!
ぜひお楽しみくださいね!(^o^)