知らない映画のサントラを聴く


『知らない映画のサントラを聴く』(竹宮ゆゆこ著/新潮文庫nex)★★★★★

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)
知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)

ああああああああああああ!!!
えぐってくる!なんかすごくえぐってくるよ!!
喪失と再生を、ぐるぐるぐるぐると回転しながら綴っていく物語。
私にとっては触れないでほしいところを的確にえぐってくる、読んでいて本当にしんどい作品でした。
なのに読後感が最高すぎて、もう!
無職の女と、コスプレ男。共通の喪失感を抱えたふたりの出会いが何を生み出すのか。
「とらドラ!」の竹宮ゆゆこさんが描くちょっと壊れた大人のボーイ・ミーツ・ガールです(ボーイ?ガール?かどうかはおいといて)。

☆あらすじ☆
錦戸枇杷。23歳。無職。夜な夜な便所サンダルをひっかけて“泥棒”を捜す日々。奪われたのは、親友からの贈り物。あまりにも綺麗で、完璧で、姫君のような親友、清瀬朝野。泥棒を追ううち、枇杷は朝野の元カレに出会い、気づけばコスプレ趣味のそいつと同棲していた…!朝野を中心に揺れる、私とお前。これは恋か、あるいは贖罪か。
無職女×コスプレ男子の圧倒的恋愛小説。

こんなにカオスなのにあらすじ通りの物語でした(((( ;゚д゚)))
以下、ネタバレありの感想です。

 

就職活動に失敗し、無職のままダラダラと実家で過ごす23歳女、錦戸枇杷
夜道で突然彼女の「大切なもの」を奪ったセーラ服姿の変態、森田昴
ふたりを繋ぐのは、枇杷の親友で昴の元カノ・清瀬朝野。
物語は朝野の死という共通の喪失感を抱えるふたりの出会いから始まり、枇杷が朝野の死を受け入れ、止まってしまった「回転」を再び回し始めるところまでが描かれます。

 

正直、枇杷の現在の状況に身につまされるところがあって、読んでいて辛かったです。
あの小姑ポジション辛いわー。実家を追い出される場面に泣きそうになったわー・・・・・・。

 

そんな枇杷が出会った変態紳士な昴は、想像の斜め上をいくぶっ飛び具合でした。
元カノの死に落ち込んでいる彼氏を必死に慰めた挙げ句に、ある日突然セーラー服をきて「俺が朝野だ!」と叫んでいるところを目撃した初台の人が可哀想すぎる。
一番の被害者は彼女で間違いない。

 

大切な親友と大切な女性、それぞれにとってかけがえのない存在を失ってしまって、同じように壊れてしまった枇杷と昴。
回転を止めた者どうしで寄り添い合う姿がとても切なかったです。
そんなところに留まっていても、どこにも行けないしどうにもならないよ、と思いながらも、このふたりが再び回転するためには必要な時間なんだろうな、と寂しい気持ちでふたりの同棲生活をながめてしまいました。

 

昴との奇妙な同棲生活を通して、徐々に回転し始める枇杷の心。
次第に昴に惹かれていく枇杷が、それを「罪」だと感じて、しかもそう感じることに朝野の存在を見つけるというのが痛々しくてたまらない。というか昴でいいのか?
誰にも理解されない喪失感を唯一理解してくれるのが元彼というのが、なんともいえない背徳感を生み出していました。
どうすればいいの!?文句があるならなら出てきてくれよ!という枇杷の叫びが間近に聞こえてきそうでした。

 

どれだけ昴に惹かれても、どれだけそれを「罪」だと感じても、そもそも昴は「枇杷」を見てはくれていない。
枇杷が朝野の死を受け入れても、昴がダメならふたりはどこまで行っても交わらない平行線のままなんですよね。
もうこれは告白して振られるという段階にすらいかないんじゃないかとハラハラ。

 

それでも、訪れた伊豆で初めて昴は「枇杷」に向き合います。
どこかふわふわと地に足がつかない感じだった昴が、あの瞬間初めて自分の感情を枇杷にぶつけたんですよね。ああやっとこっちを見てくれた、と心底ホッとしました。
枇杷も、本当の意味で「昴」を見たのはあの時が初めてなんじゃないでしょうか。
枇杷が「朝野の意思」を語ったときに、枇杷の中での弔いが終わったように私には感じられました。
そこまでの枇杷の想いは罪悪感という形で「朝野」を引き出すためにあっただけのような気がするんですよね。
自分でもちょっと何言ってるかわからない。

 

ともすれば、昴と別れたまま枇杷の再回転だけを描いて終わるのかと思った物語。
ラストのハッピーエンド(?)のおかげで読後感は最高でした。
昴と枇杷の関係がどうなるのか明示しないのが、余韻があってとても良かった。

 

そして、最後まで読んで冒頭に戻る。
「回転」というテーマにこれ以上ないほど適した構成でしたね。にくい!

 

昴との再会のために「罪」と向き合う枇杷。
その姿は、子供時代のくるくると回ってはしゃぐ枇杷と朝野の姿そのままに、とても楽しそうでした。

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