この恋と、その未来。1 一年目 春


『この恋と、その未来。 ー一年目 春ー』(森崎ビンゴ著/ファミ通文庫)★★★★☆
この恋と、その未来。1 -一年目 春- (ファミ通文庫)
この恋と、その未来。1 -一年目 春- (ファミ通文庫)

全寮制の高校に入学した主人公のルームメイトは性同一性障害の女性だった、 というところから始まる物語。一年目春、と副題にあるからには高校生活を全て描ききりたいのかな。難しいテーマだけに、期待したいです。
この巻は新生活の始まりと出会いの巻で序章なのですが、ラストは物語全体の先行きに一抹の不安を感じさせる切なさが詰まっていてとても良かったです。

☆あらすじ☆
超理不尽な三人の姉の下、不遇な家庭生活を過ごしてきた松永四郎。その地獄から逃れるため、新設された全寮制の高校へと入学を決めた彼は、期待を胸に単身広島へ。知らない土地、耳慣れない言葉、そして何よりもあの姉達との不条理な日々から離れた高揚感に浸る四郎だったが、ルームメイトとなった織田未来は、複雑な心を持つ……女性!?四郎と未来、二人の奇妙な共同生活が始まる――。
『東雲侑子』のコンビで贈る、ためらいと切なさの青春ストーリー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

今から6年ほど前、「ラスト・フレンズ」というドラマがありました。4,5人の男女がシェアハウスで共同生活をする姿を描くストーリーで、上野樹里が演じていた住人のひとりルカが性同一性障害の女性でした。彼女は、自分を親友だと思って頼ってくるミチル(長澤まさみ)のことを好きだったのですが、それを打ち明けることができずに苦しみます。その一方で、親友だと信じていた住人のタケル(瑛太)からの告白に動揺し、嘆く姿がとても強烈でした。
あのドラマほど、私の中で強いインパクトを残した作品は他になかったと思います(世間的にはミチルが錦戸亮演じる恋人から受けていたDVのほうが印象が強いのかもしれませんが)。

 

そして、本作のヒロイン(と言っていいのか・・・)織田未来と主人公松永四郎の関係に、私は苦悩するルカと彼女への想いを抱えながら見守り続けるタケルの姿を重ねて見てしまいました。
未来は性同一性障害の女性であり、生徒の自主性を重んじる校風を掲げる新設校において男子生徒として過ごすことが許されています。全寮制の高校で男子生徒として扱われる以上、暮らすのは男子寮。そして、彼女のルームメイトとなったのが四郎です。

 

怖い3人の姉と母によって女性へ過剰に萎縮する性格となってしまっていた四郎。
未来の秘密を知る協力者となった初めのうちは、グイグイとくる未来に怯えつつも、次第に男なのか女なのか曖昧な存在である未来に馴染んでいきます。
男友達のように気楽な関係なのに、男じゃない。
女として見てはいけないのに、身体は女性のもの。

異性としての女性に免疫のない高校生が混乱してしまうには十分な状況だったのでしょう。だめだと分かっていながらも、四郎は未来に惹かれていきます。

 

本作ラストで、四郎は自分の中にある未来への想いを自覚します。
心は女じゃないのに身体は女性であることへの苦しみを打ち明け、「ずっと友達でいてくれ」と怯えながら頼む未来へ、四郎は心の中だけで「もう、遅いよ」と返事をします。もし四郎が恋を打ち明けたとき、未来は「ラスト・フレンズ」のルカのように嘆くのでしょうか。
どんなに女性にしか見えなくても未来の心は男性。男性が男性を受け入れることもあるのでしょうが、未来にそれはできないことは元彼のエピソードで明かされていますしね。

 

前述のドラマでルカに告白したタケルは、彼女が性同一性障害であることを知りませんでした(たぶん。ちょっと記憶があやふや)。もし知っていたらタケルはルカに想いを伝えたのでしょうか。拒絶されると分かっていてもなお、自分の気持ちを届けようとしたのでしょうか。
四郎はどうでしょうか。
彼は自分の想いを隠し続けるという選択をとりました。今はまだ。
これから、彼が未来との共同生活を続けていく中でその選択が揺らぐことがあるかもしれません。「この恋と、その未来」がどうなるのかはまだ分からないままです。

 

「ラスト・フレンズ」のような絡み合った複雑な恋愛模様を描き出してくれるのか(あのドラマはミチルとタケルとルカで三角関係を作り上げた挙げ句に、そこに落ち着くのか!という結末も衝撃でした)、それとも未来に対する四郎の想いに焦点を絞って丁寧に綴っていくのか。

人は、どこで恋をするのだろう。
不意にそんなことを、思った。心なのだろうか。それとも、体なのだろうか。

 

未来との共同生活の中で、彼は疑問への答えを見つけることができるのでしょうか。

 

いずれにせよ、続きにとても期待できる新作でした。次巻も楽しみです。

余談ですが、広島弁女子が可愛いというのは同意。じゃけぇに萌える。広島に行ってみたいなぁ。

 

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