『キスと帝国 漂流王女ヴァージニア・ナイトの結婚』(松田志乃ぶ著/コバルト文庫)★★★☆☆
キスと帝国 漂流王女ヴァージニア・ナイトの結婚 (コバルト文庫 ま 10-26)
「悪魔のような花婿」の松田志乃ぶさんの新作。
異母姉から逃げるために各国を流れてきた王女が、互いの利害の一致から王様の求婚を受け入れるお話なのですが、割とミステリー風味かな。
ヒーローもヒロインも知的キャラという珍しい組み合わせ。ちょろすぎず、じれすぎないふたりの関係の深め方がとても良かったです。シリーズ化してほしいなぁ。
☆あらすじ☆
ヴァージニアは第二王女だ。しかし、母親違いの姉に目の敵にされ、姉のさしむける暗殺者の追跡を逃れながら、数々の国を渡り歩いてきた彼女についた愛称は漂流王女!
数年前、ようやく田舎町に落ち着いたが、そこへ突然、青年王カルロス三世がやってくる。目的は、求婚!!お互いの抱える事情を理解し合ったふたりは、友情結婚を謳歌することにしたのだが・・・・・・!?
以下、ネタバレありの感想です。
松田さんといえば「嘘つきは姫君のはじまり」シリーズや「わたしの嫌いなお兄様」などのミステリーものも書いていらっしゃいますし、あとがきでもそろそろミステリーが書きたくなっているとおっしゃっています。
でも新シリーズじゃなくて本作をシリーズ化してほしいですね。主役カップルが新鮮で良かったので。
本作の主人公は、異母姉から身を守るために各地を放浪してきた「漂流王女」ヴァージニア。
名前と身分を偽って暮らしていた彼女を探し出し、バロック皇帝に選出されるために彼女を王妃に迎えようとするのがバレンディア国王カルロスです。
堅物で生真面目なカルロスも、波乱の人生でやたら経験値が高いヴァージニアもどちらも理知的で落ち着いたキャラクター。
カップルどちらも割と冷静に物事を進める賢い人たちなので、物語そのものも髙くなりすぎない丁度良いテンションで進んでいきます。この読みやすさは流石。
予想以上にミステリー要素が入っていた本作。
ヴァージニアとカルロスの出会いの1章での球根の賭けといい、2章の「王の眼」盗難の方法といい、夫婦のどちらかが探偵役(謎解き役)を専任するのではなく、それぞれの得意な場面で交替で推理を披露するというのがいいですね。
それでいて最後のライオン騒動でカルロスがヒーロー的活躍をちゃんとこなしているところがまたいいんです!
知的キャラであってもヒーローにはどこかで身体はってほしいですもんねw
ヴァージニアの姉であるメアリィ・アンは未登場ですし、彼女の愛人にちゃっかりおさまったアンリもまだまだ腹黒く活躍できそうなので、ぜひシリーズ化して対決させてほしいです。
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