『にせもの公主の後宮事情 再会は絆を試すものです?』(雨川恵著/一迅社文庫アイリス)★★★☆☆
にせもの公主の後宮事情 再会は絆を試すものです? (一迅社文庫アイリス)
猫かぶり系ヒーローの豹変が売りだったはずなのですが、続編となるこの巻ではおとなしくなってしまったような気がします。残念。
ヤンデレぽさが良かったのに、昨今はやりのヘタレ系ヒーローにジョブチェンジしてしまいました。
ただ、今回は淑蓉がちゃんと主人公らしく活躍していて、ふたりの関係もしっかりと深まっています。糖度も良い具合に高めです。
そして何と言っても印象的だったのは兄弟愛!
☆あらすじ☆
新米宮女の淑蓉は、兄のように慕う王子・天黎と婚約中。婚礼に向けて準備を進めると同時に、祝いに訪れる人々と対面するのに大忙し。それでも天黎と過ごせれば幸せと思っていたのに、そんな彼が隠し事をしている様子!!どうやら贈り物を持参した豪商・陶家が原因だと気づいた淑蓉は、天黎に内緒で陶家を訪ねる。そこで、天黎の秘密を知ってしまい!?『信頼』するにはすれ違うのも秘策です?人気急上昇中の中華風ラブ、待望の第2弾!!
以下、ネタバレありの感想です。
晴れて想い通じて婚約者となった淑蓉と天黎。
今回は天黎側の事情を掘り下げるお話、ということで天黎の母方の実家の反逆騒動が起こっています。
確かに、第二王子という微妙な立場は政変のもとですよね。
天黎のおじいちゃんである陶伯源の目論見についてはいやいやそんなうまくいくわけないでしょ、と内心つっこみまくってました。
いくら国主の寵姫の娘が嫁にくるからって、政変おこした第二王子にそう簡単に勢力が移動するのか? とか。
疎遠になっちゃった孫に、少しでも良い思いをさせてあげたいじいちゃんの真心だと思えば微笑ましく感じ・・・る・・・?
騒動の原因は孫とじいちゃんの相互不理解にありましたが、これをきっかけに淑蓉と天黎の関係が「表面上の兄妹」から「信頼し助け合う夫婦」に大きく進展したわけですから、じいちゃんの真心もあながち無益じゃなかったってことですよね。じゃないと、ラストの天黎に「嫌い」って言われて背中を向けたじいちゃんの哀愁に涙を禁じ得ない。
じじコンの私には伯源が痛ましくてしょうがなかったです。
今回の事件では太子士傑もしっかり活躍!
士傑と天黎の兄弟は良い雰囲気ですね。馴れ合うわけじゃないけど、お互いを支え合ってる感じがとても好きです。
そして何より嬉しかったのは淑蓉がちゃんと良いところを見せたことでした。
1巻では学のある設定なのに、その設定が死んでいたのが気になっていました。
でも今回はしっかり教養を活かして天黎を助けています。天黎のために頑張る姿が微笑ましいヒロインです。
ただ、ヒロインが頑張るとヒーローがヘタレるのは少女小説の宿命なのか。
1巻では淑蓉を拉致監禁するというヤンデレぶりを発揮した天黎ですが、今回は(実家絡みのこととはいえ)あまり活躍もせずキャラもこぢんまりとしてしまったのが残念でした。
もうちょっと、こう、彼には淑蓉を愛するがゆえに常識が見えない状態になってくれるのを期待していたので・・・・・・。
ヘタレたあげくの初夜寝オチには驚愕しました。
まぁ、ちょこちょこ引っかかるところはありましたが、面白かったです。
この2巻はかなり綺麗にまとまっているので、ここで完結しても問題はなさそうですが3巻も発売予定だそうです。
次巻では、天黎の重たい愛がもうちょっと色濃く出てくれることを期待します!