『精霊歌士と夢見る野菜 紅色の祝祭』(永瀬さらさ著/角川ビーンズ文庫)★★★★☆
ヒロインの暗い感情がきつかった1巻に比べ、2巻はだいぶ読みやすくなっていました。
というより、面白くなってます。
今回はメロウの成長とエイディのキャラ掘り下げがメインのお話。
ボンクラの皮をかぶった腹黒エイディの負の面が出てきました。また、メロウは困難な課題が与えられるも、新しくできた仲間とそれを乗り越えようと奮闘します。
メロウとエイディの関係についても糖度が少し増量です。
☆あらすじ☆
国を支える『精霊歌士』を目指すメロウは、野菜しか作れない落第生。自分の心を奪った才能をもつエイディに追いつこうと奮闘中だが、まさかの補講を受けることに。講師は、カリスマ精霊歌士で、性格最凶のヴェルク。彼は収穫祭の舞台で「林檎の木を“三重唱”で実らせる」という難題を突きつけてくる。林檎のためには“恋の歌”が必要なのに、ヤキモチからエイディとぶつかってしまい!?第11回小説大賞受賞作、待望の第2弾!!
ちなみに、公式サイトで書き下ろしweb小説が2本掲載されています(以下のリンクからいけます)。時系列的には1巻と2巻の間になるのかな?本編よりも甘い気がしたのは私だけだろうか。
web小説その1
web小説その2
以下、ネタバレ感想です。
2巻になって新キャラが加入しました。
ひとりは、砂漠の王子様シャーディー。
契約精霊絡みでメロウに助けられて以来、彼女のことが気になっているようですが、残念ながらこの巻ではエイディの恋敵ポジションまではいけませんでした。というかエイディに余裕がありすぎて当て馬にすらならなそうな・・・。
もうひとりは、リーリ。
正確には1巻から登場していた子なのですが、今回晴れて主要キャラ入り。
シャーディーとリーリがメロウの仲間になったことで、一気に物語が明るくなった気がします。 最初はぎくしゃくしていた3人がそれぞれの抱える問題を解決し、協力して補講課題に取り組んでいくまでの流れは王道ながらも惹き込まれました。こういう展開はやっぱり読んでいて気持ちが良いです。
さらに料理人としてのシャーディーと経理担当のリーリが加わったことでメロウのお店が軌道に乗り始める、という展開も良い。なんだか楽しそうな雰囲気に、メロウの店に行ってみたくなりました。
メロウたちを導く教師を務めたヴェルクも良いキャラでした。
メロウたちの個性に真摯に向き合い始めてからの彼はかっこよかったです。そしてトウモロコシの皮をむいているシーンで不覚にも萌えました(笑)
新たな仲間を得て、彼らと一緒に着実に成長していくメロウ。
その一方で、エイディのダークな側面も掘り下げられています。
天才だから1人で何でもできるだろう、と周囲から人が逃げていく気持ちって凡人の私には想像つかないけど、エイディの孤独はひしひしと伝わってきました。
1巻ではボンクラの皮をかぶった腹黒のイメージしかなかったエイディですが、今回はそのアンバランスというか脆い面がしっかり出てきました。
エイディの孤独を理解して、追いつくから!と改めて宣言したメロウに対して、「追いかけてきてほしいけど、追いつかれたくない」と言ったエイディはなんだかかわいかったです。男ですもんね。
エイディはメロウに対してしっかり恋愛感情があるようだけど、メロウは今巻ラストでちゃんと自覚したのかな?なんかまだ微妙そうでしたが、巨大リンゴで笑って「愛はでかくて重たい方が好みだ」のセリフにやられました。
今回はとても読了感が爽やかで良かったです。スポ根もの読んでる気分を味わいつつ、エイディとメロウの甘い雰囲気にニヤニヤできました。
次巻はいよいよ女王登場でしょうか。
補講課題がどう考えても落ちこぼれ予備学生には無理ゲーだろとか思ってたら、女王の意図だったようなので、その真意が気になります。
・・・・・・あとがきで「山場」と書いてあったのですが、まさか最終巻なのだろうか。