『薔薇のマリアVer.1 つぼみのコロナ』(十文字青著/角川スニーカー文庫)★★★★☆
薔薇のマリアVer1 つぼみのコロナ (角川スニーカー文庫)
「薔薇のマリア」短編その2。ただし、本編前に必読のVer0と違い、「つぼみのコロナ」は独立した話だそうです。いつ読んでもいいみたいだけど、レニィとコロナの関係が気になるのでさっさと読んでみました。予想外に鬱な話でした・・・そして予想以上に面白かった。
☆あらすじ☆
常にマリアローズを騒動に巻き込む天然系魔術士コロナと、少年レニィとの出会いを描くドタバタ珍道中―突然鬼人に追いかけられるわ、目の色が銀色になっちまうわ、変な力が勝手に身に付いちゃうわ、全部このへっぽこ魔術士に出会ったことが原因だ。おいおい何なんだこの状況、俺は無事エルデンにたどり着けるのかぁ!?―はたしてレニィの心の叫びはコロナに届くのか?魔術士コロナの真実の物語、書下ろしを加えた完全版登場。
以下、ネタバレありの感想です。
あらすじから漂うドタバタラブコメ臭・・・・・・
詐欺です!笑
確かに、冒頭のコロナとレニィが出会うシーンそのものはあらすじ通りなんですが。
「つぼみのコロナ」では、レニィとコロナそれぞれの過去と抱える問題をゆっくりと明らかになっていきます。
まずは、本編のほうでセットで現れたコロナとレニィの出会いの話から始まります。出会い方がマリアとコロナの出会いにそっくりです。いつも何かに追われているコロナ・・・
冒頭はレニィの過去が明らかになるのですが、他の登場人物に劣らず彼の過去もなかなか辛いものだったようです。とはいえ、心の中で死んだ弟に語りかけすぎだよ(クセらしいが)
しかし、レニィの過去なんてまだまだ甘いものだとわかるのが、その後明らかになるコロナの過去。
正直、本編でのコロナはラノベにありがちなドジっこなだけだと思ってました。
が、まさかの鬱仕様。
コロナがドジなのもバカなのも、全て彼女を買って育てた魔術師の人体実験のせいだという。コロナの、無垢で無邪気なようでいて、でももう何かを諦めてしまったかのような心境が読んでいて本当に辛かったです。脳天気な言動と裏腹に内面は卑屈ですさんでいるコロナが痛々しすぎます。物語が進み、レニィに惹かれていく一方で、どんどん壊れていくコロナ。壊れていくコロナがすがった「お師匠様からもらった薬」もコロナがゆっくり壊れていくためのものでしかなかったことが分かったときの絶望感が半端ないです。
そして、レニィがコロナを救うために奔走する姿はヒーローらしく素敵だったのですが、延命措置のような結果でしかないという、容赦のなさ。
え?これ、どうなるの??「薔薇のマリア」外伝的な立ち位置でこれからも進むの??
だって、コロナは結局、今壊れるのが止まっただけで、いつか壊れることには変わりないんです。救いがあまりにも小さい結末に衝撃しかなかった・・・
過去に傷を持って、ひとりぼっち同士寄り添いお合うコロナとレニィの関係がなんだか好ましかっただけに続きが気になった仕方ありません。幸せになってほしいけどなぁ。
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