海の底


『海の底』(有川浩著/角川文庫)★★★★☆

海の底 (角川文庫)
海の底 (角川文庫)

「図書館戦争」で有名になった有川浩さんの自衛隊三部作の3作目。海上自衛隊の隊員が出てくるお話です。
自衛隊三部作は、以前第1作(にしてデビュー作)の「塩の街」を読んで面白かったので早く残り2作も読もうと思っていたものです。3作ともストーリーも世界観も何もつながっておらず、どこから読んでもOKということだったので、2作目「空の中」をすっ飛ばして「海の底」から読んでみました(理由は手に取った順)。

☆あらすじ☆
4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地。停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の隊員が見た時、喧騒は悲鳴に変わっていた。巨大な赤い甲殻類の大群が基地を闊歩し、次々に人を「食べている」!自衛官は救出した子供たちと潜水艦へ立てこもるが、彼らはなぜか「歪んでいた」。一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく――ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンタテインメント!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

エビ。エビ。とりあえずエビ!!!

 

レガリスと名付けられた巨大エビに襲撃された人間たちの奮闘を描くパニック小説でした。
「塩の街」とは違ってリアルタイムに混乱していく状況が、複数の登場人物の視点から描き出されていきます。
冒頭の混乱っぷりとエビに捕食される人々の恐怖の描写があまりにも緻密で、無意識に奥歯を噛みしめて読み進めていました(冷汗)

作中では「ゴ○ラ」の話が出てきたけど、私としては「ウルト○マン」を見ている気分でした。
巨大生物VS人間って、「ウルト○マン」の怪獣VS科学特捜隊の対立軸を思い起こさせるような・・・・・・いや、ゴジ○もそうなんですけどね。
なんというか、往年の特撮ものを見ている気分にさせてくれる小説でした。

 

物語は特に2人の人物の視点を中心に進んでいきます。(実際は何人もの視点があるのですが、話を大きく動かしていくのはこの2人)

 

一人は、海上自衛隊隊員の夏木三尉。
彼は相棒の冬原三尉と共にレガリス強襲を受けた結果、桜祭りに遊びにきていた子供たちと共に潜水艦「きりしお」に立てこもることを余儀なくされます。この子供たちがくせ者。
とくに圭介という中学生には手を焼かされて読んでいるこちらもイライラするのですが、慣れない保父さん業に奮闘する夏木の姿が微笑ましいので無問題です。
この圭介くんも物語が進むにつれて、ちゃんと精神的に成長してみせるので、そこらへんも見所でした。

 

もう一人は、神奈川県警の明石警部。
「きりしお」に閉じ込められた夏木に比べ、明石警部はレガリス対策の最前線で活躍します。
この物語のMVPは間違いなく彼でしょう。一時的に上司となった烏丸参事官との掛け合いも、やんちゃな夏木&冬原コンビに比べて渋い魅力を放っています。
お互いに相手の意図を読み合ってニヤリとしている感じがたまりません。オトナな男性コンビって素敵です。

 

「自衛隊三部作」と位置づけられるだけあって、物語全体の主人公は夏木三尉なのだと思います。ラブロマンスな要素も彼に任されていたので。
夏木と望のカップルについては、「海の底」では微糖というレベル。
お互いに意識してるんだけど、状況の異常さと年齢差でなかなかうまくいかない。
実際、あんな非常時に20代半ばの男性が女子高生に恋心を確信的にもつってなかなか難しいだろうなぁ。
私はおそらく夏木と同世代なので、冬原にちゃかされても恋であることを認めたがらない夏木に共感してしまいます。

まぁ、望が5年も一途に想い続けたあげく、自衛隊まで追っかけてきちゃったので、結果的にはうまくいく(と思われる)のですが。
夏木、こんなにいい男なのに5年も彼女できなかったってどういうことなの。ファンタジーですね。

夏木と望のその後の話は、「クジラの彼」という短編集でも読めるらしいです。
「空の中」を読んだ後に読む予定なのでまだどういう話なのかわかりませんが、とても楽しみです。

 

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