自殺するには向かない季節/海老名龍人


自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)
自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2017年5月刊。
第6回講談社ラノベ文庫新人賞「大賞」受賞作。
なんだろう、今の気分的に妙に刺さってくるこの感じ。
自分の不用意な一言で同級生の女の子を自殺に追いやってしまった少年が、タイムスリップして過去に戻る物語。
この展開、過去に戻った主人公はヒロインを助けに行くと思うじゃないですか? そんなことはなかった。
ひたすらダウナーで憂鬱な雰囲気で綴られるのは、繊細すぎてフラっと消えてしまいそうな少年と少女が生と死を見つめ続ける暗い青春の日々。
このテンションの低さと死生観、正直とっても好きですね・・・・・・

☆あらすじ☆
永瀬はある朝、同じクラスの生徒、雨宮翼が列車に飛び込む瞬間を目撃してしまう。なぜ死を選ぶのかその理由を考えるが答えは出ない。そんな永瀬は友人の深井からあるカプセルを渡される。それはとても小さなタイムマシンなのだという。半信半疑ながらその日の夜にカプセルを飲んだ永瀬が目覚めると、二週間以上も過去に戻っていた! そして永瀬は、雨宮と雨の屋上で出会うのだが――青春を鮮烈な筆致で描く<大賞>受賞作が登場!

以下、ネタバレありの感想です。

 

イライラしていた朝、ぶつかってきた女に「死ね」と吐き捨ててしまった高校生・永瀬良平
その直後に電車に飛び込み自殺をした女が、実はクラスメイトの雨宮翼だったことを知った良平は、友人・深井冬悟から渡された謎のカプセルを飲んで2週間前に時間遡行することになり――

 

という感じで物語はスタートするのだけど、最初に思っていたのとは全く違う方向へと話が進んでいき驚きました。

 

そもそも良平がタイムカプセルの薬を飲んだ理由は、家庭不和の苛立ちゆえのヤケクソ。
そこに雨宮の自殺の引き金を引いた罪悪感はなくて(自覚がないだけとしても)、ただもう投げやりな気分でヘンな薬を飲んだというだけの話。

 

ああ、このヒロイックじゃない感じ、すごい好きだなーって思いました。
俯瞰して見るとクソ野郎めって思っちゃうのだけど、彼の視点から見るとその心の動きがストンと落ちてくるというか。

これで死ぬというのならそれでも構わない。
わざわざ死ぬ理由は思いつかないが、わざわざ生きている理由もなかった。

あ〜〜〜、思春期〜〜〜〜!
思春期こじらせてる〜〜〜〜!!

 

死ぬことに気負いはなく、生きることにはやる気がない。
でも、そうだよね生きるってだるいよね・・・・・・

読んだ時の気分によってこの死生観は合う合わないが分かれそうなのだけど、今はなんか分かる・・・・・・疲れてるのかな、私。

 

そんな感じで生きることに執着の薄い高校生が主人公で、実は良平の言葉とか関係なくいつ死んでもおかしくなかった自殺願望持ちがヒロインという本作。

関わりを持ちたくなかった思惑と裏腹に、良平は雨宮が自殺する方法を調べるのを手伝うことになるのです。

 

うわー、自殺を止めるんじゃなくて手伝うのか!とびっくり。
しかも雨宮の自殺方法探しを手伝うなかで良平もまた自身の死生観と向き合い、その方向性が生と死の境目をふわふわと曖昧にさせていくものだから物語は果てしなく病んでいくのです。

 

本当に、なんて面倒くさくて繊細な人たちなんでしょうか。
特に大変な事情やシリアスな背景があるわけでもない。
でも、生きる意味を見つけることができなくて、それなら死なない理由もないよなぁっていう気怠い雰囲気が妙に刺さる。
余計な力が入っていない感じがいいのかもしれません。

 

そんな死生観を共有させていく二人が最終的にどこにたどり着くのかをぼんやりと眺めていたのだけど、行き着いた結論には妙に納得してしまいました。
これだけ病めばそうなるよねって。

逆フラグばりにバタフライ効果が否定されていたので、その後についてはある意味予想通りではあったのだけど、自殺をやめる理由もまた気怠い感じで良かったです。
ここで恋愛要素を強めすぎるのではなく(ほのかな恋愛要素自体は良い)、これまでの二人の雰囲気を壊さない形で「死ねなかったのだから、生きるしかないのだろう」という結論に至ったのが個人的にはすごくツボでした。
死ぬ理由も生きる理由も最後までふわっとしてるところが今の気分的にすごく好き。結局はそんなものですよね。

 

そういえば、ラストの深井の死については驚いたけれど彼が助けたかった相手というのは良平ですよね?
最初の7月16日にティッシュを鼻に詰めていた深井は、雨宮の自殺の引き金を引いた罪悪感で死んだのであろう良平を助けたかったはず。だから良平に雨宮翼の自殺について強く意識させ、タイムスリップさせようとしたのか・・・・・・。

 

それはいいとして、なんでその後に深井は自殺したんです?
私の読解力が低いせいか、最後で説明されたタイムスリップの原理がいまいち飲み込めない。
走馬灯を利用するってことは、タイムスリップ前の時間軸ではタイムスリップした本人は死んでるってこと?
だとしてもなぜ良平が助かった時間軸で・・・・・・と思ったけれど、「結果と原因が逆転している可能性」があるんですっけ。
うーん、タイムスリップ関連は正直よくわかんなかったw

 

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