トリア・ルーセントが人間になるまで/三田千恵


トリア・ルーセントが人間になるまで (ファミ通文庫)
トリア・ルーセントが人間になるまで (ファミ通文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2017年4月刊。
父王を助けるために「ルーセント」と呼ばれる薬を手に入れる極秘任務を担った王子と、「ルーセント」を名乗る少女のボーイ・ミーツ・ガール。
人ではない「薬」として扱われてきた人間味の薄い少女が、主人公との旅の中で少しずつ「人間」へと変わっていく姿が感動的な作品でした。
「ルーセント」という設定は面白かったし、他の要素も悪くはなかったのだけど、なんだろう、設定を凝った割には全体的にこじんまりとまとまったなっていう感じが少しあるかも。

☆あらすじ☆
その身に救済を宿した少女の運命を描く、ドラマチックファンタジー!
病に伏した父を治す秘薬を手に入れるため、兄の特命によりサルバドールとの取引に臨んだジンドランの第二王子ランス。そこに現れたのは、抜けるような白い肌と銀色の髪、深く青い瞳を持つ美しい少女トリア・ルーセントだった。自らを「薬」と名乗る彼女とともに王都マキシムを目指すランスだが、トリアの護衛であるロサに「トリアに恋をさせて欲しい」と懇願され――!?
その身に救済を宿した少女トリアと小国の王子が辿る、ドラマチックファンタジー開幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

病床にある父王を救うため、兄王子ダミアンから「ルーセント」という薬の取引を任された王子ランス
出向いた先で彼を待っていたのは「ルーセント」を名乗る少女トリアと、その護衛・ロサ

ランスたちが求める「ルーセント」とは、サルバドールという一族が秘蔵する人の姿をした万能薬のことなのです。

そのルーセントの一人がトリアであり、ランスは自分の役目が彼女を無事に国へと連れ帰ることだと認識を改めることに。
こうしてトリアたちと出会ったランスは、病を治す薬の材料を各地で採集しながらトリアたちと王都を目指すことになり―― という感じで物語は進んでいきます。

 

トリアやロサと交流を深めるなか、彼女たちの事情や自らの事情を語り合うことで信頼関係を築いていくランス。

「ルーセント」として、「人」の尊厳を奪われてきたトリアの生い立ちは過酷で残酷なものだったけれど、王位継承権を放棄しなければならないほど追い詰められていたランスの過去もなかなかに重く、そんな二人が惹かれ合うのもなんだか納得がいくものでした。
彼らの仲を取り持とうとしたロサの動機も切ない。
ボーイ・ミーツ・ガールではあるのだけど、根底にある家族愛の物語と切ってもきれない関係にあるところが面白い作品だったと思います。

 

そんな感じでトリアとランスの人物像を掘り下げながら、タイトル通りに「トリア・ルーセントが人間になるまで」を描いた物語としてはとても綺麗に終わっていると思います。
「トリアはルーセントだから」が口癖の無機質な雰囲気だったトリアの変化はすごく素敵だったし、ラストの盛り上がりも良かったと思います。

 

ただ、各章冒頭や道中で色々と世界観や設定を掘り下げた割には、あまり上手くストーリーに絡んでいなかったような?
トリアの命を狙った革新派の話も途中でどこかへ行ってしまって「あれ?」って感じでしたし。私が読み落としたのかな・・・・・・。
そもそも「ルーセント」が死なないと新しい「ルーセント」が生まれないのなら、トリアは今後も命を狙われるのでは・・・?

 

ここも含めて、すごく掘り下げた割には「なんで掘り下げた?」と引っかかる箇所が多かったように思えました。やたら設定が多すぎて途中は流し読んでしまった。
世界観に奥行きを持たせるためだったのかもしれないし、採取した「薬」に関連する話ではあるんだけど、うーん・・・・・・なんか、こう、情報が散漫としたまま大きく使われることもなく終わっちゃった感。
細かいエピソードのひとつひとつが、最終的にどこかの一点に集約して活用されるかと思っていたんですけどね。
伏線っぽいのもたくさん合った気がするのに、特に伏線でもなく私の勘違いだったのか・・・・・・。

 

それと、せっかく世界観と設定を凝っていて王族設定まであるのに、(内情はともあれ)単純な家族愛の物語だけで締めるのは・・・・・・。
1冊でまとめることを考えればおさまりは良いのだし、このへんは好みの問題かもしれませんけれど。

 

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