【雑記】ナノカレメモ:文化祭以降の鷹人の行動を振り返ってみた


「菜の花の彼―ナノカノカレ―」の76話まで読んでつらつら考えたことについての超個人的備忘録。
単行本12巻以降の雑誌掲載分までネタバレしてるので注意。

 

鷹人が2年越しにようやく無理心中の件を告白したので、あの後夜祭から鷹人のなかで無理心中事件の扱いがどうなっていたのかを改めて振り返ってみた。

 

まず11巻65話で菜乃花の記憶喪失(どこまで忘れているのか)を知る直前、鷹人は

今 菜乃花にわからなくても
俺は 俺がしようとしてしまった事を
どう償えば

と考えた後、登校してきた菜乃花に心中の件を告白しようとしている。

→ しかし半年間の記憶がないことを知って中断(優子たちに詳しい話を聞くため?)

 

続く12巻66話では心中未遂のことは一旦横に置き、菜乃花の記憶喪失をどう受け止めるべきか、自分の気持ちをどうするべきか、という考えでいっぱいいっぱいになっている。

結果、9巻53話以降で呪いのようになっていた「友達」のキーワードで爆発。

震えながら「やりなおしたい」と告げてしまう。
ここは半ば勢いだったと、モノローグの「嘘なんかじゃないのに」という葛藤を見るかぎりは思う。
もちろん隼太を忘れてる菜乃花の現状につけ込む自覚はあるからこその「下劣な男だ」なのだろうけれど。

そして続く67話。
眠る烏丸に「嗤ってんだろ?」とつぶやき(烏丸=無理心中なので、ここでは心中の件が頭にありそう)、千里からの厳しい非難へ零した言葉がこれ。

菜乃花じゃなくて 俺が落ちればよかったな
こんな状況になって 俺は地面なんかよりもっと下に落ちた気分だ
こんなのと やりなおせって方が無理か

この時点で鷹人は菜乃花からの返事をもらっていない。
「やりなおせって方が無理か」という言葉からして、彼自身あまり良い返事を期待してなかったんじゃないだろうか。
所詮は勝算もなく勢いで告げた言葉だったということだろう。
鷹人が菜乃花に好きになってもらえると本心では信じていないことは72話の「だから俺はどっかで・・・」のセリフからも読み取れる(まぁあれだけ振られ続ければね)

また、同じく67話で、駅のホームで偶然菜乃花と行き会った鷹人は、菜乃花に話しかけることもなく通り過ぎようとしている。

この時の彼は自分の行動や千里の言葉に内心の整理がついていなかったのではないか(千里の言葉が心に残っているのは、セリフをそのまま菜乃花に向けて言い直していることから読み取れる)。
つまり、この時点ではまだ自分の行動への嫌悪や落胆(「地面なんかよりもっと下に落ちた気分」)があるんじゃないだろうか。
しょんぼりしてるからこそのスルー。
もしくは期待してない返事をもらうのを避けたかった?

→ ここで菜乃花から「やりなおすって何をやり直すの?」と聞かれ、「そこからかよ・・・」といった感じで脱力。

菜乃花が自分を好きだったことがない事実と印象の最悪さを噛み締めつつ、中学時代に付き合えたことが「奇跡」だったとため息をついている。

→ そこからの「授業中 お前ずっと俺を見てたろ」

今まで自分を好きだったことがないという菜乃花の興味が、今まさに自分に向いているという事実に、再び「奇跡」を起こせるのではないかと期待が高まったのかもしれない。

→ 結果、再び爆発。

ずるくて卑怯で 最低最悪で
自分と他の全てに責められても
今のお前がそう思わない未来があるなら
お前が 俺を見てくれるなら
それで もういいって どうしても思っちまうんだ

「自分と他の全てに責められても」という言葉からして、無理心中や隼太の居場所を奪ったことへの意識はありそう。
それでも記憶を失った「今のお前」から興味を向けられているという「奇跡」の方を「それでもういいって」選んでしまった。
「今のお前がそう(=ずるくて卑怯で最低最悪)思わない未来があるなら」ってことで秘密を打ち明けない決意を密かにしている?

→ 68話冒頭の翌日の会話をみるに、この爆発の直後に鷹人は菜乃花からやり直しOKの返事をもらっている。
→ つまり「奇跡」はすぐに起こっていて、冷静になる時間はない。

結論として、この流れで鷹人が無理心中の件を告白するのは、まぁ彼には無理だったろうなと思う。
途中まで余裕はないし、奇跡を奇跡だと心底理解しているだけに、言えないまま蓋をする気持ちもわかる。文句のつけようがないほどに卑怯者だけど。

最初、記憶のない菜乃花に無理心中の件を言えなかったことは、記憶喪失の菜乃花をできるだけ混乱させないという周囲の方針的に、分からなくもない。
その上で「やり直し」を求めなければ良かっただけの話なのだけど、それ自体がその場の勢いによるもの。
ここで深く考えられる人はそもそも心中なんて考えないし、菜乃花を求めて勢いのままに行動しちゃうところはすごく鷹人らしいなって思う。

隣の席だから菜乃花の前から姿を消すこともできず、会話を交わせばいずれ爆発していた。
つまり、「やり直し」の前に罪を告白できるかという点において、鷹人は鷹人である時点で詰んでたわけだ。

 

やり直しが始まりクリスマスデートに誘った後、鷹人は隼太のアメリカ行きを知ることになる(12巻69話)

この時点までは「なぜ隼太がこないのか?」という疑問を覚えつつも、あまり深く考えている様子はない。
プレゼントを考えている最中に一瞬存在がよぎって振り払っているから、意識的に深く考えないようにしていたのかもしれない。

しかし健介から隼太の渡米を聞いたことで、いよいよ「やり直し」の舞台が整ったことを知る。
やり直しを邪魔するであろう最大の脅威が去った以上、「奇跡」を成功させる可能性が大幅にあがったという興奮もあっただろう(「菜乃花の為に笑って去るってか」の顔は嘲笑か自嘲か)

→ 結果、健介に宣言する。

俺は 菜乃花の無い記憶を踏み台にしてでも もう一度やり直す
何でもする 今からの俺に出来る事を
卑怯で 汚くて 正しくない
こんな男に あいつがなれるか?

→ この時点で鷹人は完全に開き直った。
ここで無理心中の件を告白する選択肢は完全に消えたのではないか。事情を知っていて菜乃花に話しそうな唯一の存在がいなくなったのだから。
「卑怯で 汚くて 正しくない」としても「何でもする」と宣告したのは、その意識もあったんじゃないだろうか。

この後は、クリスマスデートをギリギリ成功させ(70話)、ウザ彼氏化するも菜乃花に訓練されてうまくいく(71話)。
また、「隼太くん」の存在を知った「今の菜乃花」は自分の方に傾いていることを知り(72話)、さらに貰えるという発想すらなかった本命チョコをもらい(73話)、菜乃花からの確かな好意を感じ取っている。

順調にやり直しが進んでいるなかで、無理心中の件は鷹人の心からすら消え去っているようにみえる。
全く話題にも脳裏にも登場しないから。
これもう浮かれて忘れてるんじゃない?って不安を覚える。もともと視野が狭い人だから、菜乃花とのやり直しに心がいっぱいになっていてもおかしくはない。

ただ、クリスマスデートの最中の「忘れた事はどうでもいいだろ」というセリフをみるに、意識的に欠けた半年間の出来事(無理心中含む)を自分の中からも菜乃花の中からもなかったことにしようとしていたのかもしれない。

といわけで、開き直った後の鷹人が無理心中の告白をすることも期待できない。念願のやり直しが順調に進んでいるのに、あえてそれを壊すようなことを鷹人がするはずはないし、もっと言うなら考えることすらなかったように思える。
善悪的に言えばもちろん完全なる悪だけど、ここまで話がうまくいった以上は黙ったまま進んだ彼の気持ちも分かってしまう。この心境は菜乃花にも覚えがあることじゃないかな(2巻12話)

まぁ強いて言うなら72話の「卑怯な男なんてフツーに嫌だろ?」のあたりで告白すべきだったのかもしれないけれど、ちょっとやけっぱちになってる上に(隠そうとした隼太のことを自ら説明、「そうだろうな」の自嘲、「俺がどれだけ好きでも結局お前は・・・」という諦め)、菜乃花の赤面を見てそれどころじゃなくなってしまった。
ちなみに、「ごめんな」のセリフはカットイン的に菜乃花の隼太に対する恋を上塗りしたことに対する謝罪だと私は考えている。

 

しかしここでやり直しに障害が生じる。
それが記憶を失う前の菜乃花の幻。

この幻覚は何だったのだろうか。

2年間、二人の関係を先へ進ませなかった幻覚について、当初、鷹人は自分の罪悪感ゆえのものと信じている(74話)
この思い込みは2年間続いているから、彼なりに一応は罪悪感を覚えていたと考えて良いはず。結局、幻覚と罪悪感は関係なかったとしても。

「あいつが記憶をとり戻す日がいつかくるんじゃないかって
幻覚をみるくらい 俺は怯えているんだろうな」
(中略)
「無くした記憶にのっかって側にいるのを 隼太を好きだった菜乃花ちゃんに責められてんじゃないかって?」
「――そうだ」

しかし、この罪悪感に無理心中の件は入っているのだろうか?
どうもセリフだけを見る限りそこまでは読み取れない。菜乃花の記憶喪失につけ込んだこと(菜乃花の恋を踏みにじったこと)だけを指しているように思える。
あまりにも無理心中の件が話に出てこないから、え、ほんとに忘れてないか?とまたも不安が高まる。

さらにこの幻覚が罪悪感によるものではないことも直後に判明。
→ 欠けた菜乃花も自分のものじゃないと不満だという、強欲な無意識の現れ。

2年間罪悪感を覚えていたことは間違いないのだろうけれど(そう思い込んでいたわけだから)、幻覚は罪悪感とは関係なかったというオチ。これはひどいw
まぁでもその菜乃花を求める強欲さは鷹人らしいと思った。

 

幻覚の正体がわかったところで75話の花畑デートへとつながるのだけど、なぜこんな行動に出たのだろうか。

鷹人は幻覚の菜乃花を「欠落してる記憶の菜乃花」とみている。
それはつまり「隼太を好きだった菜乃花」であり、「隼太に奪われた菜乃花」ともいえる。

そして鷹人が「隼太に奪われた」ということを特に意識的に言及しているのは10巻56話。

思い出の場所も いつか俺がつけた心の傷さえも
違う記憶や違う想いに覆われて 菜乃花の中から塗り替えられるように消えていく

さらに10巻59話

とりもどそう
いつかの花畑ごと
菜乃花を自分だけのものにするんだ

加えて11巻61話では「あいつに盗られた花畑」と考えている。

つまり、「隼太を好きだった菜乃花」→「隼太に奪われた菜乃花」→「隼太に盗られた花畑」の連想がここで働いている。

中学時代の菜乃花との思い出が、隼太によって菜乃花のなかで「塗り替えられて」消えていくのが悔しかったという思いが強く残っていたのだろう。

そうすると、この幻覚は無理心中未遂の引き金となった鷹人の不満が生んだものといえる。
しかし、そこに罪悪感は関係ないから、当然に、鷹人の頭に無理心中の件は出てこない。
この連想の最中にも無理心中の件が全く出てこないので、もはや意識の奥底に封印されているのか・・・?と震える。

 

では、なぜ76話で幻覚は現実と一体化したのか?

まず、鷹人は花畑で何が起こると期待していたのだろうか。

「菜乃花にとっては 隼太の方と強くつながってしまうかもしれない風景」と言っているから、記憶が戻る可能性を考えているようにみえる。
花畑には「残りの菜乃花も全部 ここでなら手に入れられる気がしてやってきた」のであり、「それだけの時間を俺たちは過ごしてきた筈だ」という自信もあったようだから、2年間の付き合いを経て、菜乃花の記憶が戻っても自分を選んでもらえると信じていたのだろう。

→ つまり記憶が戻ることは想定内。
ただ、戻ったときに無理心中の件をどうするかは考えてないうん、やっぱり忘れてるでしょ鷹人。

ただし、道中から記憶の混濁がはじまり、菜乃花が「いかに隼太にドキドキしていたか」を話したことで「その自信が急に揺らぐ」。

→ この「自信」は話の流れ的に「隼太ではなく自分を選んでもらう自信」のはず。
ここでもやはり無理心中のことは考えてない。絶対忘れてる・・・・・・そこを思い出されたら隼太以前の問題なのだけど。

不安(予想?)は的中し、菜乃花が欠けた記憶の一部を思い出し、鷹人をおいて花畑へ向かう。
ここで鷹人は幻覚の菜乃花と現実の菜乃花が一体化するところを目撃している。

これはどういう意味だろう?

幻覚の菜乃花が「隼太を好きだった菜乃花」だとすると、「隼太くんを好きだった気持ち」を完全には思い出していない菜乃花と一体化するのはおかしいように思える。

もっとも、幻覚の意味は鷹人の主観によるものであり、菜乃花の記憶がどこまで戻っているのかこの時点で鷹人は知らず、その直前の会話から「もしかしたら全て思い出したのではないか?」と思う程度だろう。

むしろ、「閉じ込めていた場所から菜乃花が出ていく」という情景描写を含めて考えれば、全てを思い出したと思ったからこそ幻覚と現実が合体したのかもしれない。
→ 幻覚が消えるとき = はぐれていた菜乃花が戻るとき = 菜乃花の記憶が戻るとき

ここでちょっと混乱したのだけど、鷹人の不満と幻覚の消失は関係ないんだよね。
幻覚はあくまで「欠けた記憶の菜乃花」であり、それを見せていたのが鷹人自身の無意識下の不満だったという話。

ということで、ここでようやく鷹人の主観的に11巻65話の状況に戻る。菜乃花の記憶喪失の程度を知らずに(=菜乃花が事件についてどれだけ覚えているかを知らずに)罪を告白しようとした状況に。
後夜祭というキーワードで無理心中のことを思い出したのか、「鷹人くんは?」と聞かれてようやく記憶の奥底から無理心中の件が浮かび上がってきたのかは分からないけれど、鷹人はこれまで意識していなかったことが嘘のようにポロポロと罪を告白している。

しかし、その結果は、彼自身、予想外のものだったのではないだろうか。

 

無理心中の件は完全に過ぎ去ったものと考えるには重すぎる話だから、どこかで状況を壊す爆弾になるのだろうとは思っていた。
爆発はさておき、その結果はあまりにも衝撃的だったけれど。

で、この件を踏まえてよくよく振り返って考えると、鷹人自身は途中から完全に無理心中の件を意識の外に追いやっている。
喉元過ぎれば・・・というやつだろうか。開き直った後は本当に忘れてるんじゃないかってレベルで意識していない。
全く記憶が戻っていない菜乃花に懺悔しても意味はなかったのかもしれないけれど、なかなかに図太くていらっしゃる。

「俺は全然わかってなかった」というセリフ通り、本当にここに至るまで罪の重さをわかってなかったんだろうなぁ。

ああ、なんてクズい男なんだろう・・・・・・どうしよう・・・・・・このどうしようもなさが嫌いじゃない・・・・・・

恋に盲目というか、極端な性格ゆえの視野狭窄というか、行動を振り返っても「鷹人らしいな」という感想しか出てこない。

それなのに、どうしても菜乃花とやり直したかった鷹人の気持ちに共感してしまって嫌いになれない私はだいぶ末期。
どれだけ方法が卑怯で間違っているとしても、彼の一途な想いだけは本当に綺麗だと思ってしまう。
ただ、鷹人の恋は歪んでいて危ういから、想う相手を幸せにできるのかどうかは・・・・・・。

しかし菜乃花が言った「執着するほど ムキになってダメな選択ばかりするの」という言葉が的を得すぎてるなぁ。
2年も付き合った彼女の実感がこもったセリフだ・・・・・・その2年間をぜひとも見せていただきたかった。

そんなダメすぎる鷹人だけど、76話で罪の重さを自覚したなら「俺は  俺のしようとした事を  どう償えば」のセリフも重みを伴って彼の心に戻ってくるのではないだろうか。
そうじゃないと懺悔そのものの意味がない。
ここからどんな償いを見せるかによって、鷹人が「下劣な男」から脱却できるかの分水嶺になるのではないか。

 

※もしかして・・・という妄想
鷹人は12巻67話で昏睡状態の烏丸に会いに行っている。
もしや彼はずっと烏丸のお見舞に行っていたのだろうか。それともあの時だけのイレギュラーだったのか。

仮にあれからずっと烏丸の様子を見に行っていたとすると、烏丸=無理心中事件なので、本編の裏側では鷹人の心にずっと無理心中事件のしこりが残っていたという描写にもとれるのだけど。烏丸の顔を見て自分の罪を確認する、的な。

どちらにせよ76話で烏丸が目をさましているので、烏丸の存在(無理心中の件)を鷹人が自分の中で2年の間どう扱っていたかは近々明らかになるんじゃないかと思う。

2年間昏睡していた烏丸がすぐに外で鷹人に会えるとも思えないし、そうすると烏丸が物語に復帰するためには鷹人の方から烏丸に会いに行かなければならない。
烏丸が鷹人を呼ぶ可能性もあるけれど(隼太の時のように鷹人の番号を調べていてもおかしくない)、習慣となっていたお見舞で鷹人が烏丸の目覚めを知るっていうのも自然な流れな気がする。

まぁ誰かのお見舞に行く鷹人ってあんまり想像できないんだけど(病院送りだらけでお見舞いされる側だしね・・・)、その点はすでに67話があるからまだ何とも言えない感じ。

 

ついでに疑問なんだけど、隼太は無理心中しようとした鷹人のそばに菜乃花を置いて去ることに何も思わなかったのだろうか。
鷹人が菜乃花にアプローチすることは覚悟してたみたいだけど。
正気に戻った鷹人に制裁パンチして「もう大丈夫みたいですね」と言ってるけど、これで水に流したんだろうなあ。お人好しすぎない?

菜の花の彼―ナノカノカレ― 2 (マーガレットコミックスDIGITAL)
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