勇者は、奴隷の君は笑え、と言った/内堀優一


勇者は、奴隷の君は笑え、と言った (Novel 0)
勇者は、奴隷の君は笑え、と言った (Novel 0)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2017年3月刊。
奴隷として生きてきた少年が元勇者と出会い、自分の世界を広げていく物語。
師弟もので魔王討伐系の王道ファンタジーでした。ただし主人公がかなり壊れているので、そこが特徴的な作品となっているのですが。
私の好み的に言えば少し淡白だしダイジェスト的なストーリーだったけれど、心を持たない少年の変化はなかなかに見もの。
彼の今後の成長に期待したい新作でした。

☆あらすじ☆
『笑え、おかしくなくても笑えばそのうちおもしろくなってくる』―とある山村で村人たちから奴隷のような扱いを受ける少年ヴィスは、村はずれに住むやたらと明るい男グレンにずっとそう言われ続けてきた。やがて、長き眠りから魔王の復活が迫った頃、とある事件からヴィスはグレンがかつて世界を救った勇者だと知る。そして二人は村を出て、世界を周る旅に出発。魔法使いの少女ニーニとの出会い、初めての大きな街、暁森人の住む森でのこと―勇者と旅した時間のすべてが、大切な何かを失った少年を、ひとりの“勇者”に変えていく。これぞ、必読の“男泣きファンタジー”!

以下、ネタバレありの感想です。

 

かつて世界を救った勇者グレンは、精霊神によって二度目の生を与えられる。
そうして神から「新たな剣聖を育てよ」という使命を与えられたグレンは、とある僻地の村で「落牧」と呼ばれる奴隷の少年ヴィスリットと出会い、精霊神の思惑に背く形になりつつもヴィスリットを気にかけるようになるのです。

 

元勇者と奴隷の少年の出会い、とある事件を経て旅に出て、その旅路の中での様々な出会いを描いていく王道冒険ファンタジー、といったところでしょうか。
ヴィスとグレンの旅がやがて魔族や魔王との戦いにつながっていくことまで含めてとても王道な物語だったと思います。ただ随所であえて王道を外しているところがまた面白いのですが。

 

そんな王道的な物語の中で一際異彩を放っているのが主人公・ヴィスのキャラクター。

 

生まれたときから奴隷階級であり、特に理由もなく周囲の人間から虐げられる存在だった「落牧」のヴィス。
そんな境遇ゆえに彼の情緒はまるで発達しておらず、狂気的なまでに純粋な少年なのです。
何も持たないヴィスにあるのは、村で唯一口をきいてくれた村長の娘ミアンから教えられた「どんなことをされても恨まない」という「正義」だけ。
そのため人を恨む人間ではないものの、同時に、ヴィスは大事な存在以外の人に関心を持たない。ヴィスにとって大半の人間は「なんか邪魔だなー」と思ったらサクッと殺せちゃうレベルの存在なんですよね。サイコパスかよ。おそろしい子・・・!

 

ちなみにヴィスはグレンが鍛えてるので普通に強かったりするんですよね。
そこは情操教育が先だろって思わなくもないけれど、奴隷時代の彼にそんなことしたら心が潰れただろうし、グレンも最初はこんなに関わるつもりがなかったから仕方ないのか。

 

まぁそれはさておき。

 

数少ない大切な人間のミアンが魔族に奪われたことから、グレンと共に旅に出ることになったヴィス。
魔法使いのニーニリュースと出会ったり、エルフのユーナリアを助けたり、道中では様々なイベントが起こっていくのだけど、うーん、なんだろう、読んでいてすごく忙しなく感じました。
イベント起こりすぎというか、一つ一つは素敵なエピソードなのにサクサク進んじゃうから情緒を感じる暇がなくてもったいないというか。
雰囲気が淡白なので(まぁ師弟のキャラ的にしっとりした物語にならないのかもしれないけれど)、内容の割にはドラマチックな盛り上がりに欠けていたように思えました。そこが少し残念。

 

とはいえ、終盤はなかなか良かった。
心を知らなかった少年が心を失った青年からの想いに気づくシーンは感動的でしたしね。
その前にヒロインの一人からの手のひら返しに心を折られていただけに(私が)、この師弟関係が最後まで強いものとして残ったのがすごく嬉しかった・・・・・・。

 

皇国や魔族の動きも気になるけれど、これから始まる冒険の中でヴィスがどんな風に成長していくのか楽しみです。

 

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