『ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る』他 英国空中学園譚シリーズ 全4巻/ゲイル・キャリガー


ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る (英国空中学園譚)
ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る (英国空中学園譚)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★★
『ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る』2013年2月刊、『ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ』2013年12月刊、『ソフロニア嬢、仮面舞踏会を密偵する』2015年4月刊、『ソフロニア嬢、倫敦で恋に陥落する』2017年2月刊。

面白かったーーーー!!
19世紀の英国を舞台に、スパイ少女が大活躍するスチームパンク学園冒険譚です。

主人公である貴族令嬢が放り込まれたのは、とある秘密を隠した花嫁学校。
その校舎は空に浮かぶ巨大飛行船であり、教師陣が教えるのは淑女のためのスパイ術。
そんなスパイ養成花嫁学校でスパイとしての頭角を現していく主人公は、次第に英国を揺るがす大きな事件に首を突っ込むことになるのです。

スチパンギミック満載のスパイアクションであると同時に、思春期の少女を描いた青春小説でもある本作。
少女から大人へと変わっていくセンチメンタルな雰囲気や、友情のきらめき、恋のときめきも味わえる一粒で二度も三度も美味しいシリーズでした。控えめにいってすごく楽しかった!

「英国パラソル奇譚」シリーズの前日譚的な物語ですが、内容的にはほぼ独立しているのでこのシリーズだけ読んでも大丈夫だと思います。
が、吸血鬼や人狼絡みのオリジナル用語を把握するのが少し大変かもしれない(もちろん作中で説明はあります)。
アレクシア女史も最高に頭茹だるくらい面白いし、そちらを読んでからだとラストでニヤッとできる、かも??

☆あらすじ☆
吸血鬼や人狼らと人類が共存するヴィクトリア朝英国。
おてんばなわれらが主人公ソフロニア・テミニック嬢は、上流階級の子女が集まる花嫁学校(フィニシング・スクール)に入れられてしまうことに。ところがそこは、情報収集や毒物の使い方、異界族への対処などといった技術を教える、女スパイ養成所だった!?
さらにソフロニアは、空盗賊がらみの謎解きにも巻きこまれる――
歴史情緒とユーモアにみちたスチームパンク冒険奇譚、新シリーズ開幕!

以下、全4巻まとめてネタバレありの感想です。たぶん致命的なネタバレはないはず。

 

好奇心旺盛でお転婆な田舎貴族の末娘ソフロニア
ある日謎の貴婦人が実家を訪れたことから、ソフロニアは《マドモアゼル・ジュラルディン・フィニシング・アカデミー》という花嫁学校に入学させられることに。

しかし彼女が(途中でトラブルに遭遇しつつ)向かった先で待っていたのは空中に漂う巨大な飛行艇
同級生や教師陣が自分を「秘密候補生」と呼ぶ理由もわからないまま、ソフロニアはこの謎めいた学校にすぐに強い興味を抱くのです。

 

まぁ、人狼や吸血鬼を教授として迎える学校がただの花嫁学校であるわけもなく。

 

あっさりとフィニッシングスクールの正体が秘密のスパイ養成学校だと看破したソフロニアは、そこから夢中でスパイ術を学んでいくのです。その姿はまさに水を得た魚のようでした。

 

ただでさえ強い好奇心が、それを満たす技術を手に入れてしまうとどうなるか。
ーーそれはもう、習ったばかりのスパイ術を駆使してスパイしに行くに決まってますよね。

 

学校で教わったスパイの技で、すぐさま学校をスパイしていくソフロニア。
なんてロックな、いやいやパンクなキャラクターでしょうか。怖いもの知らずすぎて私がドキドキします。
でも持ち前の行動力と観察眼に、優秀な教師が仕込んだスパイ術が組み合わさった彼女の冒険はとてもワクワクさせるもの。次はどんな大きな秘密を見つけてしまうのかと、ハラハラしつつもすごく楽しかったです。

 

対する学校側も風変わりが極まっていて、勝手に動きまくるソフロニアを叱るかと思いきや、規則違反そのものではなく規則違反を目撃されたことを減点するという・・・・・・さすがスパイ養成学校! 評価基準がふるってる!

 

そしてスパイ養成学校であると同時にフィニッシングスクール(花嫁学校)であることもまた大事な本質なんですよね。
ソフロニアたちが学ぶのは「淑女」のためのスパイ術だし、生徒たちもまた淑女らしくあることにこだわるのです。
いかに淑女らしく、優雅に、上品に、おしゃれに、スパイをするか。
このユーモアあふれた雰囲気をどう伝えればいいのか・・・!
ソフロニアが友人たちとガールズトークのノリで「凶器のファッション性」について語るシーンのおかしみとか最たるものだと思いますね。銃把のデザイン性は大事だし、血を見たくないなら毒殺がスマートよね。

 

そんな彼女たちは、思春期真っ只中の女の子でもあるわけです。
オシャレに興味津々だし流行には敏感。もちろん男の子の話題も大好き。
舞台は女子しかいない花嫁学校だけど、頻繁に男子校と交流を持っているので男性キャラクターも多いんですよね。
そこからロマンスが生まれるだけではなく、陰謀が隠されているのがこのシリーズらしいのですが。

 

ロマンスといえば、最初はスパイ修行に夢中で恋愛に興味がなかったソフロニアだけど、次第に彼女を巡る恋の三角関係に頭を悩ませていくことに。
この三角関係がまたすごく面倒くさくて楽しいものでしたw

誰よりも仲良しで信頼できる協力者だけど、ソフロニアとは身分に差がある下級階層の「煤っ子」ソープ
公爵家の嫡子で貴族らしいハンサムだけど、ソフロニアとは思想的に相容れない「ピクルマン」を父に持つフェリックス

どちらも素敵だけど恋のお相手としてはどちらも難題だらけという状況で、一体ソフロニアが誰と恋に落ちるのかをニヨニヨ楽しく読みました。
フェリックスは誘惑術の実験台にするのに、ソープにはいまいち優位に立てないソフロニアの未熟な小悪魔っぷりも楽しい。
特に私は一貫してソープ派だったので、二人のじれったくも可愛い距離感にきゅんきゅんしまくりでした。

そうして最終巻の邦題「ソフロニア嬢、倫敦で恋に陥落する」の通り、ソフロニアがついに恋に陥落した瞬間はロマンス大爆発。ああもうほんと超ニヤニヤした〜〜〜w

 

それはさておき、物語は学校をスパイして秘密を探っていたソフロニアが、やがて学校の外まで飛び出し、英国を揺るがす陰謀を探り当ててしまうーーといった感じで進んでいきます。もちろん学校は重要な場所のままですよ。
その陰謀はソフロニアの大切な友人たちも巻き込んでいくため、否が応でも首を突っ込むしかないソフロニア。いやそれがなくても彼女は突っ込んでいただろうけれどw

フィニッシングスクール、吸血鬼、人狼、空賊、秘密組織、そして英国政府の思惑が複雑に絡む一連の物語はとても読み応えがありました。
最終的に明らかになったキャラ配置(誰がどこの所属か)には笑ったけれど。ほんとに、誰も彼も秘密だらけだったんですね!
家族絡み含めて最初から最後まで何も秘密がなかったのって、結局ソフロニアとソープだけだったんじゃ・・・・・・。

 

秘密だらけのキャラクターばかりで、情勢もくるくると変わっていくけれど、女の子たちの友情の強さはどんな状況でも変わりなく。
ソフロニアを中心にした同級生の少女たちの絆は最後まですごく素敵でした。いや終盤に向かうほどに素敵になっていった!
特に親友ディミティとの気の置けないキュートな関係が良かったし、アガサシドヒーグとちょっとずつ仲良くなっていく様子も可愛かったです。
ソフロニアが最初から優秀だったぶん、スパイとしての成長はディミティたちのほうが顕著だったかも。どんどん頼もしくなっていく級友たちの成長にワクワクしました。

あとは、最終的になんか好きになっていたのは悪役令嬢モニク。最後までキャラがぶれないイヤミな女の子だったけど、どうしても憎めなかったw

 

また、アレクシア女史のシリーズとのリンクも見逃せない作品でした。
英国パラソル奇譚シリーズの25年前の物語ということで共通の人物が登場することもだけど、なんといってもラストのアレ。あなた、そんなポジションに・・・!っていう衝撃がすごかったです。
「アレクシア女史の時代より文明レベルが進んでない?」と思わずにいられなかったメカ関連のオチも楽しかった。ああ、だからなかったのね、っていう。

 

いやー、最後までほんっとに楽しいシリーズでした!
スパイアクションの高揚感も青春小説特有のきらめきも、全てにおいて大満足です。
思えば、少女から大人の女性に変わっていく「変化」の時期であるという描き方がすごく良かったんですよね。少女らしい溌剌とした雰囲気のなかに、恋や友情への戸惑いや、スパイとして人を傷つけることの苦しみがビターテイストに混じるところも印象的でした。

全4巻を読み終わった今、一番したいことは英国パラソル奇譚の再読!!

 

 

 

 

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