オリンポスの郵便ポスト/藻野多摩夫


オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)
オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)

評価:★★★☆☆
2017年3月刊。
第23回電撃小説大賞「選考委員奨励賞」受賞作。
とてもロマンチックな火星ファンタジーでした。
神様が手紙を届けてくれるという伝説のポストを目指す、郵便配達員の少女と機械の体を持つ男。即席凸凹コンビな二人の旅は賑やかなほどにトラブルだらけ。それでも前へ前へと進んでいくのです。
二人の旅路からディストピア化した火星の過去・現在・未来を描き出す、切なくて優しい物語だったと思います。

☆あらすじ☆
火星へ人類が本格的な入植を始めてから二百年。この星でいつからか言い伝えられている、ある都市伝説があった。オリンポスの郵便ポスト。太陽系最大の火山、オリンポス山の天辺にあるというその郵便ポストに投函された手紙は、神様がどこへでも、誰にでも届けてくれるという。―そう、たとえ天国へでも。度重なる災害と内戦によって都市が寸断され、赤土に覆われたこの星で長距離郵便配達員として働く少女・エリスは、機械の身体を持つ人造人類・クロをオリンポスの郵便ポストまで届ける仕事を依頼される。火星で最も天国に近い場所と呼ばれるその地を目指し、8,635kmに及ぶ二人の長い旅路が始まる―。

以下、ネタバレありの感想です。

 

火星をテラフォーミングし、地球から入植が開始して200年。
その火星で郵便配達員として働く少女エリスは、改造人類クロの依頼を引き受けることに。

クロが連れて行ってほしい場所は、太陽系最大の火山・オリンポスにある郵便ポスト
それは、亡くなった人に神様が手紙を届けてくれるという都市伝説がある、今は使われていないポストでーー。

 

うわー、なんてロマンチック!

 

しかし「亡くなった人」だとか、クロの「死に場所を探している」という言葉から、なんとも切なさを予感させて物語は幕を開けるのです。

 

遠い場所にある目的地を目指し、エリスとクロは二人っきりで8635kmの道のりを109日間かけて旅することになるのだけど、その旅路は苦難の連続。

人が住めるように改造したとはいえ、今なお過酷な環境である火星の大地。
そんな火星での200年間で、人々が抱えてしまった幾多の問題。

エリスとクロの前に立ちはだかるトラブルを通して、読者は火星の歴史とその先にあるものを目の当たりにするのです。

複雑に入り組んだ大地や自然の猛威も恐ろしいけれど、人が人を苦しめることが悲しい。
レイバーたちに押し付けられた重い役割や、彼らの鬱憤、そして切ない結末も悲しい。
度重なる苦難の果てに地球との連絡も途絶えてしまい、緩やかに滅びつつある現状も悲しい。

 

それでも悲しいことばかりでなく、優しい人や希望もそこには確かに存在しているんですよね。
「豆の木」の技術者一家がすごく好きだったりするのだけど、そもそも中心にいるエリスとクロ自身がとぼけたキャラクターで物語を和ませてくれていました。
舌禍持ちだけど根は優しい女の子であるエリスも、彼女に振り回されつつのんびり接するクロもふたりともすごく魅力的。
そういえば二人が道中で聞いていたのは一瞬カーペンターズかと思ったんだけど、あの兄妹デュオは双子じゃなかった・・・・・・実在のモデルはいるのかな?

 

ちょっと気になったのは、話が重複したり時系列が分かりづらかったりするところ。
少し構成がごちゃごちゃしてるなって感じる部分がいくつかありました。
お父さんたちの手紙についても先に経緯や内容が書かれているのでサプライズ的な感動は薄かったかなぁと思いますし。クロと夫妻の出会いのエピソードを、ビデオレターの後に持ってきたほうがどんでん返しっぽくて好みだったかも・・・・・・。

 

とはいえ、優しくて素敵な物語はじんわりと心を温かくするものでした。
なによりエリスとクロの旅の終着シーンは素晴らしかった途中からエリスひとりが喋ってるところが泣ける・・・・・・。
幻想的な見開き挿絵も感動を綺麗に昇華させてくれたと思います。

 

見捨てられ、滅びに向かうディストピア。しかしそこに残された優しい希望を描いた素敵な物語だったと思います。
これは単巻ものかな?次回作も楽しみな新人さんです。

 

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