きみの分解パラドックス/井上悠宇


きみの分解パラドックス (富士見L文庫)
きみの分解パラドックス (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2016年8月刊。
バラバラにしたい衝動を抱える少女と、彼女がバラバラにしたものを元に戻す少年。
そんな2人が学校近辺で起こった殺人事件の謎を追っていく、というミステリーです。
ヒロインがサイコパスということで理解不能な行動をとったりするけれど、主人公との関係性はなかなか好みでした。
事件そのものについてはコンパクトにまとまっていてサクサクと楽しめたし、シリーズ化したら続きも読みたいと思います。

☆あらすじ☆
物も謎もすべてバラバラに――異質な少女の学園青春ミステリー
物をバラバラにすることに異常な情熱を持つ少女・玲夏と幼なじみの少年・友紀は、総合パズル研究同好会に入部する。とあるバラバラ連続殺人事件の謎を調査する友紀たちだったが、校内で1人の生徒が殺害され――。

以下、ネタバレありの感想です。

 

他者への共感性が著しく低く、何もかもを分解したがる異常な衝動をもつ少女・天使玲夏
玲夏の幼馴染であり、彼女が分解したものを元通りにする役割を自ら担ってきた少年・結城有紀

高校で新設の総合パズル研究部に入部したふたりは、やがて彼らの街で起こった異常な連続殺人事件の謎を追っていくことになるのです。

 

ミステリーはさておき、まずこの作品で目を引くのはキャラクターの個性だと思います。
特に明言はされていなかった(電子書籍に検索をかけたけれど一度も出てない)ものの、ヒロインである玲夏はどうみてもサイコパス。
行動もセリフも常人の理解の外にあるものばかりで、彼女がふらっと起こした監禁暴行事件なんてとてもハラハラさせられました。
じゃあ殺人も起こしそうなの?と思うものだけど、そこはこんな予防線が張ってあったり。

 

天使玲夏は意味を失わない程度にモノをバラバラにする。

 

つまり玲夏は「大事なもの」が失われないように、ユウキが元に戻せる程度を超えないように、モノをバラバラにするわけです。

 

それならサイコパスだけど安全なのか、というと、そういうわけでもない。
天道虫を分解してしまうエピソードでわかるように、何がその物体にとって「大事なもの」といえるのか、本質はどこにあるのかは彼女の主観にかかっているようなんですよね。
だから玲夏が人の本質を「生きていること」以外だと考えてしまったら、あっさりと一線を超えてしまいそうな怖さがあったりするのです。

そこまでいかなくても、「生きていること」がクリアできれば他は「大事なもの」じゃないと思ってしまったら・・・・・・(震
玲夏的には足や手とかのパーツは大事じゃなさそう。ユウキが元に戻せるかっていうのも辻褄が合えばOKみたいなノリですし。
息をしていれば生きている判定くらいそう。
・・・・・・ああ、やっぱりこの子全然安全じゃないですね・・・・・・。

 

そんな玲夏の異常行動の尻拭いをしていく主人公・ユウキ。
常人っぽく振る舞っているけれど、玲夏と幼馴染をやっているところを見てもわかるように、彼もまた「普通」ではない。
むしろ心理テストのアレみたいに「普通」を意識して装っているところが不気味です。監禁事件でも死体発見でも、一応ビビってはいてもどこか冷静なところがあって怖い。
ある意味、玲夏とはとてもお似合いのカップルと言えますよね。うん。私、このカップル結構好みですw

 

こんな二人が作中謎を追っていくことになるのは、死体のそばに意味深なURLを残す殺人鬼「アドレス」
この事件についてもコンパクトながらテンポの良いストーリーを楽しめて面白かったです。

 

それにしても、ラストのあれは全員の秘密にしようっていう話なんです?
こういう関係性がドラマを生む作品ってありますよね(共犯関係的な)。でもこれは美しき友情って感じにオチをつけちゃった感じでしょうか。
こんな重い秘密を持った彼らの関係性が今後どうなるのか気になるけれど、果たしてこのシリーズは続くのかな?

もし続いたら次巻も読みたいと思います。

 

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。