魔法使いの婚約者/中村朱里


魔法使いの婚約者 (アイリスNEO)
魔法使いの婚約者 (アイリスNEO)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2015年11月刊。
第1回アイリス恋愛ファンタジー大賞「金賞」受賞作。
勇者と一緒に魔王討伐パーティーに選ばれた最強魔法使い、の婚約者の物語です。
回想録風でダイジェスト的に語られていく作品でした。そのためやや物足りなく感じるところも。
ただ、負い目のある二人のすれ違いの切なさや、それでも相手を想う恋のときめき、主人公を襲う絶望感といった心情描写がとても素晴らしい作品でした。
本編はあっさりと終わり、その後は他キャラによる本編裏話が語られていくのだけど、もうちょっと主人公自身の話が読みたかったなぁ。
とはいえシリーズ化してるので続きを読んで不満を解消していきたいと思います。

☆あらすじ☆
現世で事故に巻き込まれ、剣と魔法の世界に転生してしまった私。新しい世界で一緒にいてくれたのは、愛想はないが強大な魔力を持つ、絶世の美少年・エギエディルズだった。だが、心を通わせていたはずの幼なじみは、王宮筆頭魔法使いとして魔王討伐に旅立つことになってしまい――。「小説家になろう」の人気作で、恋愛ファンタジー大賞金賞受賞作品、加筆修正・書き下ろし番外編を加えて堂々の書籍化!

以下、ネタバレありの感想です。

 

本能的に忌避される純黒の髪をもつ魔法使い・エギエディルズ(エディ)
物語は、エディの幼なじみであり婚約者である貴族令嬢フィリミナが過去を回想する形で、二人の出会いや離れ離れだった日々、そして魔王討伐のパーティにエディが選ばれたときの心情が描かれていくのです。

 

つらつらと語られていく内容は、スピーディではあるけれどものすごくダイジェスト的。
合間に掘り下げられるフィリミナの想いが読み応えのある情感豊かなものだっただけに、これを肉付けした長編が読みたかったです。
特に、負い目があるゆえのもどかしさ、花言葉を交換するシーンの気恥ずかしさ、エディの訃報を知ったあとの絶望感の描写あたりがすごく素敵だったんですよね。
彼女の想いがすっと心にしみ込んで、かなり感情移入してしまいました。

そんなわけで分量的な物足りなさはあるものの、時の流れを感じる文体はするすると頭に入ってきて読みやすくもあって、ラブロマンスとしては満足しています。

 

加えて、エディ視点の裏話も良かった。
こちらもやはりダイジェスト的ではあるのだけど、本編を綺麗に補完していくので楽しく読めました。
エディがフィリミナをめっちゃ好きすぎて笑ったw

 

本編でうっかりときめいてしまった「どうか、しあわせにならないでくれ。」というセリフも、エディ視点だとさらに破壊力が増して大変なことになっていました。
愛してるからこそ幸せを願えないって、酷い話だけどロマンを感じてしまうなぁ。

 

難を言えばフィリミナの転生設定が死んでたことは気になりました。
「姫様との恋愛フラグ」って言わせるための設定だったのかな? あとは黒髪を恐れない理由にはなったけれど。
そういえば女性向け作品の転生モノって、主人公が肉体年齢の割に精神年齢が高いっていう理由付けで使われることが多い気がします。それだけだと、ちょっともったいないですね。

 

エディの弟子・ウィドニコルの視点から、師匠がいかに厄介な人間か、いかに奥さん大好きかが語られる短編。

結婚したことを周囲には隠すんですね。理由はわかったけれど、これは恋愛トラブルを招きそうな予感!

 

エディに思いを寄せる庭師・アーチェの失恋を描いた短編。
ほらみろやっぱり恋愛トラブル起こってる!

正直、この話よりはフィリミナ視点の後日談が読みたかったです。
失恋話自体も苦手なんだけど、振られた側から主役カップルを持ち上げる構成がどうにも好きになれなくてですねー。

まぁでもアーチェの恋心とそれが終わる瞬間の心情は良かった。
やっぱりこのへんの繊細な心理描写がうまい作家さんだなぁと再確認しました。

 

エディの友人にして、魔王討伐パーティーの「勇者」ユリファレットの視点から、魔王討伐のエピソードが語られる短編。
エディ視点の補足と重複しているところがあったけれど、討伐時のエディを第三者視点で読むのはそれはそれで面白かったです。

それにしてもエディも他のみんなもフィリミナの容姿をまず「美しいわけではない」って評するのやめたげてー。そのあとちゃんと内面の美しさを褒めてるけど、女性的にそれって微妙な気持ちになると思うんですよ。
エディが美人なのはわかったから!と主人公に少し同情。

 

短編集的にエピソードを寄せ集めて1本の物語になっている作品でしたが、面白かったです。でも主人公カップル視点がもっと読みたい。
シリーズは続いているので、不満を解消するためにも次巻へ突撃しようと思います。

 

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