飛べない鍵姫と解けない飛行士 その箱、開けるべからず/山本瑤


飛べない鍵姫と解けない飛行士 その箱、開けるべからず (コバルト文庫)
飛べない鍵姫と解けない飛行士 その箱、開けるべからず (コバルト文庫)

評価:★★★★☆
2017年3月刊。
秘密を暴くのが得意な少女錠前師と、秘密の匂いがする青年伯爵。
金庫の鍵を開けてほしいという伯爵の依頼を引き受けた主人公は、思いがけない秘密の鍵をも開けてしまうことになるのです。
主人公が開く「秘密」は色んな真実を隠しているのだけど、真実が明らかになった先で待っているロマンスが素敵でした。ヒーロー、めっちゃロマンチスト!
スチームパンクミステリーと銘打たれているけれど、スチパン要素は強くないのでSF系に苦手意識がある人でも大丈夫。
物語はそれなりに綺麗に終わっているけれど、伏線っぽいものが少し残っているかな?
ぜひシリーズ化してほしい新作でした。

☆あらすじ☆
天才錠前師のトマス・ウルスに育てられたマージは、鍵や機械が大好きな、いっぷう変わった女の子。トマス亡きあと、錠前店をひとりで切り盛りしていたマージの元にある日、鉄道王としても成功しているアンブローズ伯爵家の若き当主・アレックスが訪れる。「ある金庫を開けてほしいから、身ひとつで伯爵家に来てくれ」という依頼を断ろうとしたマージに、アレックスは破格の報酬を約束し…!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

捨て子として修道院で育った後、引き取ってくれた天才錠前師トマスのもとで自身も錠前師となった少女・マージ
トマスが亡くなり、彼の店を引き継ごうと決心した矢先に現れた青年伯爵・アレックスの依頼により、マージはとある侯爵家の遺産相続に絡む金庫を開けることになりーーというのが本作のストーリー。

 

スチームパンクと聞くと、人それぞれどんな作品を思い浮かべるものなのかなぁ。
私は『英国パラソル奇譚シリーズ』(ゲイル・キャリガー著/早川書房)のような不思議な道具が飛び交うSF寄りのファンタジック近代を真っ先に連想するのだけど、本作はそこまでSF色もファンタジー色も強い作品ではなかったです。
リアルとあまりかけ離れていない近代的世界観に、ほんの僅かな不思議要素で味付けられている感じかな。

とはいえ、スチパンの必須アイテム(※私見)である歯車が重要アイテムのひとつだし、あちらこちらに時計仕掛けのギミックが存在していて、主人公はそれを解き明かすことを生業とする少女鍵師。
また、彼女を連れ回して最終的には空にまで連れて行ってくれる飛行機好きな青年伯爵までいたりするものだから、スチパン的なワクワク感はしっかり備えている作品だと思います。

つまり、スチパンに馴染みのない人も楽しめる丁度よい塩梅の作品になっているのではないかと。
スチパン系が苦手な人もいるって聞いたことあるけど、大丈夫。こわくなーいこわくなーい(アレックスの口癖、お気に入り)

 

まぁそれはさておき。

 

物語のメインは、錠前師であるマージが初めて引き受けた大きな仕事。
その依頼人であるアレックスには何やら秘密の匂いがして、好奇心の強いマージは彼の秘密に興味津々。
しかし、金庫を開けるだけだったはずのマージの仕事は、彼女自身予想していなかった大きな秘密の鍵を開けてしまうことになるのです

 

貴族社会で伯爵が労働者にここまで優しく手厚く接するものなの?という疑問やアレックスたちの言動から、ははーん、これは貴種流離パターン!と割と簡単に当たりを付けてしまえるのだけど、それでも丁寧に描かれる物語は読んでいてとても楽しかったです。
秘密を前に好奇心と恐怖心で揺れ動くマージの心情にドキドキするし、そんな彼女とアンブローズ兄弟の賑やかな交流にほっこりしますしね。キャラが本当に魅力的な作品でした。特に弟くんの可愛さはブラコン必至レベル。

 

マージとアレックスの距離感がまた良いもの。
やたらフレンドリーなアレックスと、そんな彼に戸惑いつつも既視感を覚えるマージ。振り回してくるアレックスに負けん気で対抗するマージは可愛いけれど、そんな態度すらアレックスには織り込み済みな雰囲気がさらに彼のミステリアスさを強調するんです。
アレックスにどこまでそのつもりがあったかは分からないけれど、私には好奇心の強いマージを「秘密」の匂いでアレックスが誘い出しているかのようにみえました。猫にマタタビ、マージに秘密。

 

結局、アレックスが何も知らないマージに仕掛けた今回の一連の騒動はなかなか腹黒いものだったけれど、それもこれも彼の一途な想いゆえのことだと考えれば憎めるわけがない。むしろロマンチック。飛行機の模型の話とかきゅんとした〜w

というか、私はこれまで色んな少女小説ヒーローを読んできたけれど、アレックスは上位に食い込むレベルでロマンチストかもしれない。
記憶戻らないかな〜?と手を変え品を変えマージをつついてみたり、プレゼント絡みのあれこれとか、一族の男のジンクスでアピールしたりとか・・・・・・ちょっとかわいすぎでは(でも一途が云々の話はお父さんという強力な反証をどうにかしてw)
飛行士がロマンチストっていうのがすでにぴったりなイメージだし、最終的にアレックスはかなり好きなキャラクターになりました。素敵。

 

物語自体は一応は綺麗に終わっているけれど、女王の石やバルバローザ島の秘密については掘り下げる余地を残していそうな感じ。
続くかなぁ。続いてほしいなぁ。期待しています・・・!

 

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