君の膵臓をたべたい/住野よる


君の膵臓をたべたい
君の膵臓をたべたい【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2015年6月刊。
余命幾ばくもない病気の少女と、彼女の秘密を知ったクラスメイト。
そんな2人が限られた時間を一緒に過ごすことになる、という青春ストーリーです。
病気モノだけにもっと湿度高い感じで雰囲気なのかと思いきや、病気をネタにした不謹慎トークが炸裂し逆にこちらが焦ってしまうような作品でした。まぁそのやり取りにはちゃんと意味があって、そういう構成が秀逸だったりするのですが。
差し迫った死を前にした少年と少女の気の置けない関係から、生きるということの意味を描き出す物語だと思います。繊細な心理描写にひきこまれる良い青春小説でした。

☆あらすじ☆
ある日、高校生の僕は病院で1冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていた。こうして、偶然にも【ただのクラスメイト】から【秘密を知るクラスメイト】となった僕。まるで自分とは正反対の彼女に、僕は徐々にひかれていった。だが、世界は病を患った彼女にさえ、平等に残酷な現実をつきつける――。全ての予想を裏切る結末まで、一気読み必至!

以下、ネタバレありの感想です。

 

主人公である「僕」が病院で拾ったのは、余命1年とされるクラスメイト・山内咲良の手記「共病文庫」。
偶然に彼女の秘密を知ってしまった主人公は、これをきっかけに彼女の破天荒な言動に振り回されていくことになるのです。

 

個人的に、病気モノってだいぶ苦手意識があるんですよね。
高校生くらいの頃は結構読んでいたのだけど、最近はなんか色々と自分には重すぎて・・・・・・。

というわけで話題になっていたのは知っていたけれど読むのをためらっていた本作。
いざ読んでみると、予想以上に軽妙な滑り出しに「おっ?」となり、その勢いでラストまで一気に読んでしまいました。

 

ヒロイン・咲良の死が最初に提示され、その結末ありきで進む物語だから根底にあるのは悲劇なのだけど、咲良と「僕」のやり取りはむしろ明るいコメディタッチ。
なんといってもこの二人、平気で病気も死もネタにしますからね。「僕」のセリフの不躾さに読んでる私が悲鳴をあげそう。

 

そういう二人の不謹慎トークにたじたじになってしまうのだけど、同時にそれは短い時間のなかで仲を深めていくふたりにとって、外すことのできない必要なコミュニケーションだということもわかる。
死が迫りくる現状を意識して、それでも朗らかな関係を急速に構築していくためには、この一見デリカシーのない会話が一番ふたりの心をつなぎやすかったでしょう。

 

一方で、この会話は「僕」にとっては現実を認識したままに受け入れないですむ防護壁のようなものであり、咲良にとっては見栄と強がりなのではないか、ということも読んでいるうちにみえてくる。
そして、それが見えてくる頃には、2人の関係が内包する切なさが、すでに後戻りできない場所にまできてしまっているのです。

 

差し迫った死を前にして、ほんの短い時間とわかっている「日常」を謳歌する「僕」と咲良。
その関係性が最終的にどこへ向かうのかについては、結末をわかっているだけに神妙な気持ちで見守るしかありません。
完全無欠のハッピーエンドなんて与えられない物語だけに覚悟はしていたものの、思ったよりも爽やかな結末に落ち着いてくれて、なんとも安心したというか。じめっとした結末じゃなくてよかったというか。

 

相手の自分に対するイメージを勝手に憶測して【  】で名前を隠していた「僕」も、彼女との時間を通して、相手から呼ばれた名前を素直に受け取れるようになったのだなぁと思うと感慨深いものです。
あんまり意識してなかったけれど、【  】というのは「僕」の他者に対する距離感そのままだったんですよね。彼の名前が普通に表記されるようになって、いかに他者に壁を作っていたのか実感してしまいました。
自分と相手の関係を、当事者なのに他人事のように捉えていた「僕」。そんな彼の柔らかい変化を、とても好ましく感じます。
それと、「彼女によって変わった」のではなく、「彼女との出会いも含め、自分の選択が自分を変えた」というのが、個人的にはなんとも小気味よくて好きな発想でした。

 

ところで、作中唯一気になった咲良の死因。
病気モノのセオリーを外す意味では効果的だったし、死はいつでも不意に訪れるとかなんとかのメッセージだったのかもしれないけれど、正直物語からは浮いていたように感じました。意外だけど上手い展開かといわれると、うーん・・・・・・

まぁ、でもそのあとの文庫の内容にグッときたから結果オーライかな。

 

良い青春小説だったと思います。
タイトル、初めて見たときはギョッとしたけれど意味を知ると感動的でした。素敵な合言葉みたいになっていたのが印象的です。
・・・・・・ああでも、やっぱり切ないな。

 

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