これはきっと、恋じゃない ある日、異世界の聖女が召喚されて。/はなぶさ


これはきっと、恋じゃない ある日、異世界の聖女が召喚されて。 (カドカワBOOKS)
これはきっと、恋じゃない ある日、異世界の聖女が召喚されて。 (カドカワBOOKS)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2016年8月刊。
異世界から女子高生が召喚されたことによって立場を奪われた少女が主人公という、「異世界召喚モノ」を裏側から描くようなファンタジー。
なかなかユニークな切り口の物語で、すれ違いが切ない純愛モノとして面白かったです。
悪酔いしそうなくらい悲劇的に話が進むのだけど、それだけにハッピーエンドを求めて先を読まずにいられない。
もう少し踏み込んでほしかった部分があったものの、ラブロマンスとしては良作だと思います。

☆あらすじ☆
異世界の聖女に、立場も、婚約者も奪われました。
「聖女様とアルファド様は、お似合いね」かつて、彼と婚約していたのは、私だった。今はただの下働きである私の……。異世界からの聖女召喚が成功したと聞かされたとき、私は礼拝堂で祈りを捧げている最中だった。聖女候補として神殿に引き取られて早十数年。私の人生は全て、聖女になる為のものだった。ついに私も、お払い箱か――。そう思っていた。なのに。「俺を望むことを、あきらめないでくれ」なぜ、貴方がそれを言うの? 幸せを願わずにはいられない純愛物語!

以下、ネタバレありの感想です。

 

貧しい農村に生まれながら、聖女候補として神殿で育った少女・リディア
しかし、本当の聖女になる直前に異世界から聖女・チヨリが召喚されたことによって、リディアは聖女にはなれずに下働きとなり、騎士・アルファドとの婚約も解消。
その一方、チヨリの代役として聖女の力を使うたびにリディアの命は削られ、もはやいつ死んでもおかしくない状態で――

 

・・・・・・という、主人公がこれ以上ないくらい不遇な状況に置かれているお話でした。
本人も自分のことを半ば諦めている上に、他の聖女候補たちの死にまで責任を感じて後を追いかねない心情になっているので、なんかもう痛々しくて堪らない気持ちになるんですよね。

 

そういう設定をベースにしていて、全体的にもその調子で話が進むため、物語の色彩はこの上なく悲劇。
状況に対する諦念やリディアやアルファドの抱く切ない慕情など、各キャラクターの心理描写が秀逸なこともあって、その悲劇的な雰囲気に圧倒され、飲み込まれてしまうのです。そして、その先の救いを求めてページをめくらずにはいられない。
苦しいくらいに胸を締めつけるのに、その苦痛に思わず惹かれてしまう作品でした。

 

とはいえ、「リディアを絶対に幸せにしてやろう!」というアルファドや皇子や神官長の意気込みは漏れ伝わってくるので、まぁ悪いようにはならんだろっていう楽観的な予想はできたんですけどね。最終的にも執念の勝利って感じでしたし。
ほんとヒロインは各方面から愛されてたなぁ。
リディア自身の望みはとりあえず棚上げされてましたけど。まぁ終わりよければ・・・・・・? 本人に任せるとすぐバッドエンドに落ちそうだから周囲が引っ張りたくなるのも分からなくもない。

 

周囲の執念でハッピーエンドに押し流されていくリディアは良いとして、個人的に気になったのはチヨリの扱い。
別に好きなキャラではなかったけれど、この作品で一番可哀想なのは彼女なのでは。同情するんですが。
勝手に召喚してチヤホヤしたあげく、唐突に聖女の座から引きずり下ろして、しかも元の世界には帰れない(後に帰還のメドが立ったとはいえ)
見知らぬ異世界での保護者であるアルファドからは内心でボロクソに言われ、リディアloveな他の面子からは問題児扱い。
完全に悪者の扱いですけど、チヨリって実際には悪いことって何もしてないですよね・・・・・・?
悪役にするならもっと悪どさを押し出してほしかったし、そうでないならチヨリへのフォローを詰めることで後味を良くしてほしかったなぁ。

 

チヨリの件以外にも、リディアの家族、聖女候補制度の闇、毒抜き後のリディアの体調不良などなど、気がかりな点が結構残っていたり。ページ数的には仕方なかったかもしれないけれど、うーん、モヤモヤする。

 

まぁリディアとアルファドのラブロマンスに関して言えばハッピーエンドだし、それだけでも十分に満足しているんですけどね。
内容的に単巻ものかな。はなぶささんの次回作に期待しています。

 

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