追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ/田辺屋敷


追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ (ファンタジア文庫)
追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ (ファンタジア文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2017年1月刊。
第29回ファンタジア大賞「金賞」受賞作。
二面性のあるクラスメイトと嘘の交際をする一方、不思議な文通から奇妙な事態に巻き込まれていく少年を描いた青春小説。
色々と惜しい部分はあるのだけど、綺麗にまとめたエピローグはとても良かった。
今後が楽しみな新人さんです。

☆あらすじ☆
俺のちっぽけな嘘が、キミとの日常を綴り出していた――
二学期初日。篠山マサキは“彼だけが記憶を持たない”美少女優等生・風間ハルカと出会った。正体を掴むべく彼女を探り始めるが、なぜかハルカの行動は、マサキが何気なく綴った葉書の内容と深く関わっていて――。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の主人公は、野球部を辞めて日々をダラダラと過ごしていた篠山マサキ
自分の記憶にないクラスメイト・風間ハルカの本性を知ったマサキは、彼女の誤解に巻き込まれる形で嘘の恋人関係を演じることになる。
一方で、祖母に宛てたハガキをきっかけに、見知らぬ差出人・高尾アキとの不思議な文通も始まって・・・・・・というお話。

 

ハルカとのケンカップル的な日常を送りつつ、アキへ書いた手紙の内容が自分の記憶とは異なる形で反映されていくという奇妙な事態に気づいていくマサキ。
おかしいのは自分か?それとも周囲か?っていう不気味さはあるのだけど、ハルカのつっけんどんな態度でホラーみが緩和され、割とするっと順応できてしまう感じ。
終盤でついに「嘘の交際」の事実すらなくなってしまったのにはドキっとしたけれど、そこからの疾走感はなかなか良かったと思います。

 

そんな不思議な現象のなかで、自分を隠してきたハルカと自分を偽ってきたマサキが互いのことを知っていくという青春あふれるストーリーが描かれていくところも良い。
自分を出すことの難しさをふたりの共通点にする構成がうまくて、惹かれ合う姿がとても自然だったと思います。
そして、ハガキに書いたことが自分へと返ってくるシチュエーションにグッとくる。あのシーンはとても好きです。

 

青春小説としては良い作品だとは思うのだけど、SF的には物足りない。
ハルカのひとりごとをはじめ伏線があからさまなため、序盤でカラクリが読めてしまったのは残念でした。ベタな設定だけに、この作品だけでしか読めない何かがもう少しほしかった。
並行世界ネタを引っかけで出したのは良かったんだけど。もっと伏線を目立たないようにさせれば尚よかったのかもしれません。

 

ただ、7枚目8枚目のハガキの使い方はとても素敵だったと思います。
お役目を果たしたと思わせておいて、エピローグでうまく使ってハッピーエンドに導く綺麗なオチのつけ方に感心。
そして困難を乗り越えて挨拶を交わす二人の姿にしみじみと満ち足りた気分になりました。

 

良いところと惜しいところが半々かな。でも物語を綺麗にまとめる力を感じる新人さんだと思います。
次回作も期待しています。

 

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