勇者のセガレ/和ヶ原聡司


勇者のセガレ (電撃文庫)
勇者のセガレ (電撃文庫)

評価:★★★☆☆
2017年1月刊。
父親が勇者として異世界に召喚される、という事態に直面した高校生の物語。
異世界召喚ファンタジー的に始まりつつ、家族の問題に頭を悩ませるうちに自分自身を見つめ直すという青春小説要素の強い作品だったと思います。
色々と考えつつ主人公が出した決断がなかなか面白かったけれど、物語としては序章という感じ。
続刊に期待しています。

☆あらすじ☆
所沢市の一般家庭、剣崎家では緊迫の家族会議が開催されていた。謎の金髪美少女ディアナが、異世界から剣崎家のリビングに現れたのだ。「私は救世の勇者、ヒデオ・ケンザキ召喚の使者としてやってきました」…って、ヒデオって俺の親父じゃねーか!平凡な高校生の俺こと剣崎康遊にゲームみたいな展開が降りかかると思いきや、親父が勇者で、若い頃異世界を救ったって!?どう見ても普通の中年な親父が「勇者」だとか信じられる訳がないし、ディアナは「勇者の息子」である俺に憧れの眼差しを向けてくるし…。異世界を救う前に、家族の平和が大ピンチ!俺の日常は一体どうなる!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

受験を控えた高校3年生の剣崎康雄は、ある日、父親・英雄が異世界で勇者だったことを知る。
魔王の脅威にさらされる異世界を救うため英雄を召喚しにきた少女・ディアナの話を受け入れられずにいる康雄だったが、異世界から康雄たち一家を狙う謎の影が現れて・・・・・・というストーリー。

 

異世界召喚ものかな?と思って読んだら異世界に呼ばれているのは父親で、しかも「受験期の子どもを放って異世界に行くとか何を考えてるんだ!」と主人公がガチギレするところから始まるという、凄まじく異色な作品でした。

「異世界召喚」というファンタジーを除けば「親の唐突な決断に振り回される子ども」という姿はなんともリアルだった気がします。
「父親が会社を早期退職して店を持つとか言い出した」ことで勃発する家族問題をテーマにしたホームドラマに通じるものがありますし。
父親の決意によって今までの生活が崩れるかもしれない、これからどんな生活が待っているかわからない、という康雄の不安や恐怖は結構真に迫っているように感じられました。

 

そんな混乱のなか、どうすれば父の考えを変えることができるのかを悩むうちに、やがて家族と自分自身について見つめなおしていく康雄。
部活がなくなったことで生活に張り合いをなくし、ただ流されるままに受験する自分に気づいていく展開はなかなか面白かったです。
最終的に康雄が下した決断も、今の生活の先にあるはずの未来と、直近でどうにかしなければいけない異世界の問題、そして「知ろうともしなかった両親を知ること」の全てのバランスをとった形でうまい落としどころでしたしね。

 

まぁ、まだ異世界に行かんのかい!とは思ったけれど。
異世界に行かなくても日本で十分ファンタジーなバトルを繰り広げていたし、これもしかして最後まで異世界に行かない可能性もあるのでは・・・・・・。

バトルといえば、ここまで主人公が傍観者で両親が出張っているラノベも珍しいのではないでしょうか。
あと、「合唱・声楽が得意」という設定にもう少し何か意味があると思っていたのに、あまり生かしきれていないように感じたのは残念でした。

 

「異世界への召喚」というファンタジーをベースにしつつ、家族について考え続ける主人公の姿が面白い作品でした。
いろいろ伏線が残ってるし、敵も倒せずじまいなので、きっとシリーズ化するのでしょう。
ていうか舞台が日本のままだとしたらまた魔法熟女(自主規制)が登場するかもしれないのか・・・・・・それは誰得w

 

何の力も持たない康雄が、どんな風に成長していくのか。親に頼らずともいいくらい強くなれるのか。そして無事に大学に合格できるのか。
問題ばかり色々あるのに物語の方向性はちょっと予想できない感じ。続きに期待しています。

 

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。