平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです/中臣悠月


平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです (角川ビーンズ文庫)
平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです (角川ビーンズ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2017年1月刊。
第1回カクヨムWeb小説コンテスト恋愛・ラブコメ部門「大賞」受賞作。
乙女ゲーム好きの女子高生が平安時代にタイムスリップし、イケメン貴族と一緒にオタク活動に励んでいたら「源氏物語」を共同製作しちゃった!という平安ファンタジー。
平安時代の生活様式やルール&マナーなどがしっかり描かれていて、舞台背景に読み応えがある作品でした。
展開にやや強引なところもあるけれど、「源氏物語」の執筆動機や製作過程はなるほどなぁと感嘆する場面が多く、そちらもとても楽しかったです。
ただ、「恋愛・ラブコメ部門」なのに、恋愛・ラブコメパートが一番ぎこちなかったような?

☆あらすじ☆
ここは乙女ゲームの世界ですか? いいえ、現実です!
京都に修学旅行中、突然平安時代にタイムスリップした女子高生・香子。イケメン貴族に助けられた恩返しに、中宮様へ献上する物語作りを手伝うことになった香子は、持ち前の妄想力でアイデアを出しまくる。しかし出来上がっていく話が『源氏物語』と似ていることに気がついて……? もしかして、私が”紫式部”になるの? 現代×平安、時間を超えたラブファンタジー開幕!! 

以下、ネタバレありの感想です。

 

修学旅行先の京都で平安時代にタイムスリップしてしまった女子高生・藤原香子
見知らぬ場所で優しい平安貴族の青年・惟規に拾われた香子は、彼の家で居候することに。そこで、女と偽って引きこもる青年貴族・式部と出会い、彼らの家の事情を知った香子は、元の世界に戻る方法を探りながら、式部たちの「中宮様をお慰めする新しい物語作り」を手伝うことになるのです。

 

歴史上の人物が実はタイムスリップした現代人だった!というのは創作物で結構見かけるパターン。
本作もそういう話なのだけど、『紫式部』とは、原案・香子、執筆・式部という二人一組の創作ユニットのことだった、という展開がなかなか面白い。

香子が現代のオタク活動で培った妄想と萌えをフルに発揮しつつ、そこに式部が平安時代に沿うような意味や形を与える。
そうして生まれたプロットをまた二人で話し合い、試行錯誤しながら式部が実際に物語を綴っていく。

平安時代×現代のユニークな部分をもちつつ、最近流行の作家もののエッセンスも取り入れてるんですよね。
平安の価値観が盛り込まれているぶん、創作過程が新鮮でとても楽しかったです。

 

また、「人に愛される物語」の普遍性を真剣に話し合っていることも印象的でした。
時代や場所に関係なく人に喜ばれる「王道」を考えていたら「源氏物語」が生まれるっていうの、なんか分かる。だから今なお源氏物語は読まれているんだし、色んな形でアレンジされていくんだろうし。
逆説的に源氏物語のストーリーラインを噛み砕いて解説してくれてるんですよね、これ。
まぁでも、香子が吐き出すオタク丸出しの妄想が、式部フィルターを通してちゃんと源氏物語のストーリーになっていくのは正直笑いましたけど。
確かにそうなんだけどぶっちゃけすぎて風情がないなぁww

 

そもそも平安時代の貴族達の流行を「歌ってみた、書いてみた、弾いてみた」と表現するところとか、二次創作やん!って突っ込んだりとか、平安貴族をオタクの原点みたいに言っちゃうのやめてw笑うww
もうそうとしか思えないじゃないですかー! 雅を返してー!!
オタク女子高生の目からみる、「平安貴族のオタク性」に笑うしかない。
そういえば、イケメン貴族の式部さんも引きこもりオタク扱いでしたね。

 

そういうわけで、平安貴族×女子高生の作家モノとしては面白かったのだけど、期待していた「恋愛・ラブコメ」のほうはやや萌えず・・・・・・。
式部さんを怒らせた挨拶からして流れを無視した唐突感があったのだけど、その後も展開やセリフがぎこちなく感じるところがあったんですよね。
乙女ゲーム的恋愛パートの取って付けた感が気になってしかたない(浮いてるように思えた箇所は加筆分かな?)
式部と香子の恋愛も急ピッチでしたし。ふたりがプロット作りできゃっきゃしてるくらいが個人的には丁度良かったかなぁ。
あ、でも、式部が出仕した香子に会いに行くB☆W特典SSは楽しめたし、過程は粗かったけど結末には満足してます。

 

惜しい点がありつつも、全体的には面白い作品だと思います。
そういえば、香子たちの製作過程って実際の学説をベースにしてるっぽいですね(Wikipediaでざっと確認しただけだけど)
そういうのをフィクションに落とし込める作品はやっぱり楽しいと再確認しました。

続きはあるのかなー? 楽しみにしています。

 

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