うさぎ強盗には死んでもらう/橘ユマ


うさぎ強盗には死んでもらう (角川スニーカー文庫)
うさぎ強盗には死んでもらう (角川スニーカー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2017年1月刊。
第1回カクヨムWeb小説コンテスト「ミステリー部門」大賞受賞作。
これは凄い。何が凄いって、ネタバレなしに何が凄いのかを語れないくらいに凄いんです。
伝説のポーカープレイヤー「うさぎ強盗」を中心に、繰り広げられ混ざり合う複数の事件。
殺し屋やクラッカーや人身売買組織などがはびこる裏の世界で、アウトローな仲間を揃えた「うさぎ強盗」は何をしようとするのか。
複雑な構成の群像劇であるため、なかなか読むのに根気がいる作品かもしれないけれど、次々と飛び出す謎と真実にワクワクが止まりません。
1冊で綺麗に終わっているから続きはあってもなくてもいいかな。橘ユマさんの次回作も楽しみです!

☆あらすじ☆
あなたをここで口説きたくて、俺はうさぎ強盗になったんだーー
京都左京区のマンション。空き巣に入った泥棒カップルは、痴話ゲンカ真っ最中だった。
その向かいのオフィスビル屋上。青年は潜入した人身売買組織に、殺人を強要されていた。
悪鬼蔓延る上海の外灘地区。最強の殺し屋は、今まさに亡き師匠の敵を追い詰めていた。
そこから1200kmの広東省。田舎町のパブで、少年は23回目のチェックメイトを宣言した。
――伝説の賭博師“うさぎ強盗”が彼らの物語を繋ぐとき、驚愕のエンディングが訪れる!

以下、ネタバレありの感想です。
前情報なしで読んだほうが絶対に楽しめる作品だと思うので、未読の方は要注意!

 

物語は、「日名子姉さん」の家にいる黒崎雅也天野樹里が、日名子のスマホ忘れに気づいたことから彼女に起こった事件を察知する、というところから始まります。

 

さも親戚か友人のように日名子の家で寛ぎ、不在の彼女の人柄について語るふたりが、実は日名子とは全く面識のない空き巣の泥棒カップルだったということが、この作品の強烈なまでの特異性を端的に表しているのではないでしょうか。
最後まで読み終わってみると、この作品の開幕に相応しい、まるで挨拶のような叙述トリックだったのだと思います。

 

そう、叙述トリック!

 

本作は本当に叙述トリックだらけの物語で、その叙述トリックこそが凄すぎる作品でした。
あっちもこっちも、大きいものから小さいものまで、変態的なまでに叙述トリックが仕込まれているんです。
もはや叙述トリックだけで完成しているといっても過言ではない。私はここまで執拗に叙述トリックを連打してくる作品に初めて出会いました。

 

そういうトラップだらけの作品にひょいひょいと突っ込み、あっさりと騙され、「次は見破ってやる!」という意気込みで読んではまた騙され・・・・・・。ああもう悔しい!
ていうか、なんなのこれ? メディアミックスとか絶対できないじゃん。もはやBOOK☆WALKERの特典ピンナップすらネタバレじゃん。表紙と扉絵はめっちゃうまいこと描いてありますね!

 

半泣きで負けを重ねながら、それでもストーリーの面白さに心を奪われてしまうのです。
時系列や視点人物がぴょんぴょん飛ぶ(まさに「うさぎ」のような)構成はかなり複雑で、個人的には読むのが少し大変だったけれど、次々と真相を与えつつ謎を投げる物語は面白すぎてページをめくらずにはいられませんでした。
いやー、最後の「何故君は、日名子麻美を救い出そうとしたんだ?」の問いに辿り着いた瞬間のカタルシスは半端なかった。その答えも痺れます・・・!

 

キャラクターもみんな魅力的。
ひとりずつ紹介するのは色々と面倒くさいので割愛しますが、アウトローな世界に生きていて犯罪も辞さないのに、ニヒルとコミカルが絶妙に混じり合った悪党どもがすごく格好いい。そのくせ「うさぎ強盗」のかなりズレた優しさにはきゅんとしたりもするんです。
あと、篠原さんがすごく好き。悪党に好かれる悪党となってこれからも闇社会で生き生きと破壊活動に勤しんで欲しい。
敵も味方も魅力的なキャラが揃っているけれど、なにげにネチネチ風間も好きでした。彼に幸あれ。

 

すっごく楽しい作品でした!
かなり綺麗に終わっているし、続編でここまで捻くれた物語にはできない気がするから1巻完結かな?
新京都支部長と新入社員の皆様の今後のご活躍をみせてほしいからシリーズ化大歓迎ですけどね。

いずれにせよ、橘ユマさんの次回作を楽しみに待ちたいと思います。

 

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