月とライカと吸血姫/牧野圭祐


月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)
月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2016年12月刊。
とても良かった!
宇宙へ憧れる宇宙飛行士候補生の青年と、人類未到達の宇宙に実験体として送り込まれる吸血鬼の少女のボーイ・ミーツ・ガール。
米ソの宇宙開発競争をベースとした物語で、史実にかなり忠実とのこと。背景がしっかりしているためか、まだ見ぬ宇宙への純粋な憧れと競争意識による焦躁は真に迫っていて、とても読み応えがありました。
そんな場所で出会い、種族を超えて絆を深めていく主人公とヒロイン。異色の青春小説としても本当に面白かったです。

☆あらすじ☆
宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女の物語。
人類史上初の宇宙飛行士は、吸血鬼の少女だった――。
いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。共和国の最高指導者は、ロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。『連合王国よりも先に、人類を宇宙へ到達させよ!』と息巻いていた。その裏では、共和国の雪原の果て、秘密都市<ライカ44>において、ロケットの実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。とある事件をきっかけに、宇宙飛行士候補生<落第>を押されかけていたレフ・レプス中尉。彼は、ひょんなことから実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナ・ルミネスクの監視係を命じられる。厳しい訓練。失敗続きの実験。本当に人類は宇宙にたどり着けるのか。チームがそんな空気に包まれた。
「誰よりも先に、私は宇宙を旅するの。誰も行ったことのないあの宇宙から月を見てみたいの」
イリナの確かな想い。彼らの胸にあるのは、宇宙への純粋な憧れ。上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を目指す彼らがそこにはいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティがここに。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台となるのは、西のアーナック連合王国と宇宙を狙って熾烈な競争を繰り広げる東のツィルニトラ共和国
史上初の有人宇宙飛行を前に、共和国は人間に近い吸血鬼の少女・イリナを実験体として宇宙に送り込むことを決定。彼女の監視と訓練の付き添いに宇宙飛行士候補生の補欠だったレフ・レプス中尉が選ばれたことで、レフとイリナは出会い、宇宙に焦がれる二人の物語が始まることになるのです。

 

「宇宙開発競争」という史実に「吸血鬼」というファンタジー要素を突っ込んで、一体どんな闇鍋ができるのかと思いきや、読んでみると驚くほどに真っ当な青春小説でした。

「運送屋」が暗躍する共和国内の秘密主義。仮想敵国への強烈な対抗意識。
少数異種族である吸血種への蔑視。宇宙を目指すイリナに向けられる候補生からの嫉妬。
そして、宇宙への憧れを共有し、共に訓練に励むことで生まれるレフとイリナの絆。

史実と虚構をバランス良く物語のなかで両立させることで、奥行きと立体感のある世界観になっていたと思います。

 

そんなリアルな世界観だからこそ、レフやイリナの感情の動きがとても鮮明に感じられたのかも。
レフの宇宙への強い想いも、「月」に憧れるイリナの切なさも、どこまでも瑞々しく美しくみえました。
その背景には汚い事情や感情がゴロゴロと転がっているんだけど、それすらも踏み台にしてただただ強く宇宙に焦がれる。
その想いの一途な強さに感動せずにいられませんでした。

 

たくさんの失敗を経験し、乗り越え、ようやく辿り着く終盤の展開は本当に興奮した・・・!
誰にも何が起こるか分からない未知への挑戦だけに、物語がどう転ぶのか最後までハラハラさせられたけれど、その緊張感すら楽しんでいました。
そして緊張がほどけたラストシーンも、達成感に包まれた静けさがすごく心地よかったです。雪原にふたりきりという幻想的な景色がたまらないんだよなぁ。

 

これからイリナはどうなるのかな、とか、レフは本当に宇宙に行けるのかな、とか、二人の今後は気になるけれど、とりあえずはこの素晴らしい余韻に浸っていたい。
素敵な青春小説でした。本当にすっごく良かった!

 

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「月とライカと吸血姫/牧野圭祐」への2件のフィードバック

    1. ちゃーこりんさん、コメントありがとうございます。

      単巻ものとして読んで全く問題ない作品です。
      とても面白いので、ぜひぜひ〜(^^)/

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