天使と鴉のプレセピオ 人狼×討伐のメソッド1/斜守モル


天使と鴉のプレセピオ -人狼×討伐のメソッドI- (MF文庫J)
天使と鴉のプレセピオ -人狼×討伐のメソッドI- (MF文庫J)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2016年12月刊。
第12回MF文庫J新人賞「佳作」受賞作。
人狼ゲームをモチーフとした、嘘吐きな人食い狼を追う討伐官たちの物語。
ハードボイルドなポリスアクション風のサスペンスになるのかな。怪物相手の捜査官モノです。
正直、荒削りなところは多々あるんだけど、私はこの作品、嫌いじゃないです。特に登場人物の悲哀の描き方はすごく好き。
暴いてはならない「真実」が明らかになっていく後半の静かな緊張感と、あっけなくも切ない幕切れが、心にとても焼き付けられる作品でした。
ちなみにプレセピオってクリスマスに飾るジオラマ模型のことらしい。そしてこの感想記事の更新は12月25日。メリー・クリスマース!

☆あらすじ☆
“人狼”、彼らは一年間に一人、人間を喰らわなくては、その命を保てない。カナガワIII区の新人討伐官・連野壮真は、人に化けて人を喰らう人狼を討伐するため、自らを天使と名乗る同僚の討伐官・篠崎樫乃と任務に励んでいる。共に両親を人狼の手によって失った二人。だが、二人は初めての囮捜査で偶然にも、樫乃の両親の仇である、遺体にV字の傷跡を残す・侵才の人狼《VOLF》の犯行の痕跡を発見する。しかし、樫乃が人狼の正体を見破ることができる《暴きの目》を発現させてしまったことで、二人の運命は大きく変わってゆくこととなり――!? 第12回MF文庫J新人賞受賞、鮮烈の小説デビュー作。これは――決して暴いてはならない真実の物語。

以下、ネタバレありの感想です。
ネタバレを知らない方が楽しめる作品なので、未読の方は要注意。

 

人間社会に紛れて暮らし、人間を喰らって生きる「人狼」。
物語は、「人狼」絡みの事件を調査し討伐する「討伐官」たちの戦いを描いていくのですが、その中心となるのが新米討伐官・連野壮真と、プロファイリングの天才・吉田射京の二人。
別々の部署で仕事をする二人の討伐官が、ある一つの人狼事件を通して接点を持ち、その出会いが隠されてきた真実を明るみに出すことになる、というストーリーでした。

 

あらすじ的に壮真が主人公の話だと思い込んでいて(ダブル主人公だと知らなかった)、序盤は射京の立ち位置がよくわからなくて少し戸惑ってしまいました。しかし、話が進むにつれて主人公が二人いる意味がみえてくることに。
まさかここまで切ない物語になるとは・・・・・・。

 

正直なところ、全体的な展開や設定はとても荒っぽいと思うんです。
たとえば潔白証明を破壊してなかったことにする流れは天才の発想としてスマートじゃないと思ったし、再検査時の騒動もアレで誤魔化されるのはちょっと無理すぎない?と気になりました。
天才対天才の知能ゲームとしては今ひとつ物足りないような感じ。
「V」の正体をプロファイリングするくだりも、ハズレのフォローがなかったり別の人物が補足したりと、なんだかごちゃごちゃしていた印象でしたし。
そういえば、結局「V」が58人を殺した理由はふんわりした話でよくわからなかったなぁ。最初の「殺人を楽しむ」云々のプロファイリングはどこへ・・・?

そんな感じで読んでいて首を傾げる部分が多いし、ダブル主人公にしたせいでキャラの掘り下げ方もやや物足りない作品でした。

 

ただ、終盤の静かに熱を高め、感情があふれ出すような人間ドラマはとても素晴らしい。

空想と現実の境目が曖昧なヒロイン・樫乃と共依存関係にある壮真。
二人の関係に隠された真実を暴く役目を果たした射京。

この登場人物たちの関係性や背景から滲み出る悲哀が本当に良かったと思います。

壮真が樫乃に対して抱く感情は、愛という言葉で簡単に表して良いのか迷うような複雑なものだし、人間的な感情と言っていいのかもわからない。
それでも、今にも壊れてしまいそうな脆い樫乃の世界を「人生を賭けて」守り抜こうとした壮真の行動と、その結果に、私はとても胸を打たれました。ラストの彼のあふれ出すような悲哀には思わず目頭が熱くなりました。

こんなに切ない愛の結末を見届けただけでも、この本を読んだ甲斐はあったかな。
あっけない幕切れは強烈な喪失感を生み出して、深く深く心に寂しい余韻が残りました。

 

うーん、でもほんと評価に迷う。
終盤の展開によってこみ上げる感情だけを素直に受け取り「良いドラマをありがとう!」と讃えたいけれど、そこに至るまでの展開の粗さはどうしても引っかかる。もはやダブル主人公にしたこと自体も引っかかる(壮真だけを主人公にして、より丁寧に樫乃との関係を掘り下げてほしかった)
とはいえ、磨けば光る新人さんであることは間違いないと思います。ぜひとも大事にしてほしい原石。今後も注目していきたいと思います。

 

あ、ナンバリング振ってあるから続刊があるかもしれないのか。
射京も悪くないんだけど、私は壮真が好きなんだよな・・・・・・。いや、でも2巻に期待しています。

 

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