2016年の少女小説を厳選40作と振り返る(その2):ジャンル別オススメ少女小説


異人街シネマの料理人(2) (ウィングス・ノヴェル)

第一弾はこちらから。


年間ベスト少女小説や印象深い少女小説的トピックで2016年を振り返っています。

第二弾となる今回は、前回紹介した作品を除き、2017年も期待のシリーズや、2016年に読んで特に面白かった少女小説をジャンル別に紹介していきたいと思います。※2016年以前の作品も含みます。

それでは、以下をどうぞ〜(*^^)/

 

2017年に最も期待しているシリーズ

祖父が遺したミニシアターを守りたい女子高生と、彼女の前に現れた「兄」を名乗る2人の男。家族になった三兄妹が、名作映画を鑑賞し、劇中に登場する料理を再現しながら、様々な謎を解き明かしていくシネマティック・ミステリー「異人街シネマの料理人」(嬉野君著/ウィングス・ノヴェル)
映画好きなら読んで損なし。
ヒロインをめぐるミステリアスな人間関係の行方も気になってしかたない、来年にむけて最も続きが待ち遠しいシリーズです。

 

 

「悪役令嬢」ブームはまだまだ終わらない

なろう系の一大ジャンルである「悪役令嬢転生もの」。
「前世でプレイした乙女ゲームの悪役令嬢に転生した主人公」という共通の設定から始まりつつも、主人公が破滅回避のためにゲームシナリオに立ち向かったり、色々な事情で諦めてシナリオに従ったり、私は私!と無視して好き勝手したりと、内容のレパートリーは多種多様。
人気があるのは理由があってのことなのだなぁと読む度に思います。今年も面白い悪役令嬢ものが数多く登場しました。

最初にオススメしたいのは、2度目の悪役令嬢転生を描く現代劇「星野宮桜子の三度目の正直。」(日咲ユサ著/ビーズログ文庫アリス)
前世と1度目の転生を10代で殺されて終わった少女が、3度目こそは平穏無事に老衰したいと奮闘する物語です。
モブだった幼なじみ(包容力ハンパない系紳士)との可愛らしい関係に萌え転がりました。

 

「ヒロインな妹、悪役令嬢な私」(佐藤真登著/PASH!ブックス)では、主人公の悪役令嬢が誰よりも愛しているのはゲームヒロインの妹。愛し合う姉妹を引き裂くゲームシナリオを前に、妹大好きお姉ちゃんは何を決断するのかーー。
シリアス風味で紹介したものの、基本的にはテンションの高いシスコン主人公が物語を元気よく引っ張るコメディです。吹き出し注意のため外で読むのは危険。

 

少女小説的な作品を多数送り出したカドカワBOOKSからは「公爵令嬢の嗜み」(澪亜著/カドカワBOOKS)を紹介。
こちらは、前世を思い出したときには既にバッドエンドにゴール済みという悲惨なスタートを切る物語です。ただし、そこから前世の知識を活かして領地経営や商売に乗り出したりするので内政モノとしての特色が強く、悪役令嬢要素は比較的薄め。
一度は人生に失敗した元悪役令嬢の「その後」を見届けたくなる作品。

 

とにかく笑ってスッキリしたいときにオススメなのが「アルバート家の令嬢は没落をご所望です」(さき著/角川ビーンズ文庫)
前世のことを思い出したものの、訳あって没落を目指すことにした悪役令嬢メアリ。そんな彼女の奮闘が勢いよく空回っていくラブコメです。
2巻完結と思いきや、1年以上経ってから後日談短編集の3巻が発売。やったぜ今年も紹介できる!

 

強かな女の子が多い悪役令嬢ヒロインの中で、だいぶ心配になるくらい気が弱いのが「転生したけど、王子(婚約者)は諦めようと思う」(鬼頭香月著/アイリスNEO)の主人公クリスティーナ。
「(ゲームで定められた)運命だろうと、他の人を好きになる男なんていらない・・・」と言いながらも大好きな婚約者を諦めきれずに嫉妬に揺れるか弱き悪役令嬢なのです。その恋心に振り回される様が共感を誘い、ついつい物語の世界に没入してしまうラブロマンスでした。

 

悪役令嬢ではないけれど、乙女ゲーム転生つながりで「だから彼女はキューピッドになりたい」(七海ちよ著/ビーズログ文庫アリス)もオススメ。
前世から神の如く崇めてきた推しキャラ男子の幼なじみとして育った主人公が、信仰対象である彼の幸せのためにゲームヒロインとの恋のキューピッドになろうという話。
10年がかりで期待をもたされたヒーローが繰り出す絶許必殺アイアンクローが必見。
荒ぶる神化したヒーローと崇拝系鈍感ヒロインの攻防が楽しい作品でした。

 

戦う少女が主人公のファンタジー

武器や異能を駆使して、少女主人公が自ら戦いに赴く物語は好きですか? 私は大好きです!

このジャンルでまず面白いのは「おこぼれ姫と円卓の騎士」(石田リンネ著/ビーズログ文庫)
有能な兄たちの争いを避けるため「おこぼれ」で王位継承者となった王女レティ。運命を受け入れた彼女が、自らを支える12人の「円卓の騎士」を集める物語です。
このレティがとにかく最強。彼女が駆使する様々な異能をもつ12本の剣が中二心をくすぐります。
最新刊で最終章に突入したため、追いかけるなら今のうち!

 

ヒロイックファンタジーのなかで、2016年最大の掘り出しモノだったのが「薔薇の乙女は運命を知る」から始まる「薔薇の乙女」シリーズ(花夜光著/講談社X文庫ホワイトハート)
不死者(吸血鬼やゾンビ)と戦う力をもった女子高生が主人公のダークファンタジーです。
序盤はかなりウジウジした女の子なのだけど、最新4巻「薔薇の乙女は剣を捧げる」ではガチ修行回を挟んで精神的にも肉体的にも強く逞しく成長。今後ますます理想の強き女主人公になるものと期待しています。

 

腹黒男装少女の毒気が愉しい、剣と魔法のファンタジー「詐騎士」(かいとーこ/レジーナ文庫)もオススメ。
以前から気になっていて、今年ようやく全8巻を読破しました。
年齢性別出自を偽る少女が主人公の騎士物語。とにかく口も頭も良く回り、周囲からは恐怖と畏怖と崇拝の念を抱かれる主人公ルゼの活躍が痛快です。

 

悪魔的な魅力のゴシックファンタジー

天使や悪魔が登場するような、ほの暗い世界観のゴシックファンタジーからは2作(+α)を紹介。

まずは、悪魔絡みの事件に調査する「朔使」の少女の物語「恋と悪魔と黙示録」シリーズ(糸森環著/一迅社文庫アイリス)
主人公の運命が過酷すぎて「そんなに鞭打たなくても・・・」と動揺すること請け合い。
主人公と契約している神魔との異種恋愛譚も必見。一途だけど感性がズレてる神魔と生真面目な少女のラブロマンスは、甘いけれど一筋縄ではいかないのです。
最新6・7巻で大きく物語が動き、驚天動地のどんでん返しが起こってしまいました。

 

著者つながりで、「階段坂の魔法使い」(糸森環著/角川ビーンズ文庫)も合わせて紹介。
悪魔は登場しないけれど、気難しい魔法使いと呪い持ちの少女の恋を描いた素敵なファンタジーです。一人三役のヒーローの奇行に笑いつつ、詩的で情緒あるラブロマンスが最高の逸品。

 

本題に戻って。
悪魔と契約した女枢機卿の復讐劇「緋色の聖女に接吻を 白き翼の悪魔」(葵木あんね著/小学館ルルル文庫)も面白いのでオススメです。
教皇選挙に絡んで相次ぐ不審死の謎を追うミステリー風味の作品。復讐譚のなかで切なく盛り上がる、誇り高いヒロインと健気な悪魔の純愛に心がときめきました。

 

働くヒロインのお仕事奮闘記

ライト文芸で人気のお仕事小説は、少女小説でも人気のジャンル。
どの作品も、様々な職種のヒロインたちが有能な仕事ぶりをみせてくれるものばかりです。

まず面白かったのは、「一華後宮料理帖」(三川みり著/角川ビーンズ文庫)
著者のデビュー作「シュガーアップル・フェアリーテイル」を彷彿とさせる中華後宮飯テロ小説です。
「食」を愛する料理人の妃嬪が、食学博士の助けを借りつつ、料理の腕で困難に立ち向かうというもの。華やかな後宮劇や、主人公をめぐる三角関係など、食以外の見所も多くて続きが楽しみなシリーズです。

 

少女小説では珍しい警察バディもの「シグザール警察特命官 まるで愛おしくない君とふたり」(御永真幸著/集英社コバルト文庫)も面白い!
毒舌で負けず嫌いな元エリートと、頑張り屋でワケありの少女。左遷先の窓際部署で出会った凸凹コンビが徐々に「相棒」となっていく姿を描く作品で、下手なロマンス小説よりもキュンキュンするコンビの絆に悶えます。

 

今年読んだお仕事系少女小説の中でも特に好きだったのは「悪辣執事のなげやり人生」(江本マシメサ著/レジーナブックス)
傍若無人な女執事が家族関係が壊れた伯爵家を振り回していく物語で、有能だけど主家への忠誠心はなく、要領がよくて図太くて色っぽい主人公に思わずニヤリ。
人生なげやりの女執事と人生やけくその伯爵のラブコメも笑えて萌える、とても楽しい作品です。

 

著者つながりで「公爵様と仲良くなるだけの簡単なお仕事」(江本マシメサ著/レジーナブックス)も合わせて紹介。
笑っちゃうくらい貧乏な子爵家令嬢が、笑っちゃうくらいコミュ障な公爵家の旦那様のお世話係となり、彼と仲良くなる「お仕事」に張り切るラブコメです。こんな可愛い三十路男がいてたまるか!(だが可愛い!) とツッコミながら読むこと間違いなし。

 

外伝作品ですが「詐騎士外伝 薬草魔女のレシピ」(かいとーこ著/レジーナ文庫)は、これ単体でお仕事小説として面白かったので本編とは別にご紹介。
「いかに美味しく健康に食事を楽しむか」がモットーの薬草魔女が、ハーブの豆知識やそれを使った料理をたくさん教えてくれるのです。失恋少女が腹ペコ少年にあーんするラブコメもすごく楽しい作品でした。

 

疲労回復にはラブコメが一番!

少女小説では多かれ少なかれラブコメ要素を備えているものが大半だと思っているのですが、そのなかでも特に「ラブコメ」を心ゆくまで楽しめる作品をご紹介。

異世界転生ラブコメ「男爵令嬢と王子の奮闘記」(olive著/アイリスNEO)は、男爵家の地味な令嬢が女性恐怖症の王子の花嫁に選ばれるという物語。
王子のフェロモン体質が招く女難の数々を、同じような境遇だった前世の経験を活かして受け流していく主人公の奮闘を描いた作品です。前世と今世が複雑に絡まる人間関係がユニークで面白いのでオススメ。

 

足ながおじさんをコミカルにアレンジした「チョコレート・ダンディ」(我鳥彩子著/集英社コバルト文庫)はとっても可愛いラブコメです。
ヒロインから青年貴族に宛てたユーモア溢れるお手紙が楽しい。「ねんね」のヒロインに振り回されるこじらせヒーローの恋にきゅんきゅんする作品でした。

 

王道の結婚ラブコメからは「花冠の王国の花嫌い姫」(長月遙著/ビーズログ文庫)をご紹介。
主人公は、重度の花粉症から逃げるため、辺境の小さな雪国へ嫁入りを決めた大国の王女。
経験値不足な王族カップルが内政に外交に奮闘する物語で、欠点を補い合う二人の初々しい恋が最高です。そして一発ネタと思われた花粉症が意外にも毎回役に立つのがすごい。
最新3巻が戦記風な内容だったことから、今後どうなっていくのか予想できないところも楽しみなシリーズです。

 

ヘトヘトに疲れてサクッと糖分補給したいときには「王女フェリの幸せな試練」(時田とおる著/角川ビーンズ文庫)がオススメ。
愛されすぎて自信喪失した引きこもり王女が主人公の作品で、テンポ良く軽快なストーリーのなかで、ネガティブ娘の成長と初恋が描かれる王道少女小説です。

 

「双剣の乙女 待ってて、わたしの旦那様」(こる著/一迅社文庫アイリス)も糖分を急速チャージできるラブコメ。
理想の結婚相手を探しに旅に出る少女が主人公なのだけど、旅の同行者と訳あって恋人のフリをするあたりから、砂糖吐きまくりで悶絶する展開に突入していきます。

 

学生meetsファンタジーな学園もの

ファンタジーな学園ものが大好きなので、少女小説でもっと増えないかなぁと思う今日この頃。
そういえば悪役令嬢モノは割と学園ネタが使われますね。ここではそれ以外のファンタジーな学園ものを2作紹介します。

まずは王道な魔法学園ファンタジー「空と鏡界の守護者」(小椋春歌著/ビーズログ文庫)
二人で術を掛け合わせる「連祷」という魔法技術を磨くための学園に在籍しながら、誰とも連祷できない劣等生な主人公。そんな彼女が初めて連祷できた相手は年下の天才少年でーーという物語。
世界の中心で愛を叫んでたら男子寮の目覚まし時報になった少年の片想いに注目です。とにかく暴走してる。
ちなみにこの著者の作品は全てオススメ。腹の底から笑いたいときに是非読んでほしい!

 

学園+ご近所妖怪+幼なじみでオススメなのが「幽谷町の気まぐれな雷獣」(森崎緩著/イースト・プレスRegalo)
刊行は2012年ですが今年に入って電子版が配信開始。
家がお向かいの幼なじみなのに学校では疎遠な関係となっている二人の高校生が、住んでいる田舎町の秘密を知ったことから関係を修復していく物語です。
幼なじみスキーなら間違いなくハマるはず。妖怪絡みの不思議系部活動もあったりします。

 

これを読んで逃げ恥ロスを乗り切りたいーー偽装(契約)結婚もの

2016年秋ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」にハマりまくっている年の瀬。
ドラマは雇用契約を結んだ偽装夫婦の物語ですが、少女小説で「偽装(契約)結婚もの」といえば一大ジャンルといえるでしょう。
仮初めの関係が本当の恋へと変わるカタルシスは何度味わっても良いものです。

このジャンルでまずオススメしたいのは、それぞれが慕う老紳士の願いを叶えるための偽装結婚を描いたラブロマンス「灰色のマリエ」(文野さと著/レジーナ文庫)
自他共に認めるダメな夫が、祖父に押しつけられ、最初は疎んじていた妻によって変わっていく物語。
「親しみを感じないものの色彩を認識できない」というヒロインの不思議な瞳を通し、徐々に色づいていく世界の変化に胸を打たれます。

 

結婚ではなく婚約ですが、「指輪の選んだ婚約者」(茉雪ゆえ著/アイリスNEO)は、ヤケクソで投げた指輪が偶然当たったことから婚約者となり、互いに都合が良いのでそのまま仮の婚約関係を演じることにしたカップルのラブコメ。
軽快なコメディとして楽しい一方、沈黙すら気にならない穏やかな時間から生まれる恋に癒やされる作品です。

 

その他、記憶に残った少女小説

最後に、ジャンルが思いつかない・・・その他の記憶に残った少女小説を紹介して、2016年の振り返りを終えたいと思います。

個人的にお久しぶりだった野梨原花南先生の新作「還るマルドールの月 The Return of the Mardore Moon」(野梨原花南著/集英社コバルト文庫)
金銭と引換えの政略結婚に利用されながらも、結婚相手に運命を感じ、警察官である彼の仕事を手伝おうとする少女。そんな彼女が国宝「マルドールの月」を狙う怪盗と対峙する物語です。
独特なユーモアのある世界観、クセのあるキャラクター、心に響く言い回しなど、何もかもが印象的な少女小説でした。

 

児童文学の系譜を感じる和風ファンタジー「犬恋花伝 青銀の花犬は誓約を恋う」(瑚池ことり著/集英社コバルト文庫)も、個性的で奥行きのある世界観が魅力の作品でした。
花に溢れ豊かな自然を感じる世界のなかで、人に姿を変えられる「花犬」をめぐる血生臭い騒動や、ヒロインと花犬の哀しいすれ違いが切なく描かれていきます。

 

最後の最後に紹介するのが2016年の作品じゃないのはアレですが、「桜嵐恋絵巻」シリーズ(深山くのえ著/小学館ルルル文庫)全10巻を今年ようやく読破しました。
親から子に対する支配力が強い平安の貴族社会で、政敵同士の家に生まれた二人の男女。
まさに平安版ロミジュリな設定ですが、貴族社会の慣習にとらわれない奔放な青年と、呪い持ちの「鬼姫」と忌み嫌われた姫君の恋を、奥ゆかしくも情緒たっぷりに描いた名作だと思います。

 

 

おわりに

以上で、2016年の少女小説振り返りを終わります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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「2016年の少女小説を厳選40作と振り返る(その2):ジャンル別オススメ少女小説」への1件のフィードバック

  1. みかこです。
    youさん、拍手コメントありがとうございます。
    励ましのお言葉をいただいて本当に嬉しいです。仮花嫁最高ですよね!
    今後もブログの更新をがんばっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします(*^^)/

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