湖城の魔王と異界の少女 睡蓮の花嫁/東堂燦


湖城の魔王と異界の少女 睡蓮の花嫁 (コバルト文庫)
湖城の魔王と異界の少女 睡蓮の花嫁 (コバルト文庫)

評価:★★★☆☆
2016年12月刊。
女子高生が異世界で魔王に出会う物語。
ふたりを引き合わせた、繊細で残酷な世界観とストーリーがとても印象的でした。
挿絵がまた良い仕事をしているんですよね。この絵師さん注目したい。
お互いに孤独と弱さを抱える少女と魔王の関係性も素敵。心を通わせていくふたりの、触れたら壊れそうな儚い心情描写に切なくなります。
良くも悪くも大人しくて静かな物語ではあるけれど、どこか古風で懐かしい雰囲気に心が惹かれる作品でした。

☆あらすじ☆
魔族達に伝わる、魔族に強力な力を与えることができる人間“花嫁”の伝説。水神を祀る神社の娘・小夜は洪水と病で相次いで両親を失い、絶望し、神域の湖に身を沈める。だが、そこは魔族達の世界への入り口であった。湖城の魔王・ヴィリは、奴隷の身から前魔王を倒し、魔王の座に就いたが、力を失い、その座を追われつつあった。ヴィリに凶刃が迫る中、小夜はヴィリの“花嫁”になれるのか!?

以下、ネタバレありの感想です。割とネタバレ強め。

 

孤独を抱えて異世界に迷い込んだ小夜が出会ったのは、弱くて優しい湖城の魔王・ヴィリ
人間のいない「魔界」でヴィリに恋をした小夜は、元の世界で得られなかった愛と居場所をヴィリが与えてほしいと願うようになり・・・・・・という感じで物語は動き始めます。

 

両親からの愛を得られず、どこにも居場所がなかった小夜。
魔王となったものの、弱さゆえに安らげないヴィリ。

 

互いに孤独と弱さを抱えていて、それを癒し合うような二人の関係は幻想的で、その脆さをとても美しく感じました。
小夜がヴィリに惹かれる心境が最初は後ろ向きに感じたのだけど(辛すぎる現実から目を背けているだけでは・・・と思って)、見知らぬ場所で懸命に居場所を作ろうとする小夜の健気さは良かった。
「好きになって」とヴィリに愛を乞うところとか、母には「愛していた?」と聞くことすらできなかったことを思えば切なすぎて、この不憫な少女の幸せを祈らずにはいられませんでした。

 

孤独なヴィリと心を通わせていく一方で小夜は彼が抱える不安定な内情を知り、物語は暗雲立ちこめる不穏な展開へ。

 

話そのものは面白いのだけど、あまりにも静かで大人しいムードが強すぎるかな、という印象。
いまいち要所で盛り上がりきれていないというか。
静かな湖面を描くような物語で、たまに波風で揺れることもあるけれど、基本的にはシン・・・と静けさに包まれてるイメージ(伝わるかな)
波風のところもっと勢いよく!って思ったけれど、まぁ、これは好みの問題ですね。へたにテンションを上げすぎても世界観が壊れるだけだろうし。

 

とはいえ、最後のユリアンとの戦いでの、小夜の「信じている。愛しているから」には胸がぎゅっと締め付けられました。なんて強くて綺麗な少女なんだろう。挿絵も素敵すぎてドキっとしました。

でもこのシーン、小夜の美しい微笑みに心を奪われているうちに、気づいたらヴィリがユリアンを倒してた・・・・・・。
因縁を乗り越えるヴィリの戦いも、小夜の覚悟に負けないくらいドラマチックに演出してくれていたらもっと良かったのに。ちょっと呆気なくてもったいない。

 

色々書きましたが、良い少女小説だと思います。
苦しい生のなかで出会った小夜とヴィリの絆を、美しく描いた落ち着いた物語でした。
東堂さんの次回作も期待しています。

 

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