花を追え 仕立屋・琥珀と着物の迷宮/春坂咲月


花を追え――仕立屋・琥珀と着物の迷宮 (ハヤカワ文庫JA)
花を追え――仕立屋・琥珀と着物の迷宮 (ハヤカワ文庫JA)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2016年11月刊。
第6回アガサ・クリスティー賞「優秀賞」受賞作。
着物を愛する青年仕立屋と、「着物には近寄らない」と言う女子高生。
御縁に結ばれた2人が、着物にまつわる様々な謎を解き明かしていく連作短編ミステリです。
謎解きにあたって多くの蘊蓄が語られ、それがとっても楽しい。きもの文化というものは奥が深くてオシャレで粋なものだなぁ・・・と唸ってしまいました。
予想外にロマンチックな主人公2人の関係も素敵。
ちょっとストーカー気味な和服イケメン琥珀さんをはじめ、愛嬌のある登場人物たちが魅力的な作品でした。

☆あらすじ☆
仙台の夏の夕暮れ。篠笛教室に通う着物が苦手な女子高生・八重はふとしたことから着流し姿の美青年・宝紀琥珀と出会った。そして仕立屋という職業柄か着物にやたらと詳しい琥珀とともに、着物にまつわる様々な謎に挑むことに。ドロボウになる祝い着や、端切れのシュシュの呪い、そして幻の古裂「辻が花」……やがて浮かぶ琥珀の過去と、徐々に近づく二人の距離は果たして――?

以下、ネタバレありの感想です。

 

和の文化というのは、シャレを愛する文化なのかもしれない。

『「御縁」を結ぶ「五円」』のようなダジャレに近いものもあれば、季節の風物詩にかけて着物の柄を選んだり、絵柄からの連想で裏の意味をかけたりと、ウィットに富んだ計らいがあったりする。
粋に洒落るにはある程度の教養が必要だけれど、だからこそ奥の深さと面白みを感じるものなのでしょう。
この作品では多くの「○○とかけて△△を表す」が登場するのだけど、そのどれもが解説にハッとし、その心意気にオシャレだなぁと感心しきりでした。
日本文化はオシャレな文化。ちょっと詳しく学んでみたくなりました。

 

それはさておき。

 

物語の中心人物となるのは、五円によって御縁を結んだ女子高生・八重と仕立屋・宝紀琥珀
「着物をめぐる様々な謎に遭遇した八重が、着物にくわしい琥珀に相談する」という形で少しずつ親しくなっていく2人を描きつつ、やがて八重は幻の古裂「辻が花」をめぐる争奪戦に巻き込まれていくことになるのです。

 

登場する様々な謎自体も面白いのだけど、その謎解きにあたって語られる和装や和柄の蘊蓄が本当に楽しかった!
そもそも着物自体が華やかで素敵。
まぁ着物に縁遠すぎて、用語が出る度に画像検索しつつ読み進めていたのですが。これだけ綺麗なものに意味をもたせていくのなら、着物にハマる人がでてくるのもわかる。
一方で語られる着物業界の現状もなかなか興味深いものでした。このあたりもっと知りたいなぁ。途中で八重が着物と姑をかける話に深く共感したw

 

「辻が花」をめぐる一連の騒動については、最初から怪しさしかなかった人が案の定・・・だったものの、そこに至るまでの様々な引っかけが面白い話でした。
特に銀さんの件は騙された。このくだり必要だった?って首を傾げる上に後味も悪いと思っていたところだったので、ラストの種明かしにホッとしました(^^;)
あと怪石さんはもっと断罪されてもいい。意外な愛嬌に誤魔化されてしまったけれど!

 

謎解きを繰り返すなかで、少しずつ強まる八重と琥珀のラブコメな関係はとても良いものでした。
お稽古場所に乗り込んできた話は「おや? このイケメン、なかなかにストーカー気質・・・(震)」とか思ってしまった琥珀さん。
八重のために夜なべしたり、ほいほいと八重のシュシュに手を伸ばすところは最高にニヤニヤしました( *´艸`)
そして女子高生へのアピールの仕方が無駄にオシャレ・・・・・・署名のところとか教養深すぎてもはや高度な変態みを感じました。いや、とってもスマートなんだけど!

 

二人の御縁は予想以上にロマンチックな物語を秘めていて、これもまた大好物。
「人魚姫だと思っていたら自分が人魚に」ってうまいこと言いますね。拗ねる琥珀さんは可愛げがあったけれど、たしかにこの誤解は拗ねたくなる。
八重の報われない恋が気がかりだったものの、結局はあるべき形に戻っていったということなのかな。
そのくらい強い御縁に結ばれた2人なのでしょう。冒頭の鼻緒の件を「糸の神様がキレた」って表現したところがすごく好き。こんなところでも洒落を利かせる小粋さが良いのです。

 

とても楽しくて新鮮な和ミステリでした。
綺麗に話はまとまってるけれど、ぜひシリーズ化してほしいなぁ。楽しみに待ってます!

 

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