ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト/永瀬さらさ


ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト (角川ビーンズ文庫)
ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト (角川ビーンズ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★★
2016年12月刊。
とっても素晴らしかった!
恩人との再会を願う新人バイオリニストと、彼女に偽りの婚約を持ちかける若き天才指揮者。そんな二人の恋と音楽の物語です。
感覚型で危なっかしい天才少女と、彼女を支える意地悪で過保護なヒーローっていう関係性がまず良い。
二人の間にある「嘘」とすれ違いは切ないけれど、悪態の応酬すら可愛いケンカップルぶりにニヨニヨが止まりません(*´∀`*)

音楽モノとしての完成度も文句なし。
ひとつひとつの表現が繊細で心に響くし、演奏と恋心のシンクロは鳥肌が立つほどでした。
ストーリーの緩急も巧みで、試練を乗り越えバイオリニストとして花開いていく主人公の姿にカタルシスを得ずにはいられません。

魅力的なキャラがたくさん登場し、コメディパートが面白すぎてやたら笑ってしまった本作。
正直、めちゃくちゃ好きです。ぜひシリーズ化してほしい!

☆あらすじ☆
共犯者になるなら守ってやる――暴君指揮者と“婚約”の結末は!?
“養護院出身の伯爵令嬢”にして、新人バイオリニストのミレア。そんな彼女が、「音楽の邪魔になる求婚者よけ」という利害が一致し、公爵家の跡取りで、気鋭の指揮者でもあるアルベルトと仮婚約することに……!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

「探し人はすぐ隣に」っていうベタな再会モノが大好物です。
探している彼女は気づいてないけれど、探されている彼の方は気づいている。
そのすれ違いが、ある時はとても可愛く恋心を焦らし、またある時は哀しい決断を選ばせる。
そんなベタな設定をうまく使いこなし、ドキドキハラハラさせる魅力的なラブコメディに仕上げたのが、この「ドイツェン宮廷楽団譜」だと思います。

 

さて、物語の舞台となるのは音楽をこよなく愛するドイツェン王国。
その王室御用達の宮廷楽団に入団した新人バイオリニスト・ミレアには、とある目的がありました。

それは、彼女が幼い頃に出会い、最高級のバイオリンを与えてくれた「聖夜の天使」に再会すること。
どこの誰かも分からない彼に気づいてもらうため、ミレアはバイオリニストとして名を上げようと奮闘するのです。

 

この「聖夜の天使」の正体はさておき、「バイオリンの妖精」として鳴り物入りで入団したミレアが出会ったのは、第一楽団を率いる天才指揮者アルベルト

ミレアとアルベルトの偽りの婚約関係から始まり、マエストロの横槍や、ミレアの出自、アルベルトの父子問題などなど、様々な試練や問題が次々と巻き起こる本作。
ミレアが何度も挑戦する曲のように、乙女の恋の行方は「嵐」によって翻弄されていくことになるのです。

 

試練によって何度も挫けそうになるミレアを、陰日向に支え続けるアルベルト。
口の悪いアルベルトにミレアはすぐ反発するけれど、読者的には透けてみえる彼の真意にニヤニヤが止まりません。
ミレアの才能が潰されないように、チクチクと釘を刺しまくるアルベルトさんマジ過保護。
その過保護っぷりがたまらないのですが、特にミレアと新人たちにメッセージで叱咤激励するシーンがすごく好きです。
イケメンすぎるし、「あの馬鹿弟子に指導された連中が送り込まれてる感じがする」っていうガーナーの嘆きに笑ったw

 

そんなアルベルトに支えられながら、バイオリニストとして成長していくミレア。
ミレアはちょっと(だいぶ?)そそっかしい子だけど、天真爛漫という言葉に相応しい女の子だと思います。
出自は偽りでも、家族への愛や天使への想いに嘘はなく、そのまっすぐな人間性にとても惹かれるのです。
馬鹿正直とか言ってはいけない。そこは愛嬌ですw

 

私が最初にミレアを好きだなぁって思ったのは「ちゃんと似てるところをさがさなきゃ」っていうセリフ。
その直前に伯爵夫妻と自分の似てるところをたくさん挙げるのがいい。そんなミレアだから、形だけの慰めじゃなく本気で言ってるんだって伝わるんです。
その上これってアルベルトの隠れた本音を汲んでの発言だから、まぁ「うっかり手が出た」のは仕方ないですよね。これは惚れるよ!

 

バイオリニストとしてのミレアも、とても魅力に溢れていました。
「バイオリンの妖精」という看板を嫌がり、その重さに押し潰されそうになりつつも、逆境を跳ね返して力にするところとか。
新米バイオリニストが、いっぱしの音楽家として成長していく姿に胸がいっぱいになります。

それと「ムラっけのある感覚型の天才」っていうのが良いんだよなぁ〜。
最初のヤマ場である定期演奏会でのカタルシスは鳥肌ものでした。

あのシーン、「中盤でこれだけ盛り上げて大丈夫!?」って心配したのに、クライマックスはそれをさらに超えてきたんですよね。
ミレアもこの作品も侮ってはいけなかった・・・・・・。

 

また、ひとつひとつの表現も本当に素晴らしいのです。特に演奏シーン。
ミレアが自由に楽しくバイオリンを奏でるシーンも、ガーナーや先輩たちに揉まれて悪戦苦闘するシーンも、羽ばたくような渾身の演奏を魅せるシーンも、音を聞かせられない代わりにイメージを集中的に叩きつけてくる感じが最高。
恋する乙女の会いたいという願いが、春の嵐にさえぎられるという曲想をベースに、バイオリニストとしてのミレアの挫折と成長がこの上なく伝わってきました。
そこにミレア自身の恋心もシンクロしていくため、高揚感は二倍三倍にも高まっていくのです。うーん、素晴らしい!

 

それ以外でも、何気にお気に入りなのがちょっとした恋の表現。
アルベルトにときめく心臓を「鳴らないで」「私は奏でる側なのに」って言うのが好き。
こういうところで音楽家としてのキャラクターを滲ませるの、可愛すぎですよー!

 

表現と同じくらい構成も秀逸。
「高い木の上から落ちたミレアをアルベルトが助ける」っていう冒頭のシチュエーションを、クライマックスでもう一度持ってくるの、ちょっと巧すぎじゃないですか?
しかも二人が奏でる音楽で表現されるとか。ときめきすぎて私の心臓がもたない!
落ちるミレアを受け止めるアルベルト。彼を信じているから墜落を恐れず飛ぼうとするミレアっていう二人の関係性が萌える・・・!

 

べた褒めが続くけれど、悪役も含めサブキャラクターもみんな魅力的でした。
ミレアの家族愛が本当に泣ける。伯爵夫妻の会見シーンとか夜中のテンションでぼろぼろ泣いてしまいました(`;ω;´)

アルベルトのパパはすごく憎たらしい悪役だけど、最終的に可愛い親バカに化けてほっこりw

ミレアの本当の父親も、最初はなんだこのクソ親父って思っていたのに、エピローグでちょっとしんみりしましたしね。そういうことだったのか、と。これは嫌いになれない。

最初のヤマ場で不気味な道化師の役どころだったマエストロも大好き。
ふざけた巨匠ってなんかいいですよね。
才能を見つけては試しに潰して、潰れなかったら天才っていう発想は怖いけど。指導者としてはアルベルトのほうが上だなぁ。

 

マエストロ含め、宮廷楽団の楽団員たちの絆は本当に眩しいものでした。
プロ意識が高くて面倒見の良い第一楽団も素敵だし、ミレアと一緒に泣いてみんなで立ち上がる第二楽団の新人たちも良い。
もちろん新人をしごきながらも優しくフォローする第二楽団の先輩たちもしれっと格好良かったです。
彼らの関係性には青春小説の趣を感じました。ラストの息の合った茶番劇は最高にニヤニヤしたw

 

もうほんと満足です。素晴らしい少女小説でした。
伏線的な積み残しはないけど、強いて言うならレベッカとフェリクスの恋は気になるかな。主役で描いても面白そうなカップルでしたし。
あとは「聖夜の天使」の正体をいつ認めるか、とか?
まぁアルベルトが紫のバラの人っぽくなってるの面白いんで、個人的にはこのままでも全然OKですね。

もしシリーズ化するなら大歓迎です。続きがあるならぜひ読みたい!!

 

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