セレクション1 片恋協奏曲/キーラ・キャス


([き]3-1)セレクション I 片恋協奏曲 (ポプラ文庫)
([き]3-1)セレクション I 片恋協奏曲 (ポプラ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2016年10月刊。
これは「シンデレラ・ストーリー」ではあるけれど、選ばれるのを待つだけの受け身なシンデレラではありません。
自分の人生は自分で選んでみせる! という気概のあるシンデレラなのです。

物語の主人公は、王子妃を選ぶセレクションに参加し、王子への淡い恋と元彼への未練で心を揺らす庶民の少女。
状況に流されず「自分らしさ」を貫こうとする彼女は、セレクションの先に何を選び取るのか。
その選択を見届けたくなる、王道にして刺激的なラブロマンスです。

近未来を舞台にしながら中世的な雰囲気を醸す世界観も魅力的。
厳格な身分制や反乱組織の存在が物語をシリアスに引き締め、その影に見え隠れする謎には好奇心をそそられました。

今後の展開に期待が高まる三部作の序章。この続きがとても楽しみです。

 

ちなみに、気になる方はAmazon商品ページに掲載されているイラストをチェックしてみるのも良いと思います。巻末掲載のあとがきです。

([き]3-1)セレクション I 片恋協奏曲 (ポプラ文庫)

表紙絵師さんが作品の魅力(というか萌えポイント)をイラストでわかりやすく紹介されていて、メイン3人のキャラクターを把握するのに丁度良いですよ。ネタバレは控えめ。
このあとがき、絵師さんの萌えポイントが私の萌えたポイントを網羅していて、わかるー!それわかるー!!ってブンブン頷いてました。ほんとわかるー!

☆あらすじ☆
少女たちが王子を巡って闘う、まったく新しいシンデレラ・ストーリー!
厳格な身分制が支配する近未来の王国を舞台に、全国から集められた少女たちが王子の心とプリンセスの座を巡って熾烈なバトルを繰り広げるイベント、「セレクション」。
およそ20年ぶりに開催されることが決まり、ひょんなことから超庶民・アメリカが候補者に選ばれてしまう。失恋したばかりの彼女は半ばヤケクソで王宮に向かうが、そこで待っていたのは、変わり者の王子と――超個性的なライバルたち!
厄介な元カレが現れるわ、王国の黒い陰謀に巻き込まれるわで、こんなの、全然「プリンセス」じゃない! 乙女の闘いを勝ち残り、プリンセスになるのは誰だ――? そして、厄介な三角関係の結末は――?
女性も男性も胸キュン&ハラハラ間違いなし、超肉食系シンデレラ・ストーリー三部作、お見逃しなく!

以下、ネタバレありの感想です。

 

本作の舞台となるのは、第三次世界大戦と第四次世界大戦を経て、アメリカ合衆国の後に建国されたイリア王国
未来の世界ではあるものの、厳格な身分制や、ドレスで着飾る女性たちで華やぐ王宮の様子によって、どことなく中世的な雰囲気を感じる世界観が独特でした。
飛行機や携帯電話やテレビが出てくるたびに、「おっと、これは未来の話だった」とイメージを修正してた気がします。まぁ、それにしても未来感は薄いのですが。

 

そのイリア王国で、王位継承者である第一王子の妃を選出するための方法が「セレクション」。
全ての階級を対象に参加者を募ることから、下級階層の庶民にとって「セレクション」はシンデレラ・ストーリーを叶えてくれる夢の制度なのです。

 

そんな「セレクション」で、カロライナ州代表に選ばれたのが主人公である第五階級の庶民・アメリカ・シンガー
第六階級の恋人アスペンと破局し、失恋の傷から逃げるように王宮に上がったアメリカは、そこで34人の美しいライバルと、セレクションの主役である王子・マクソンに出会うのです。

 

多くの美女たちと王子の愛を賭けて競わねばならない、ということで、もちろん出てくるのは女達の牽制、駆け引き、キャットファイト。
これを端的に表しているのは、マクソンとアメリカの最初の出会いで交わされたこの会話でしょう。

「私を奪いあう? 選ぶのは私のほうではありませんでしたか?」
これだから温室育ちは。わたしはいらいらしながら頭を振る。
「男の人ってわかってないのね。女はね、男が自分を選ぶように仕向けるの。」

まさにこれ。「セレクション」は王子が妃となる娘を選ぶ場ではなく、王子に自分が選ばれるように画策する女の戦場なのです。(とはいえ、ギスギスとした険悪ムードが続くわけではなく、候補者同士の友情も生まれたりするのですが)

 

それに続く会話も面白い。

「(省略)足の引っ張り合いだって朝飯前よ、王冠を手に入れられるんだから」
「王冠?」
「目的はそれぞれってこと。まさか、国中の娘が殿下と恋愛したいと思っているとでも?」

ほんと、このシーンのアメリカは本人を前に言いすぎだろって震えます。でも彼女の意見は真理。

「王子」の愛を競いながらも、候補者たちは「マクソン」の愛がほしいわけではないんですよね。少なくとも最初の段階では。

セレクションの候補者達にあるのは、王子妃という身分への欲だったり、セレクションの期間に支払われるお金だったり、期待をしている家族を裏切れないという想いだったりと様々。
それでも建前としてマクソンは誰かと恋に落ちねばならず、候補者は(内心はさておき)王子に恋をしてもらおうと競い合い、その経緯が全国ネットでテレビ報道されてしまうのです。

庶民のアメリカがこの構造を気持ち悪いと思ってしまうのも仕方ない。

もはや実態は各州対抗ミスコン&リアリティーショーのようなものだし、セレクション中のルールは死刑を含む厳しいものだし、選抜には王子の意思以外の政治的思惑まで絡んでくるのだから、そこに綺麗な夢を見続けろというのも難しいお話でしょう。

厳しいルールのもとに制度化されたシンデレラ・ストーリーは、かくも世知辛く幕を開くのです。

 

そんな「セレクション」のなかで、様々な階級の様々な価値観に触れていくことになるアメリカ。
自分はどうあるべきか、を問い続けた結果、「わたしは、わたしだ」という答えに辿り着いた彼女はとても格好良くて潔い女性でした。
選ばれる側の候補者でありながら、選ぶ立場でいようとする。
雰囲気に流されず、身分社会の歪みにまっすぐ目を向けるアメリカだからこそ、自分の人生を他者の選択に委ねたくないという決意に気概を感じるんですよね。素敵なヒロインです。

 

そんなアメリカを巡って、三角関係となるヒーロー2人もそれぞれ魅力的。
1巻は大半がマクソンのターンだったので、今のところマクソン優位な印象があるかな。
マクソン、股間蹴りで頬染めしたときは「マゾ開眼!?」とか思ってごめんなさい(あとがきイラストでも指摘されて笑うしかなかった)
箱入り王子で世間を知らないけれど、即座に行動を起こす頼りがいを感じるところが良い。アメリカの話に親身に耳を傾ける姿をみるに、彼はきっと良き為政者になるのでしょうね。

 

マクソンは素敵だけど、個人的にはアスペン押しかなぁ。
序盤で熱烈にイチャイチャしておきながら身分差の壁を乗り越えることができずに破局した元彼氏。
表紙とあらすじで再登場することは分かっていたけれど、実際の再登場時は専属護衛!?マジか!マクソンやっちゃったな!!と大興奮でしたw
まぁ今やアスペンも第二階級に昇格してるから身分差的にはマクソンに十分張り合えるんですよね。不憫な一途さに打たれたし、逆転に期待したい。
が、アメリカにちょっかいかけてるのがバレたら死刑。姦通罪怖すぎですよ・・・・・・。

 

アスペンがどれだけ巻き返しをはかれるか分からないけれど、マクソンの心がアメリカにある以上(信じていいんだよね?)、マクソンを選んだらアメリカは未来の王妃。ただし内政不安を抱える国の。
色恋やムードに流されないアメリカの自制心はもっと褒められるべきでしょう。
まぁ優柔不断ともいえるのだけど。優柔不断すぎて若干二股気味だもんなぁ・・・・・・。

 

アメリカの恋とセレクションの行方が楽しみな一方、なんだか気になるのが世界観。
特に反乱勢力の存在が気がかりです。王宮の警備態勢に不安しかない。
作中、随所に出てくる「星」のモチーフも印象的だったのだけど、反乱軍やポラリスと何か関係しているのかな?
また、歴史学者や歴史書が存在しないこと、その割に第五階級のアメリカの家に歴史書が存在していたことも意味深です。もしや王国の建国背景に何か秘密があるのでしょうか。それは反乱勢力が探している何かと繋がっていたりするのかな。

 

ストーリーもキャラも世界観も、序章としては満点を差し上げたいレベル。
三部作の残る2冊でどんな物語を展開してくれるのか楽しみです。

 

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