鳥居の向こうは、知らない世界でした。 癒しの薬園と仙人の師匠/友麻碧


鳥居の向こうは、知らない世界でした。 癒しの薬園と仙人の師匠 (幻冬舎文庫)
鳥居の向こうは、知らない世界でした。 癒しの薬園と仙人の師匠 (幻冬舎文庫)

評価:★★★☆☆
2016年11月刊。
「かくりよの宿飯」シリーズの友麻碧先生の新作。11月だけで2作めですね。
こちらは和風(というよりアジア系無国籍風?)な異世界に迷い込んだ女子大生が、仙人に弟子入りして薬師修行に励むというファンタジー。
様々な効能の薬膳料理を作ったり、人のためになる薬品を一生懸命考えたり作ったりするお話でした。
元の世界では複雑な家庭環境で育ち居場所がなかった主人公が、見知らぬ世界で新しい家族と居場所を手に入れるハートフルな物語としても良かったです。
色々と謎があるからシリーズ化するのかな?

☆あらすじ☆
孤独な女子大生・千歳は、二十歳の誕生日に神社の鳥居を越え「千国」という異界に迷い込む。イケメン仙人の薬師・零に拾われ彼の弟子として働くが、「この安本丹!」と叱られる毎日。しかし、客を癒す薬膳料理を作るうちに、ここが自分の居場所に…。そんな中、夢で自分を探す家族の姿を見てしまう。ほっこり師弟コンビの異世界幻想譚、開幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

この小説を読んで初めて「あんぽんたん」の漢字を知りました。ていうか漢字あったんだ・・・・・・!

 

さて、友麻さんの新作異世界ファンタジーは薬師もの。
帯やあらすじは薬膳押しだし確かに多くの薬膳料理が登場するけれど、それと同じくらい薬師として薬を調合したりケガ人病人を治療したりしているので、おおまかに「薬師もの」と考えた方が良い気がします。

 

そんな物語の主人公は、両親たちのドロドロした愛憎劇のせいで(いったい父と実母と義母の間に何があったんだ・・・)家庭に居場所がなく孤独だった女子大生・千歳
二十歳の誕生日、千歳は、黒ウサギに導かれるように神社の鳥居をくぐった結果、異世界「郷」の島国「千国」に迷い込んでしまうのです。
そこで薬師の仙人・に拾われたことから、千歳は零に師事し、彼の薬園や薬局に訪れる人々と関わっていくことになる・・・・・・というのが本作の大まかなストーリー。

 

薬師ものということで様々な薬品や薬膳が登場する本作。
現代でも馴染みのある食材や料理と、異世界ならではの「仙術」を適度な配分で混ぜ合わせていて、具体的なイメージを持たせつつもファンタジーな雰囲気を壊さないところが特に好みでした。
杏仁珈琲とか塩レモン料理とか、普通に試してみたいと思いましたし。美味しそうだったな〜。
あとは日焼け止め作りも面白かった。オーガニックな日焼け止めとかあるんですねー。化学薬品必須だと思っていたから、異世界で千歳が日焼け止めを作ろうとするその発想が新鮮でした。

 

色々と試行錯誤したり人々と交流を深めていくなかで、少しずつ癒やされていく千歳の孤独。
「家族」に恵まれてこなかった千歳が、零の「家族」として扱われたことに静かな興奮を抱くシーンがとても印象に残っています。思えばこの作品は、千歳がようやく自分の居場所を見つけるところまでを描いているんですよね。自分の意思で選びとった場所っていうのが重要なんだろうなぁ。元の世界に戻ることを迷いながらも、ここで生きていこうと決断するシーンも素敵でした。

 

千歳の周囲のキャラクターもまた魅力的。
零先生、一応イケメン設定のはずなんですが、なぜか全然ときめかない・・・w
言動の端々から全く若さを感じませんもんね。ヒーロー的なときめきはないけれど、大樹に寄り添う安らぎに近い感じはありました。さすが仙人。これぞ仙人。

 

ヒーロー的かどうかはともかく、ラブコメ的なお相手になってほしいのはワケあり王子のトーリ
私は断然トーリ派ですね! 厳しい環境に置かれて、笑顔を作れる人って強いと思うし格好いいです。

まぁでもラブコメがなくても、千歳、零、トーリのほのぼのした関係が好きなんでこのままでも問題ないかな。和気藹々といつまでも仲良くしていてほしい「家族」でした。

 

表紙のランタンの明かりが美しい異国情緒溢れる世界観も素敵だったし、良い作品だったと思います。
ただ、千歳の出自の謎(父親に疑惑が出てきたのはどう捉えるべきなのか)とか、優の前に現れた黒ウサギとか、色々と気になる幕引き。これは続刊があるってことでいいんですよね?

千歳の奮闘をもっと見ていたいので、シリーズ化に期待したいと思います。

 

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