尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る/紺野アスタ


尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る (ダッシュエックス文庫)
尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る (ダッシュエックス文庫)

評価:★★★★☆
2016年10月刊。
面白かった!
廃デパートにあらわれる「観覧車の花子さん」と、花子さんに逢いたい少年と、心霊写真を撮る少女の物語。
感情の薄いヒロインが、主人公との交流を通して少しずつ心に揺らして傷を癒やす話って好きなんですよね。もどかしさと甘酸っぱさに青春を感じてときめくんです。
都市伝説的なオカルトから、主人公の姉の秘密を探っていくミステリーへと移っていく展開も読み応えあり。二転三転して意外な真実を明かしつつ、読後感は切なくも爽やかなものでした。

☆あらすじ☆
久佐薙卓馬は廃墟と化したデパートの屋上遊園地で、傷だらけの古いカメラを持った不思議な少女―尾木花詩希と出逢う。卓馬の通う高校で“心霊写真を撮ってる変わった女”と噂される詩希に「屋上遊園地に出るといわれる“観覧車の花子さん”を撮ってほしい」と依頼するのだが、「幽霊なんていない」と取り合ってもらえない。しかし、諦めきれない卓馬は写真部を訪ね、詩希を捜そうとするのだが、彼女がいるのは“心霊写真部”だと教えられて…。卓馬が逢いたいと願う“観覧車の花子さん”を、詩希は写すことができるのか―。少年の想いが少女の傷を癒す、優しく切ない青春譚。

以下、ネタバレありの感想です。

 

取り壊し予定の廃デパートの屋上遊園地に出ると噂される「観覧車の花子さん」。
そんな曰く付きの場所で、「花子さんに逢いたい少年」久佐薙卓馬は、「心霊写真を撮る少女」尾木花詩希と出会うのです。

 

心霊スポットを舞台としたボーイ・ミーツ・ガールでありながら、そこにホラー的な雰囲気はなし。
むしろ「他に人がいない廃墟で二人きりの時間を積み重ねる」という設定にときめいてました・・・・・・程良い非現実空間なのがいいんだろうなぁ。

 

卓馬がにじませる焦燥感や詩希から感じる孤独が時折寂しげな空気を出すものの、それがまた二人の甘酸っぱい青春に適度なスパイスを加えていたと思います。
廃墟でのミステリアスな出会い、雨の学校でのサスペンスな再会、そして心霊写真を撮るために二人で歩き回る放課後の時間。
ひとつひとつのシーンが印象的でテンポも良いし、一緒に過ごす中で縮まっていく距離にきゅんきゅんしました。

特に孤高の猫みたいだった詩希が卓馬に餌付けされて懐いていく姿とか見てると、もうなんというか、可愛すぎか・・・! と。詩希の「卓馬くん」呼びになぜか撃ち抜かれた。
感情が薄くて反応が鈍い詩希だから、卓馬との関わりで見せる小さな変化がとても目を惹くんですよね。こういうヒロインほんと好き。

卓馬は卓馬で詩希の顔をスマホで撮りまくってコレクションにしてるとか、無意識バカップルかよ!とすごくニヤニヤしましたw

 

そんな甘酸っぱい青春小説としても良かったけれど、「観覧車の花子さん」を巡る謎めいた物語としても読み応えあり。
目覚めない姉の想いを「花子さん」から探そうとする卓馬。「想いの欠片」をカメラで写すことができる詩希。
ふたりが協力したりすれ違ったりするなかで、二転三転していく「花子さん」の真相は最後まで予想がつかず、結末に何が待っているのかドキドキしながら読み進めました。
途中まで親友くんが怪しいと思ってたのになぁ。外れたかー。そして明かされた関係性は私的に盲点でした。

 

詩希の写真に写ったものや、事故前の姉の行動など、様々な伏線が全て繋がって明らかになる「想いの欠片」は切なくも優しいもので、読後感は爽やか。
エグい予想をちらつかせ「暴いたらまずいのではないか」と不安を煽っておいて、全方位に綺麗なハッピーエンドで締めるとか構成としても上手い。カタルシスが素晴らしかったと思います。

 

とても良い青春小説でした。シリーズ化できそうだし、ぜひ続刊がほしいなぁ。

あと、この物語を読んでるとちょっと良いカメラがほしくなりますね。「趣味はカメラです」とか一度で良いから言ってみたい(出不精だから無理か)

 

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