翼の帰る処5 蒼穹の果てへ 上・下/妹尾ゆふ子


翼の帰る処 5 ―蒼穹の果てへ― 下
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前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
上巻:2015年3月刊、下巻:2016年9月刊。
左遷された超虚弱体質の文官が、過去視の力と優秀な頭脳を駆使して、歴史に隠された秘密に迫っていく傑作ファンタジーの最終巻。
神々の存在まで絡んでくる壮大な物語となりましたが、きっちりと纏めて完結。最後まで本当に面白かったです。
毎度毎度ぶっ倒れては「やばい、こいつほんとに死ぬ・・・!」とビクビクさせられた主人公も、なんとかゴールまで辿り着いてくれてホッとしました。

☆上巻あらすじ☆
念願の隠居生活にもかかわらず、相変わらず仕事に忙殺され納得がいかないまま忙しい日々を送るヤエト。反旗を翻した第七皇子との戦いのさなか、魔界の罅を塞ぐ方法の調査を皇帝から任命されたヤエトは、着実にその方法に近づきつつあった。そんな中、「兄上たちの喧嘩を止められる」という理由から玉座をとると皇女が言い出す。突然の宣言に驚き、困惑するヤエトだったが、その矢先、都から竜種一同に招集がかかり、ヤエトも皇女の副官として列席することになり―。

以下、上下巻合わせてネタバレありの感想です。

 

「はやく隠居したい」と何度も何度も繰り返してきたヤエト。
念願叶って隠居できたけれど、なんか思ってたのと違う・・・・・・と、げんなりしている姿には笑うしかなかったですw
周囲もヤエトを酷使するけれど、ヤエト自身が口では色々言いつつせっせと働くものだからこういう結果は当然か。

 

そんなヤエトの悲しい隠居生活から始まった最終巻。物語もいよいよ大詰めとなりました。

 

竜種たちの皇位継承争いという浮き世の問題を皇女に任せ、「魔界の蓋」「世界の罅」の問題に専念することになったヤエト。

世界の罅、内部分裂しそうな竜種、不穏に揺れる北嶺などなど、問題は山積み。
それを最終巻でどこまでまとめられるのかと案じていたのですが、ヤエトはヤエトに任されたことだけに向き合うという形で複雑に蠢く背景をさらりと流して幕引き。
取捨選択の潔さがとても読みやすくしていたと思うし、「世界はひとつの繋がりである」という真理を体現しているかのようなエピローグは意外なほどに満足できました。
ヤエトだけでなく、彼に関わってきた様々な立場の人々がそれぞれの戦いに挑み、それが物語の結末を形作っていく。この作品の終幕にとても相応しいのではないでしょうか。

 

終幕に向かう過程でこれまでの様々な伏線も回収されていくわけですが、どこに蓋があるのか、どうすれば閉じることができるのかが描かれるシーンでは「あれはそういう意味だったのか!」と驚きっぱなし。
浮き世のもめ事と神話の秘密が交互に描かれていくシリーズだっただけに伏線の置き方も複雑で、その関係性を曖昧にしか把握できてなかったんですよね。全てを知った上で最初から読み直せばきっと新しい発見が色々あるに違いない。再読に耐えるシリーズだし、今後も何度も読み返していくに違いありません。

 

神話の一場面のような光景にヤエトが立ち会うクライマックスも幻想的で素晴らしかったです。
まさか神々が姿を変える瞬間を見届ける人間に選ばれるとはなぁ・・・・・・。
これまでも神話にまつわる様々な人や物事に深く関わってきたヤエトですが、これはもう自身が神話の一部になったといっても言いんじゃないだろうか。神の立会人として。まぁ本人は全く望んでいないことではあるだろうけれど。

 

そんな大役を任されたゆえか、若干ヒヤリとする状態に陥っていたエピローグのヤエト。
それでも皇女の「結婚できるな!」発言で一気に明るい未来を予感させて終わったので、読後感はとても満たされたものとなりました。
離れた場所でそれぞれの戦いをしていたため、あまりヤエトと皇女が一緒にいるシーンは多くなかった最終巻ですが、そのちょっとしたシーンでのラブコメ爆発具合にニヤニヤが止まらないw
「そなたを誘惑したい」とか、ヤエトの顔が死んでるお父さん(皇帝)との三者面談とか。皇帝陛下の親バカっぷりには何度吹いたことか・・・・・・。

 

病弱ゆえに自分の命に対しては執着心が欠けていたヤエトだけど、皇女と一緒なら(隠居できなくても)きっと幸せな人生を歩めるはず。
最後の挿絵がシンプルだけど素晴らしいんですよね。厳しい苦難を乗り越えてきた主従が、手を取り合い、新しい形で共に未来を歩んでくれることを祈らずにいられません。

 

本当に素晴らしいファンタジーロマンでした。傑作と呼ぶに相応しい作品だと思います。
またこういうファンタジーを書いて下さるだろうか。妹尾さんの次回作を楽しみに待っていたいと思います。

 

 

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